プレカリアートユニオンブログ

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令和の時代にSEALDsを「総括」する。『平成転向論 SEALDs 鷲田清一 谷川雁』(小峰ひずみ著/講談社)

令和の時代にSEALDsを「総括」する


平成転向論 SEALDs 鷲田清一 谷川雁』(小峰ひずみ著/講談社

 

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 2015年の安保闘争の闘いの中で最も注目を集めたのはSEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)の存在だったと思う。SEALDsは安保闘争に敗北した翌年2016年に解散という選択肢をとった。今なお、多くの元メンバーは様々な形で社会運動を続けている。
 著者の小峰ひずみ氏は新しい連帯のかたちを世に示しそして、あっという間に解散してしまったSEALDsがその解散を正当化するために用いた理論に違和感を覚える。『平成転向論 SEALDs 鷲田清一 谷川雁』は、そんなSEALDsの用いた「言葉」を戦中派の詩人・運動家として新左翼に多大な影響を与えた谷川雁、日本に初めて哲学カフェを持ち込んだ哲学者の鷲田清一の「言葉」と比較し、その運動と解散を総括する1冊である。
■世界的な運動のうねりの延長にあったSEALDs
 アメリカで起こった「ウォール街を占拠せよ」を筆頭に21世紀型の民衆運動が2021年に世界中で起こった。SEALDsはその延長線上にある運動であり、政治の場に自分の言葉を持ち込む新しい形のエンパワーメントによる連帯であった。だからこそその役割は誰かにバトンを渡すといった形で終わっていいようなものではなかった。この文脈すからもSEALDsは勝つために解散すべきではなかったし、また、希望だった。
■仕事によってスキルを身につけるという理論はアンダークラスを切り捨てた
 居場所になってはならないと組織としてあり続けることを選ばなかったSEALDsの解散の理論は「生活への回帰こそが、政治を豊かにする」というものだった。仕事をしてスキルを身につけまた集まるための解散、この選択と表明はメンバー達のプチブル性を表すと共にアンダークラスを運動から切り捨てる表明だ。団結は力なりという運動の原則も捨て去られていた様が本書から見えてくる。ご存じの通り、今日の労働者を取り巻く環境は劣悪だ。ブルシットジョブが蔓延し、人々は容易に使い捨てられる。メンバーたちが志向した仕事によって「スキル」を身につけることができることができるのはほんの一握りの恵まれた労働者だけである。
 著者自身も言及しているが本書はSEALDsを批判する1冊ではない。その活動を総括し何か若者を運動に向かわせたかを知り、なぜ勝てなかったのかを考えるきっかけにしたい。コロナ渦以降盛り上がりを見せるアメリカの労働運動は現場の労働者達が主役だ。その連帯の力が大きく社会を動かした。運動は知識人だけのものではない。とりわけ労働運動はノンエリートにこそ必要不可欠なものである。某首相のいう「リスキリング」など生き延びる上でどれだけの足しになろうか。しっかりと地に足を着いた社会的労働運動による労働者の団結が世の中を変革するということをレビューの結びとして伝えたい。
 稲葉一良(書記長)

 

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