プレカリアートユニオンブログ

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「理論」編は難読だが一読の価値あり。 残業代計算に対する見識が深化する1冊。『新版 残業代請求の理論と実務』(渡辺輝人著/旬報社)

 残業代の未払いは、現代日本社会が抱える最大の問題の1つであるといっても過言ではありません。残念ながら多くの会社が、残業代を適切に支払っていません。日本国内の未払い残業代総額は数兆円になるとも十数兆円になるともいわれています。
『新版 残業代請求の理論と実務」は残業代計算ソフトで有名な「給与第一」「きょうとソフト」の開発者としても知られ、日本の残業代請求の第一人者ともいえる、日本労働弁護団常任幹事の渡辺輝人弁護士による1冊です。「理論」編では学説判例を踏まえ、残業代に関する知識を深めることができ、「実務」編では、実際に相談を受けたときのポイントから給与計算ソフトの使い方まで、実際の対応について学ぶことができます。
■他の追随を許さない理論編の緻密な解説
 本書の特筆すべき点は、単なる実務的な残業代計算のマニュアルではないということです。1冊通して読み解くことで目の前の残業代を計算する能力が身につくのは勿論、残業代計算に係る理論的裏付けや労働法の規定の意義、これからの課題などについても広く見識を深めることができます。特に理論編の精緻さに関しては他書の追随を許しません。今日までに出された様々な裁判例やそれに基づく学説等の変遷に対し、時に異議を唱え問題提起を行いながら、緻密に解説を加えていきます。ページ数はさほどでもないものの、その内容の濃さから理論編の読了には相当の時間を要しました。読後、自分の知識が深まり、残業代について考えるときの視野が広くなるのをはっきりと実感しました。
■残業代計算の実務を無理なく身につけることができる実務編
 実務編は、理論編と打って変わって非常に読みやすく請求実務についてまとめています。ひとつひとつの論点に対し、しっかりとページ数を割き丁寧に解説しているので、初めて学ぶ人でも、残業代計算の実務を無理なく身につけることができる内容だと思います。また、見落とされがちな付加金についても、現在のしくみや裁判所の判断の問題点等を指摘しながら丁寧な解説がされています。
 残業代の未払いは、長時間労働、過労死の温床となり、ハラスメント等にもつながります。請求をする側がしっかりとした知識を持ち会社を正していくことは非常に重要なことです。本書の理論編はそれなりの法的知識を持った方でも読み込むのにそれなりの時間を要すると思いますが、ここまでに実践的かつ充実した解説はそうありません。必ず読み手の力を高めてくれると思います。残業代計算実務に関わる全ての人に読んでもらいたい1冊です。

稲葉一良(書記長)

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