プレカリアートユニオンブログ

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歴史を紐解き浮き彫りになる大産別の課題から労働運動のこれからについて考える。『オルグ!オルグ!オルグ! 労働組合はいかにしてつくられたか』(本田一成著/新評論)

歴史を紐解き浮き彫りになる大産別の課題から労働運動のこれからについて考える

オルグオルグオルグ! 労働組合はいかにしてつくられたか』(本田一成著/新評論

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 8月31日西武の売却計画を巡り雇用維持を求め「そごう・西武労働組合」がストライキを決行した。百貨店での大規模なストライキは実に半世紀以上ぶりであった。同労組の加盟する産別は「UAゼンセン」。連合屈指の大産別である。『オルグオルグオルグ!~労働組合はいかにして作られたか』はそんなUAゼンセンの歴史を百貨店やスーパーの組織化を中心に振り返った1冊。著者は本田一成氏。同氏は長年チェーンストアの研究者という立場で長年労働組合の研究も行っている。
■UAゼンセンはいかにして作られたか
 本書のサブタイトルは「労働組合はいかにしてつくられたか」となっているが、前述の通り本書はUAゼンセンの組織化について記された1冊だ。UAゼンセンのオルグトップダウンで社長を説得し労働組合を作り上げていく歴史が語られる。
 残念ながら同様の手法での組織化を私たちのような闘う個人加盟のユニオンが行うことは難しいし、また、そうすべきでもない。現在は労使協調のイメージの強いゼンセンも、時に激しく闘い経営者と対峙しながら組織拡大を行ってきた歴史があることが語られる。
■行間から様々な問題が見えてくる
 UAゼンセンの歴史を綴った本書では、やはりというか、残念なことに組合側についての記述で「日本人」、「男性」、「正社員」の姿以外がほとんど顧みられていなく、また、使用者側も主に経営者の姿を中心に記述がなされている。
 行間からUAゼンセンのトップダウン大産別型の労働運動により、自然と現場やひとりひとりの労働者の存在への意識が薄れていってしまう様が読み解けた。また、いわゆる個人加盟の闘う労働組合を「左翼組合」などと一蹴し、害悪であるかのように断じる表現は大いに疑問を感じたが、私たちのような個人加盟の労働組合の対極にある組織拡大こそを是とする大産別からの眼差しを知るという点では非常に有意義であった。
 ただし、労働者の抱える個別の問題やその社会的意義にほとんど関心を払わず、組合員の数だけで割が合わないからできないのであるなどと決めつける表現から見える姿勢はまさに管中窺天であると共に、労働者を経営上の数字としか考えない経営者との同質性を感じさせるものであり大いに問題がある。
 労働運動が変革を迫られる中、大産別UAゼンセンの果たす役割は大きい。そごう・西武労働組合ストライキ直後の定期大会では、多くの労働者の雇用を守るためのストライキであるにも関わらずゼンセン本部が前面に出てこなかったことについて紛糾したと報じられている。ひとりひとの生活を守るために労働組合が存在するという本質を大産別が見誤ったかのような対応をしたことについて内部の批判も強い。実際にストライキに駆けつけた他労組の多くが、本書で「左翼組合」などと揶揄された闘う労働組合であったことについて深く反省し、大産別だからこそできるしっかりと業界と向き合い闘う労働運動に取り組んでもらいたい。

 稲葉一良(書記長)

 

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