プレカリアートユニオンブログ

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不寛容な格差社会が生み出した社会問題「特殊詐欺」について犯人目線で記したルポ。『ルポ特殊詐欺』(田崎基著/ちくま新書)

不寛容な格差社会が生み出した社会問題「特殊詐欺」について犯人目線で記したルポ

『ルポ特殊詐欺』(田崎基著/ちくま新書

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 オレオレ詐欺という言葉が使われるようになったのは、およそ20年前。この間、オレオレ詐欺をはじめとする特殊詐欺は凶悪化・巧妙化の一途を辿っています。どのような人が特殊詐欺に手を染めてしまっているのでしょうか。『ルポ特殊詐欺』はそんな特殊詐欺について、犯人の側から事件を見て記したルポルタージュです。著者は田崎基氏。神奈川新聞の記者で、現在は報道部デスク。本レビューでは、著書『令和日本の敗戦~虚構の経済と蹂躙の政治を暴く~』の紹介もさせていただきました。丹念な取材に基づく臨場感溢れる描写は、時に恐ろしさや焦燥感すら感じる程の没入感を読み手に与えます。
■生きづらさや貧困から特殊詐欺へ
 本書では多くの特殊詐欺の事例を取り上げています。そのほとんどが、貧困や虐め、家庭崩壊、虐待、発達障害、知的障害など様々な生きづらさから事件に関与するに至っている点には注目が必要です。「月○○万円稼げる、誰でも簡単に稼げる」などの誘い文句に誘引され、生活の苦しさから逃れるために違法行為とは知らずに知らず知らずのうちに犯罪に手を染めてしまう者、ギャンブル依存から自暴自棄になり違法とわかっていながら関与してしまう者、騙されて借金を背負わされ半ば強制的に加担させられる者もいれば、事業に失敗し従業員に給料が払えなくなりやむを得ず特殊詐欺を行ったケースもあります。これらの背景を知るほどに、特殊詐欺は私たちと無縁の闇の世界でのみ行われているのではなく、私たちの周りにいる、私たち自身が手を染めてしまうこともあり得る社会構造的な問題であるということが浮き彫りになってきます。
■末端が捕まり、トップに捜査の手が及びにくい
 途中でもう止めたい、終わりにしたいと思っても説得され、脅され中々止めることが出来ないのも特殊詐欺の特徴です。捕まるのはほとんど末端の実行犯で、組織的犯罪を隠す仕組みも巧妙化。消えるメッセージや録音の出来ない通話を可能にするアプリの開発などにより、上層部の関与の立証が困難になってきていることも一因です。大きな生きづらさを抱え行き場のない人々がやめたくてもやめられず使い潰されていくという構造は、ブラック企業のそれと共通のものです。私たち労働組合も特殊詐欺の貧困問題としての一面を決して見落としてはいけません。劣悪な労働環境を強いる会社と闘い、誰もが安心して暮らせる社会へ変えていく為の取り組みはこのような社会問題の解決への一助であることを改めて認識させられた1冊です。

 稲葉一良(書記長)

 

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