2024年問題について考えるためにまず知って欲しいトラックドライバーの現実
『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路~現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます~』(橋本愛喜著/KADAKAWA)
国民民主党の玉木党首は4月、2024年問題で物流が危機に瀕していることの解決策として「トラックの高速道路での制限速度を現状の80キロから100キロに緩和すればたくさんが運べる」という趣旨の発言をした。これに対し、プレカリアートユニオン組合員のドライバー達は声を合わせて反論し、組合も意見書を提出した。今、運送業界が危ない。『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路~現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます~』は自身もトラックドライバーとして働いていた経験を持つ、ライターの橋本愛喜氏による1冊。誤解と偏見をもって語られがちなトラックドライバーの労働のリアルを伝え2024年問題の本質について切り込む。
「しわ寄せ」を受けるドライバー
トラックドライバーは様々なところで割りを食っている。オンラインショッピングでの「送料無料」問題は最も有名な1つだがそれだけではない。会社が適切な休憩場所を用意できないこと、荷主が適切な配慮を行わないことなどから違法な路上駐車等を余儀なくされている。また、コロナ渦でも、ガソリンスタンドのシャワー一時中止、飲食店が20時に閉店するので食事難民になってしまうなど様々な問題がドライバーに降りかかった。更に、旦那がドライバーだからとパートナーが職場で出勤を拒まれるようなケースもあった。これらの「しわ寄せ」は、私たち生活者が物が当たり前に運ばれてくるという感覚になれきってしまい、そこで働くドライバーの労働環境に全く無関心になってしまった故に引き起こされたといっても過言ではない。
当事者(ドライバー)不在の2024年問題対策
運送業界の有識者会議には問題の当事者であるドライバーが全くいない。本書では、あまりにもズレた2024年問題についての議論について痛烈に批判を加えている。「走らないヤツが決めるな」という主旨の本書の主張には全く同感だ。荷主による理不尽な返品・買い取りルールや安全無視の場内アイドリングストップ、長すぎる荷待ち時間といった本書でも取り上げられる問題を解決しなければ、いつまで経っても現場の負担は減らずドライバー達は不合理な長時間労働を強いられることになる。ドライバーや運送会社にのみ責任を押しつけず、荷主を含む業界全体をあり方を見直さなければならないということを本書を読んで再確認した。
ドライバーの人手不足は深刻だ。2024年問題を本当の意味で解決するにはトラックドライバーという職業をより多くの労働者にとって魅力的な仕事にしなければならない。現在、「完全歩合にして残業代を抑制する」、「最低賃金で契約したことにして人件費を安く抑える」などの悪質な労務管理を売り込む士業・コンサルが法改正目前の業界を跋扈している。これでは業界の担い手がいなくなってしまう。ドライバーの労働条件・労働環境の改善は必要不可欠。これからも現場のドライバーと団結し闘っていきたい。
稲葉一良(書記長)
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