【組合員の手記＆支部紹介】運送会社で大幅な労働条件改善を実現　支部の１０年を振り返る　人は弱い、だからこそ助け合うべき　山田元晴さん（明成物流支部支部長）

　皆さん、こんにちは。プレカリアートユニオン明成物流支部で支部長をしている山田と申します。今この原稿に取りかかっている最中、我が支部も皆さんと同じように春闘に向けて準備をしているところです。それぞれ組合員の方が春闘で良い結果を得られることを願っています。
　さて、本部から打診をいただきましたので我が明成物流支部の活動報告をさせていただきます。私たちがＰＵ（プレカリアートユニオン）に加盟したのは１０年くらい前です。当時の私たちは理不尽なことと常に向き合いながら日々を過ごしていました。もう物を言わぬ社員でいるのはやめよう！　誰かが言い出したのを合図に、多くの同僚たちと組合結成に向け水面下で準備を始めました。
■月４００時間労働の一方残業代ゼロ！
　当時の私達は労働組合の事など全く分かっていなかったので、何となく知ったドライバー御用達の労働組合に加盟しました。しかし、その組合を選んだのは間違いだったとすぐに気付き脱会しました。その後ＰＵに加盟しました。加盟当時の明成物流は現在とは桁違いなブラック企業でした。残業代は支払われていませんでした。それに加えて社長の思いつきで支払いルールを決めた手当すら、社長の機嫌次第で減額されるという始末です。
　当時の私達たち長距離輸送もこなしており、月の労働時間は３５０時間から４００時間だったにも関わらず、残業代が１円も支払われませんでした。ＰＵに加盟して最初に会社に要求したのは規定通りの残業代の支払いと過労死の可能性がある業務の改善でした。
■ＰＵの支部となり裁判で勝利和解
　しかし、会社側は何も悪いことなどしていないと開き直るばかりだったため労使紛争に発展しました。私たちは会社側の不正を余すことなく暴くことを決め、裁判にも発展しました。裁判は会社側が非を認め我々の勝利和解となりました。
　その後も交渉を重ねて現在では私達の要求のほぼ全てにおいて会社側が受け入れて改善してくれました。しかし、言葉にするのは簡単なことなんですが、ここまでには様々な人間模様がありました。
■人の弱さを見てきた
　組合結成当時の我が支部は２６人の会員がいました。それは実に約１０年前のＰＵ組合員の４分の１程の数でした。しかし、紛争が激化するにつれて怖さに耐えられなくなった１０名の支部の会員たちが次から次へと退職していきました。
　そして残念なことに１０名全員が円満的退職を条件に会社側に私たちの行動を退職後も報告するというスパイ契約を結んだと聞きました。もちろん口約束ですから、約束だけして実効しなかった者が多かったのですが、３名の者が私たちの行動を根掘り葉掘り会社側に報告していました。
　なかには退職日の前日の支部会議にボイスレコーダーを忍ばせて現れた奴までいました（笑）。人が３人集まれば派閥ができると言うだけあり、私的には想定内だったので気にもしませんでした。人は誰でも弱い生きものです。だからこそ助け合うことが大事なのです。
■支部のまとめ役として精進したい
　ＰＵにも色んな人間が出たり入ったりするのを私は長くみてきました。解決した途端に音信不通になる者や、解決報告の場で組合には感謝しかありませんと言いながら、理屈にもならない言い分で組合批判を繰り返す様なイカれた者までいました。そんな者を見るたびに悲しい気持ちになりましたが、それもこれも弱さ故の過ちだと思います。今現在我が支部には１６名の会員が残っていますが、必ずしも全員が同じ方向を向けているかと言えば違います。
　歩み寄りの心を持つことなく会社から受けたハラスメントへの仕返しだけを未だに考えている者、勝ち続けることへの恐怖なのかも知れませんが、自分は組合の主流派ではなく何となく組合に入ってしまっただけだと、未だに及んで会社側にアピールする者もいます。
　私は良きリーダーの条件の一つに、このような弱い心を持つ者が最後の一線を越えない様にしっかりと見張ることも含まれると思っています。
　現時点で私が良きリーダーなのかどうかは言いませんが（笑）、支部長でいる限り良きリーダーになれる様に精進してまいりたいと思っております。どうか皆様、今後とも明成物流支部をよろしくお願いいたします。
　山田元晴（明成物流支部支部長）