プレカリアートユニオンブログ

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「座り込み」を娯楽として消費し、「沖縄はわがまま」と冷笑する日本社会の病を克明に記す1冊。『なぜ市民は”座り込む”のか~基地の島・沖縄の実像、戦争の記憶~』(安田浩一著/朝日新聞出版)

「座り込み」を娯楽として消費し、「沖縄はわがまま」と冷笑する日本社会の病を克明に記す1冊

『なぜ市民は”座り込む”のか~基地の島・沖縄の実像、戦争の記憶~』(安田浩一著/朝日新聞出版)

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 2022年10月3日、ひろゆき氏が辺野古の座り込みの現場に人が見当たらないことを揶揄したツイートを行うと瞬く間に拡散され大きな騒動となった。工事が行われている時間帯に行う座り込みの現場に工事が終わった後の時間帯に行っても誰もいないのは当然なのだが、SNSはそのような背景を顧みない嘲笑で溢れた。『なぜ市民は”座り込む”のか~基地の島・沖縄の実像、戦争の記憶~』の著者はジャーナリストの安田浩一氏。沖縄に今も残る戦争の爪痕、被害と抵抗の歴史を丹念な取材に基づき記し、嘲笑と無関心、デマが蔓延する日本社会が克己しなければならないヘイトの問題を浮き彫りにする1冊だ。

沖縄での座り込みの意味と背景にある歴史
 今更だが、沖縄には全国の米軍軍用施設の実に約7割が集中している。また、この7割という数字はアメリカの普天間基地移設計画に伴う辺野古埋め立てに対する県民投票で反対に票を投じた県民の割合とも一致する(72.2%)。多くの沖縄県民は基地を望んでいない。今なお、沖縄には戦場となった痛ましい記憶が息づいている。自決用に渡された手榴弾が不発弾だった住民達は自らの家族に木の棒で殴り石をぶつけ殺害した。本書紹介される渡嘉敷島での「集団自決」を生き残った金城さんが語る風景は自決というより「虐殺」で、あまりの凄惨さに言葉を失う。また、米軍による性犯罪の被害は止まず命を奪われるケースも珍しくない。

笑いの暴力と蔓延するヘイト
 マスコミがもてはやす気鋭の経済学者である成田悠輔は高齢者は「集団自決」すべきだという持論を語った。国内メディアはこれらの発言を正面から批判せず、また、「座り込み」ツイートをしたひろゆき氏は笑いながら深く頷いていた。そして、本当に深刻な問題はこのような差別に基づく嘲笑がこの国中に蔓延していることだ。様々な問題への無関心が人々を正しい知識から遠ざけ、差別と偏見を助長しデマを生み続けそれがまた差別・偏見を大きくする。本書は所謂「ネトウヨ」問題、「ニュース女子」のヘイト報道、石嶺元宮古島市議が産経新聞にデマ記事をでっち上げられた事件、小池都知事が慰霊祭への追悼文送付を取りやめ関東大震災時に起こった朝鮮人虐殺を事実と認めないことなどについて解説し、いかに病とその広がり方が深刻なものかを示している。

 無関心と嘲笑が蔓延する世の中で一体誰が得をしているだろうか。この装置は、多くの職場でも支配のために利用され労働者の立ち上がる気持ちと力を奪っている。本書では沖縄の人達が座り込みでどのように抵抗し、どのように歴史を動かしてきたかが記されている。差別を打倒するのは団結と連帯。権力の横暴に自分ではない誰かが晒されたそのとき、冷笑しているならば、喜ぶのは権力者だ。問題への関心と正しい知識を持ち、共に声を上げることが自分たち自身の権利を守ることにも繋がる。偏見で沖縄問題を語るならば口を噤み、まずこの本を読んでいただきたい。

稲葉一良(書記長)

 

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