プレカリアートユニオンブログ

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労働運動を改革・活性化させる レイバーノーツ大会参加報告 4月19日~21日、アメリカ・シカゴ

労働運動を改革・活性化させる レイバーノーツ大会参加報告
4月19日~21日、アメリカ・シカゴ

 現地時間19日から21日にかけてシカゴでレイバーノーツの大会が開催された。本大会と共に大会開始前日18日にはレイバーノーツアジア大会、大会終了翌日の22日には労働運動の歴史を巡るバスツアーに参加した。稲葉一良(書記長)

 

■《18日・レイバーノーツアジア大会
■国毎に異なる背景、戦闘的労働運動が希望
 本大会に先立ち、18日 にはアジア大会が開催された。国よって当局からの労働運動への弾圧は苛烈を極めている。当日は誰がどのように参加しているのかなどについて秘密にする必要があるため、写真を撮ったり名前を出したりすることはNG。安全に配慮がなされ、主にアジア地域から若い労働者を中心に集まりがもたれた。冒頭、草の根で戦闘的な労働運動が労働者の権利を勝ち取る武器であるということが語られ、参加者がそれぞれの活動を報告し合った。


■闘う労働運動をアジア各地で展開していこう
 組合内部の官僚化など民主主義に対する課題、様々な形での戦闘的労働運動の展開、どのような労働者が組織されているのか等が共有された。組織によっては権力寄りになってしまったり、官僚的になり民主主義が疎外されるなどの課題を抱えている。
 国や法律が違っても、抱える問題は同じ。そして、その解決のために団結して直接行動を行っていくことが労働者の最大の武器だ。課題や取り組みを語る参加者の表情は皆、一様に希望に満ちたもので、とても勇気と力をもらえた。日本での取り組みとして、コミュニティ・オーガナイジングを活用した大阪の保健師増員キャンペーンについても共有があった。最後のセッションでは課題毎にテーブルを分けディスカッションも行われた。


■《19日レイバーノーツ本大会1日目》
■25~40種類同時開催されるワークショップ
 いよいよ本大会、到着の日から数えて3日目となる。本大会の参加者はおよそ4500名程と聞き、あらためて世界中から労働者が集まっていることを実感する。この大会の特筆すべきはワークショップの多さ。約100分間のワークショップがコマ毎に25~40同時開催され、初日は4コマ実施された。以下に参加したワークショップの詳細を紹介したい。


エンパワーメントなき救済型の労働運動は
組織の将来を閉ざし、組合民主主義を阻害

■①労働組合の方向性を変える
■サービスモデルから組織化モデルへ
 労働組合の課題の1つが利用主義だ。私たちは生活を取り巻く様々なサービスと無縁ではいられない。社会全体がサービスモデル化しつつあるなか、組合はサービスを提供し受ける関係性で運営されてはならない。
 1人ひとりのエンパワーメントなく救済型の労働運動に終始することは組織の将来を閉ざすと共に組合の民主主義を著しく阻害する要因となる。チーム毎に分かれてディスカッションを行った。共に参加した仲間たちとの経験を交換し、全員参加型の組織に変えていく重要性を確認し合った。その後3人のパネリストがどのように組合を改革したのかを共有した。小さな会議を沢山開き、1人でも多くの組合員と対話を持つこと、民主的なボトムアップ型組織化の大切さと力を理解できた。民主的な組合運営にとって規約がいかに重要かをどのパネリストも口を揃え発言していたことは特に印象的だった。


■②音楽イベント
労働組合史を生きたものに
 日本からの参加は稲葉のみ。ミュージカルシアターで労働運動の歴史を振り返るワークショップ。音楽が労働者を1つにし、勇気を与え変えていく力を実感することができた。まるでその場にいたかのように臨場感に溢れる歌唱でアメリカの労働者の正義と権利のための闘争を振り返る。
 正直、英語がそこまで得意ではなく、歌詞の意味は部分的にしか理解できなかったが、歌声に大いに鼓舞され、アメリカの労働運動でいかに活きた武器として音楽が用いられているのかを体験することができた経験は大きい。音楽を作るときただ金儲けのためだけにしてはならないなど音楽の作り手が真に求められることについても言及された。英語力の問題でディスカッションにほとんど加われなかったのは心残り。


■③運動のための作曲
■日本で歌われるものより音楽として魅力的
 引き続き同じ会場で音楽のワークショップは続いた。後半は「SONGWRITING FOR THE MOVEMENT」と題し、運動における作曲論が展開された。世界を変えた様々な曲。そのなかにはごく普通の労働者が書いた曲も多く存在する。
 2人のベテランソングライターが曲を紹介し、運動を作り上げていく上での様々な楽曲の役割について話し合いが行われた。例によって、解説部分の意味はほとんど取れなかったが、楽曲が日本の労働運動のそれで唄われるものとは段違いに音楽として魅力的だ。言葉が部分的にしか分からなくても音楽の魅力に心が引きつけられる。アメリカの労働運動の現場で有機的に機能している音楽文化に触れたかけがえのない体験だった。私たちも負けていられない。投票キャンペーンの曲はキャッチーで特によかった。作曲した春闘キャンペーンソング「賃金を上げよう」も参加の皆に聞いてもらうことができ、腕章とCDを交換した。


■④多数派になる前の労働組合
■どれだけ仲間を勇気づけられるか
 初日最後のワークショップは再び日本から参加したメンバーと合流し、少数派組合としての闘い方を学んだ。日本のユニオンは、ほとんどの場合職場で少数派として闘わざるを得ない。アメリカでは過半数の職場投票を勝ち取らなければ団交権もないため少数派の時代をどう闘うかは特に重要な課題だ。団交権のない組合が協約権を得るまでに何をしていくのか、どのように組織化を成功させていくのかが語られた。
 法的枠組みによる仕組は違えど組織化の仕方は同じ。現状を分析し共通の課題を見つけそしてリーダーを育てる、CO(コミュニティ・オーガナイジング)の理論に基づく組織化の実例に触れた。日本の組合は1人から団交権がある。共有された戦略に団交を組み合わせれば組織化できない理由がない。やるかやらないか、どれだけ仲間を勇気づけられるかが組織化成功の肝だ。
 初日の最後は全体会で締めくくられた。教員組合のシカゴ市長やスターバックスストライキのリーダーなどが挨拶をした。全体会に先立ち会場のホテル前ではガザのジェノサイドへの抗議デモが発生し、同行の仲間たちと参加した。その中で警察からの逮捕者が出たのだが、無事解放されるに至った。演説に来た市長に直訴しようと争議団が会場に押しかけようとすると無事釈放されることとなった。団結が社会を動かすことを体現したレイバーノーツ初日だった。


■《20日・レイバーノーツ2日目》
■2日目の始まりは逮捕者奪還の報告から
 2日目は午前9時からの全体会でスタート。前日に引き続き4コマのワークショップが開催された。冒頭では前日のデモで逮捕者を奪還したこと、UAWが職場投票に勝利し団交権を勝ち取ったことなどについても報告がなされた。


■①秘密のレシピ
■無関心に打ち勝つ
 組織化の最大の妨げは使用者からの妨害ではなく職場の労働者自身の無関心だ。このワークショップでは職場の無関心に打ち勝つ方法を参加者参加型のワークショップで探った。どうやったら多くの組合員をアクティビストにすることができるか、それぞれの課題を共有し合い皆で議論する。恐怖や分断、希望がない、混乱が労働者の組合参加を阻む大きな要因だという。恐怖をどのように克服するか、共に参加した仲間と意見を交わした。職場にどんな分断が生じ、何を怖れ、何に混乱し、なぜ希望が持てないか、しっかりと状況を分析し対策するためにも1人1人との対話が非常に重要だ。心理的な障害を取り除くことがオルガナイザーとしての最大の役割とえる。「耳は2つ口は1つ」、話すより聞くことの大切さも語られ、ロールプレイも行われた。


■②一人で全部やれない
■学び・教えろ
 どんなに活動的なリーダーでも、一人で何でもできるわけではないしやるべきでもない。職場支部でも特定のリーダーに活動が依拠してしまうと、負担が掛かりすぎ潰れてしまう。リーダーシップとは全て一人でやる力ではなく、他の仲間の能力を発展させ、参加を促していく力。そのために自らが学び、そしてそれを教えることはとても大切だ。
 教えることは学ぶためのツールでもある。職場の調査もみんなの力で行うなど役割を与えることで、職場に素晴らしいリーダーか育ち、リーダーは教えることに専念できるようになる。具体的なシナリオに沿ってロールプレイを行った。


■③アジア労働者会議
■闘いの現場で再開したい
 アジア各地からの参加者が参加した。3人ひと組のチームに分かれクイズ形式で各国の労働事件について学んでいった。次第に会場が1つになる。クイズは全12問出題され、様々な地域でのここ最近のストライキでの闘いを学ぶことができた。その後、テーブル毎にタイムライン(2000~2024年の自分が重要と感じる労働組合関連の事件を書き込んでいく)を作成した。クイズでチームを組んだ仲間は韓国、中国の労働者。国際連帯の必要性、大切さを確認し合った。韓国オプティカルハイテックの闘いに連帯したことを伝える。最後にはみんなで記念撮影。もし、闘いの現場で再開を果たすことができたならば本当に素晴らしいことだと思う。労働者は国境を越えて団結する。


■④秘密のレシピ
■ドリームチームを作る
 どのように職場の中からリーダーを見いだしていくのか。ワークショップ形式で学んでいく。リーダーとは信頼され、影響力のある人物。リーダーの定義を考えることは重要だ。リーダーを探そうとするとき多くの会話が必要。また、資質があるように思えてもフォロアーがいなければリーダーではない。職場をマッピングして、どこに人が集まるか休憩するかなど人の動きを可視化。そして、名簿を作り……段々と組織化の戦略に具体性が備わっていく。職場を組織する何人かのリーダーを見出してドリームチームを作ろう。要求があり、リーダーがいて、団結すれば成し遂げられるという希望(3要素)があれば組織化は成功する。
 ワークショップの後は「団結ディナー」。大勢の仲間と大会場で素敵な食事を囲んだ。デザートに出たアメリカのチョコレートケーキはやはりとても甘かった。その後、労働運動を盛り上げるコンサートが行われる。様々なワークソングやパフォーマンスが行われた。1日を通して運動のあらゆる場面で音楽が団結のツールとして有機的に用いられていることを実感した。この日は朝9時に会場に着き、夜12時前まで。なんとも濃厚な2日目だった。

 

民主化により労働組合は強くなる
民主的な運動体による社会的労働運動を

■《21日・レイバーノーツ3日目》
■それぞれの職場に戻って運動を
 いよいよ、最終日。朝9時からワークショップが始まり(2コマ)最後は全体会を行いこれからも共にそれぞれの職場で労働運動を展開していくことが確認された。


■①秘密のレシピ
■課題をキャンペーンに変える
 いいキャンペーンは決定者に大きなプレッシャーを与える。単に参加者が高揚することではなくここに注目したキャンペーンを展開する必要がある。いいキャンペーンは決定権のパワーを労働者に取り戻すものだ。広く感じられている、深く感じられている、勝てる、組織化に寄与するこの4つがファクター。
 大きく社会的な問題ではなく組合員が要求していることをイシューにすることが大切。みんなが大事だと思っているか、その闘いは勝てるか(小さな勝利ではない)、組織化に繋がるか、しっかりと考えてキャンペーンを展開することが大切だ。学校の教室にエアコンの設置を求める取り組みをモデルにロールプレイを行った。ターゲットの設定は高い職位ならいいわけではないという指摘には、はっとさせられた。


■②ストライキ                                
労働組合の最大の武器を再生する
 最後のワークショップのテーマは労働者最大の武器ストライキ。冒頭にユニオンリーダーがアコースティックギターと歌でパフォーマンスする。その後、パネリストがそれぞれが闘ったストライキについて紹介した。
 ハリウッドの脚本家組合が15年がかりで準備し取り組んだ昨年のストライキは大勝利を収めた。戦闘的な伝統を持つ脚本家組合だが、常に戦闘的な体勢を保ち続けてられていたわけではない。1980年のスト敗北からのバックラッシュで戦闘性を失った組合を再び戦闘的な組合に生まれ変わらせ、闘う力を取り戻していった経過が語られた。
 マサチューセッツ教員組合の違法ストの闘いが紹介される。指導部が変わり、サービスモデルの組合から組織化モデルの組合に生まれ変わったことが闘う力に繋がった。ストライキに備え組合内部の民主主義を更に高めた。民主化された組合は職場同士の深い連帯を生み勝利の大きな要因となった。
 2019年に行われたUTLAのストライキは生徒や保護者をはじめ多くの市民の支持を受け勝利した。3万8千人がストをし通りを埋め尽くすストライキには多くの準備が必要だった。実質的な交渉に乗らない使用者に対して、ストライキを行うことで、使用者が話し合いに応じざるを得ない状況を作りだした。今なお、新しく就任した学区長との対決のため交渉団を拡充しより開かれた民主的な闘いを組織するための取り組みを続けていることが語られた。
 アメリカの制度の仕組みはことごとく使用者よりになっている。どのように抜け穴を見つけて勝利するかが大切だと解説された。例えば、交渉団が少数であるという慣例もそうだ。民主化により労働組合は強くなるということが強調された。


■手を携え利益優先の使用者と闘う
 多くの仲間と交流し団結を確かめ合ったレイバーノーツ大会は「Solidarity Forever」の大合唱で幕を閉じた。世界中の労働者が共に手を携え、利益を優先し労働者の生活や健康・生命を顧みない使用者と闘うことは社会正義でもある。あらためて、民主的な運動体による社会的労働運動を展開していくことの重要性を肌で感じた大会だった。
 大会終了後はシカゴの町に向かう。共に参加した仲間たちと夜はブルースのレジェンド、バディ・ガイの店「Buddy Guy's legend」へ。ブルースは黒人のワークソングだ。自身も差別や貧困と闘いながらブルースマンとして成功を収めたバティが認めた本場のブルースプレイヤーの演奏が心に染みた。
 翌日は飛行機の時間まで全労連のメンバー達に混ざり、メイデーの起源となったヘイ・マーケット事件にまつわる史跡を巡りCTU(シカゴ教員組合)本部へ。シカゴでは市民と共に闘う労働運動が展開され成果を上げている。何が課題だったのか、どのように運動を作り上げたのか、職場の問題と社会の問題を繋ぎ運動をオーガナイズしたのかをランチミーティング形式で学んだ。フライトの時間が近づいたため中座し空港へ。レイバーノーツ大会への参加は実に濃厚な経験だった。


■利用主義との決別、組織化が力を持つ
 実は海外を訪れるのは初めての経験。出発前は、長い旅だと感じていたが、終わってみるとあっという間の1週間だった。このレポートを書いているのは帰りの飛行機の中。戻るとすぐにメーデーが待っている。日本でも社会と連帯して強く闘う労働運動を実践し際連帯でグローバル企業に対抗していく必要がある。利用主義と決別しよう。利用主義は1人ひとりの力を弱めるだけでなく組合民主主義を著しく阻害する。組合は何かをしてくれるところではなく自分自身が闘うところ。ボトムアップ型の労働運動は職場に民主主義をもたらす。そのためにもまずは職場を組織しよう。職場に根ざした民主主義は社会に波及する力を持っている。
 出発に際し多くの組合の仲間からカンパを受けた。最後に、春闘の忙しい最中に送り出してくれたプレカリアートユニオンの仲間達に感謝を伝えたい。本当にありがとう。今回の旅で見たこと、学んだこと、感じたことを活かし組合に多くの支部を作るサポートをしていくことが何より楽しみだ。
 稲葉一良(書記長)

 

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