プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

雇い止め問題について交渉していた神奈川県内のIT企業と和解!

雇い止め問題について交渉していた神奈川県内のIT企業と和解しました。

 

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【組合員Aさんの手記】日本ロードサービス(株)でコールセンターの劣悪な労働環境の改善に声を上げ不当配転 強い者に従うだけの姿、子どもに見せたくない

日本ロードサービス(株)でコールセンターの劣悪な労働環境の改善に声を上げ不当配転 強い者に従うだけの姿、子どもに見せたくない


 今年1月末に組合に加入した日本ロードサービスに勤務するAです。私は、日本ロードサービス(株)のコールセンターでリーダーとして勤務しておりましたが、昨年11月末にコールセンターの本部長に「去年うつ病を発症し、体調を崩された方がどうも最近体調が悪いようなのです。配慮が必要ではないでしょうか?」と相談したことから、「協調性がない!」とでっちあげのような理由でコールセンターから追い出され、現在はコールセンターとは別室でインターネットを利用し、水道業者を検索してリストにする、という意味の分からない業務を日々行っています。
■「労基署としては何もできない」
 私は、異動を命じられたすぐに、あまりに理不尽で突然の異動であったため、こういう時は労働基準監督署と思いすぐ電話し、アドバイスを願いました。しかし、「労働基準監督署としては何もできない。『助言、指導』という制度があるので検討してみてください。この内容だと、弁護士に依頼するとよい」と言われただけでした。でもとにかく何かしなければと、労働基準監督署の行う「助言・指導」の手続きをしました。
 しかし「助言・指導」は会社に労働基準監督署が電話し指導するのみであり強制力などありません。労働基準監督署は急ぎ日本ロードサービスにこういう話があがっているのでしっかりとした対応をするようにと電話してくださるも、会社は「問題のない異動です。Aさんのメンタルは問題ないです。なぜなら廊下で様々な方と談笑しているから」と突っぱねるのみで、全く効果はありませんでした。
 これで私は納得できるはずはなく次に、労働基準監督署が言っていた弁護士に依頼することにしました。弁護士費用が非常にかかることに驚きましたが藁にもすがる思いでの依頼でした。弁護士先生は、会社に対して急ぎ、「本件は出向である。ただちに出向を撤回し、元の業務に戻すように」と内容証明を送付してくれました。しかし、会社の顧問弁護士の回答は、「配置転換であり問題ない」と突っぱねるのみで、一度も私が依頼した弁護士と対面や電話などで打ち合わせすることなく、書面のやり取りのみで終わりました。そこで、弁護士から「相手はこのまま押し通すつもりです。労働審判をしましょう」と話があったところ、ネットで「不当配転」と検索しプレカリアートユニオンという労働組合を知ったのです。
 私はすぐに電話しました。電話に出てくださった稲葉書記長は私の言うことに耳を傾け「それは会社のやり方がおかしい。一度会ってお話しましょう」と言ってくださり、私が会社に残って苦しんでいる仲間のために働き続けたいということを尊重し、労働審判だけではない道へ導いてくださいました。
 2月28日に第1回の団体交渉があり、不当配転から3カ月経ってようやく会社の顧問弁護士、会社の取締役と本件について話し合いをすることができたのです。次回団体交渉は3月28日、現在は前回言えなかったことをしっかり伝えられるように準備しているところです。
■コールセンターの異常な労働環境
 私は日本ロードサービスに入社前も約12年間に渡って様々なコールセンター業界でオペレーター、SV(管理者)、研修講師、電話応対品質管理者などコールセンター経験を培ってきました。
 前職で担当していたコールセンターの拠点が変わるため、引っ越すこともできず悩んでいた時に、家の近くにコールセンターSV候補を募集していた日本ロードサービスの求人を見つけ応募し、現在までの経験を面接で伝え、すぐに採用されました。2019年10月から勤務開始し、入社当時から労働環境に対して驚き、異様な環境は目に見えていました。休憩時間になっても社員、アルバイトが休憩に入らない。1時間休憩を取る必要がある人なのに30分しか取らず席に着き業務を開始する。休憩時間前のアルバイトにセンター長は何も気にすることなく業務を指示し、アルバイトが休憩に行けない。長く勤務しており、様々な回線を一人で完結できるアルバイトなのに、何年経っても時給が上がらない。
 勇気を振り絞りアルバイトが「時給を上げて欲しい」とセンター長に伝えても厄介がられ、「その時の契約で契約を結んでいるし、時給について言われても困る。時給に納得できなければ辞めてもらっても良い」とセンター長には取り合ってもらえない。結果、「なんで私がこんなにやらなきゃいけないの!」など、社員やアルバイトの文句が聞こえ、コールセンター内の雰囲気がよくない。非常に恐ろしい光景が繰り広げられていました。
■見て見ぬふりはしたくない
 私以外の方は何か上に意見すると辞めさせられた人がたくさんいる、また突然来なくなった人がいることを知っているため何も環境改善したくとも意見が言えない人ばかりでした。私も意見を言わなければ良かったのかもしれません。パワハラに遭った際逃げればよかったのかもしれません。でも私はどうしても見て見ぬふりなんてできなかったのです。
 私を心配してくださるどの先輩やアルバイトにも「この会社は気をつけてね。会社をよくしたいという人は皆辞めさせられていくから!」と、私に口を揃えて教えてくれたことが今でも忘れられません。まだまだこれからも長い闘いが続いていくと思います。でも私は、精一杯真面目に仕事をしている方々を知っているからこそ余計に日本ロードサービスの劣悪な労働環境改善を求めたいと願う気持ちがさらに強くなっています。
 「弱い立場の者は強い立場の者の考えに絶対従わないと潰されてしまうんだよ」などと、未来ある子どもたちに教える大人になりたくないです。皆様どうかご協力いただければ嬉しいです。よろしくお願いいたします。
 A(組合員)

 

【2022春闘のテーマソング「賃金を上げよう」公開しました!】
https://youtu.be/C5Vine3IprM

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警備会社テイケイ(株)の退職強要事件で原告組合員の勝利判決、記者会見の動画を公開

警備会社テイケイ(株)の退職強要事件で原告組合員の勝利判決が出た件で4月1日に記者会見し、動画を公開しました。

youtu.be


同日の記者会見の様子は、「弁護士ドットコムニュース」などに掲載されました。

news.yahoo.co.jp


「退職届は無効」訴えた大手警備会社の男性が勝訴  退職しなければ「警察行きと誤信した」
4/1(金) 16:04配信

www.bengo4.com


「退職届は無効」訴えた大手警備会社の男性が勝訴  退職しなければ「警察行きと誤信した」
2022年04月01日 16時04分


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警備会社テイケイ(株)の退職強要事件で原告組合員の勝利判決が出た件で、記者会見し、「弁護士ドットコムニュース」などに掲載されました

大手警備会社テイケイ(株)から、労働組合加入後、ホテルに5時間も呼び出され退職届を書かされてしまった問題で、組合員で原告の警備員の勝利判決が出たので、本日2022年4月1日、記者会見を行いました。早速「弁護士ドットコムニュース」で記事にしていただきました。代理人は、旬報法律事務所の佐々木亮、鈴木悠太、髙橋寛弁護士です。

www.bengo4.com弁護士ドットコムニュース
「退職届は無効」訴えた大手警備会社の男性が勝訴  退職しなければ「警察行きと誤信した」
2022年04月01日 16時04分

 

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アリさんマークの引越社で働く皆さん、退職した皆さん、弁償金を取り戻そう!

プレカリアートユニオンは、大手引越会社の「アリさんマークの引越社」と、弁償金や未払い残業代を取り戻す交渉、社員や元社員で組合員となった30人以上が原告となる集団訴訟に取り組み、2018年2月13日、中央労働委員会で全面和解をすることができました。
会社は、原告33人と未提訴4人の組合員の未払い賃金、弁償金(請求総額約2億4000万円)について、解決金を支払うことで合意しました(解決金額は非公開)。労働法を遵守し、不当労働行為を行わないこと、組合員に対して、故意や重過失を除いて弁償金の負担を求めないことを確約しました。プレカリアートユニオンの組合員であれば原則弁償金の負担は求められません。

この闘いは、ドキュメンタリー映画『アリ地獄天国』となり、全国で上映され、DVDにもなっています。

www.ari2591059.comその後も、アリさんマークの引越社で働く社員、元社員から、「弁償金を負担させられた」という相談が相次いでいます。

プレカリアートユニオンが団体交渉を行うまでは、業務上の事故や破損は従業員に負担させられていました。会社は、従業員の弁償金の負担を上限3割とし、この度の和解で、プレカリアートユニオンの組合員に対しては、業務中の事故や破損について、故意や重過失を除く弁償金の負担を求めないことを確約しました。つまり、プレカリアートユニオンの組合員は、事故や破損の弁償金を気にすることなく、安心して働けるようになったということです。一緒に力を合わせて、安心して満足できる賃金で働ける職場に変えていきましょう。

引っ越し難民という言葉を聞いたことがありますか? 3月から4月は引っ越し業界にとっては繁忙期にあたります。人手不足による受注減少から引っ越し業者が見つからずに希望する時期に引っ越しができないといったことが起きています。人手不足はトラック業界全体で深刻化が進んでいます。この状況を変えるには、早急にドライバーの確保が必要です。不平不満のある職場に、人が集まるでしょうか?

不平不満がなく、安心して働ける職場にしてドライバーを増やしましょう。プレカリアートユニオンの組合員になって働きやすい職場環境を一緒に作りましょう。退職した方も弁償金、未払い残業代を取り戻しましょう。

退職を伝えたら、急に弁償金の請求をされた方、今すぐ、雇用契約書、弁償金の明細、給与明細など、手元にある資料を持って、プレカリアートユニオンにご相談ください。

 なお、映画『アリ地獄天国』に出演している当該組合員について、インターネット上や書籍で「組合内でパワハラにあっていた」「意思に反して退職和解を強制された」などと書いている人がいますが、事実ではありません。当該組合員も、そのような事実はなく、3年にわたる闘いを今も誇りに思っている、とコメントしています。誤解のないようによろしくお願いいたします。

【私がプレカリアートユニオン組合員として、大手引越会社との労使紛争を闘った様子を記録したドキュメンタリー映画『アリ地獄天国』が、公開されました。
 インターネット上で、私がプレカリアートユニオンのなかでパワーハラスメントにあったとか、意思に反して退職和解を強制されたと書いている人がいますが、そのような事実はありません。
 私は、家庭の事情などから、積極的に組合活動に関わることはできていませんが、この3年にわたる闘いを今も誇りに思っています。
 ぜひ多くの方に『アリ地獄天国』をご覧いただき、職場で理不尽なことがあったときの「正しいキレ方」を知っていただければ幸いです。
2021年9月14日
プレカリアートユニオン組合員 西村有】

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労働者を使い潰す「ブラック企業」問題の本質明らかに。『賃労働の系譜学 フォーディズムからデジタル封建制へ』(今野晴貴著/青土社) 

労働者を使い潰す「ブラック企業」問題の本質明らかに


『賃労働の系譜学 フォーディズムからデジタル封建制へ』(今野晴貴著/青土社) 

www.seidosha.co.jp


 ブラック企業という言葉が一般的に使われるようになって10年余。私たちの労働をとり巻く環境は悪化の一途を辿っています。「賃労働の系譜学 フォーディズムからデジタル封建制へ」はNPO法人POSSE代表であり、駒澤大学経済学部及び聖学院大学政治経済学部非常勤講師、沖縄大学地域研究所特別研究員、北海道大学公共政策学研究センター上席研究員の今野晴貴氏の著作です。
ブラック企業問題に取り組んできた著者の集大成的1冊
 これまでも今野氏は、ブラック企業に関する著作を精力的に執筆し、社会にその有害性及び労働運動のあるべき姿を提起し続けてきました。本レビューでも「ストライキ2.0」等を紹介しましたが、本書は今野氏が書きためてきた様々な論文を纏め、新たに4章分を書き下ろした全11章からなっています。
 ブラック企業の社会全体に与える問題や、なくならない理由などに始まり、資本主義社会のその先の展望に対する分析へ至る本書を読むことで労働運動のあり方、消費者として、生活者としてのあり方について様々に考えさせられる1冊でした。レビューの内外で、個人的にも今野氏の著作には多く触れてきましたが、本著はまさにその集大成ともいえる内容になっているのではないでしょうか。
■戦略として労働者を使い潰す資本主義社会
 通読して、資本主義は労働者を使い潰すことに始まり、現代までそれが脈々と続いているという流れが鮮明に可視化されました。ブラック企業はその先鋭化したものであり、人を使い潰す労務管理が現代特有のものではなく、資本主義社会における資本側の本能のようなものであるという構造についての理解を深めることができます。
 今日、日本でここまでブラック企業問題が深刻な主な要因の1つに、労働運動が活発に行われず、この使い潰しへの抵抗が極めて限定的にしか成されていないことにはやはり再注目するべきでしょう。
■産別に関する考え方
 産別の労働運動がいかに社会構造に影響を与え労働者の生活をよくするかということについては、権力から凄烈たる弾圧を受けている関西生コン支部の取り組みを見れば明らかです。今野氏は産別、ジョブ型の萌芽を現在の日本社会に見ています。ブラック企業が蔓延し、同業のどこの職場に転職しても劣悪な環境に変化が見られないことで産別の職業意識が醸成されてきているということは今後の労働運動の組織化を考える上でとても重要な視点です。
 行き詰まった資本主義社会の果てにどのような社会が訪れるかは私たちの取り組みに係っています。本書を読んで、従来型の運動手法にこだわらず、社会全体の流れを読み意識的に変革を促す視点を持たなければならないということを再認識しました。
 稲葉一良(書記長)

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企業に殉じ死してなお、その理論の中に縛り付ける、「企業のヤスクニ」システムの解明に挑んだ1冊。 『企業のヤスクニ』(金子毅著/高文研)

企業に殉じ死してなお、その理論の中に縛り付ける
「企業のヤスクニ」システムの解明に挑んだ1冊


『企業のヤスクニ』(金子毅著/高文研)


 「英霊」という言葉があります。主に戦死者のことを敬い使われるこの言葉、死を美化することで兵士達に自己犠牲を強いる役割を担っていた過去は皆さんもご存じの通りだと思います。「英霊」達は靖国神社に祀られ、このような過去の経緯から総理大臣の参拝について世の批判の的になることもしばしばです。
『企業のヤスクニ~「企業戦死」という生き方』は、文化人類学(含、経営人類学)、民俗学を専門とする聖学院大学准教授、東京大学大学院情報学環客員研究員の金子毅氏の著作。社会問題として定着しても減らない過労死・過労自死の構造的問題に付いて分析した本書は、企業が戦略的に労働者を企業の論理によって死に至らしめ、また、死してなお企業の論理の中に取り込むメカニズムの解明に挑んだ1冊です。
■企業理念が戦略的にポエム化され、先鋭化している実態
 本書の第2章では「企業理念のポエム化」というタイトルで、意味が空洞化し掴みどころのない目標に向かいひたすらに終わりのない努力と献身を強いられる戦略的企業システムについて解説しています。
 私は日々様々ないわゆる「ブラック企業」と交渉をしており、これらの多くにポエムの様な社訓・理念があることについては周知での事実でしたが、企業がこのような薄ら寒いポエムをここまで徹底して企業戦略として取り入れ、意図的に労働者を使い潰しているのかと驚嘆しました。
 昨今、周りを見渡せばSDGsのバッジを付けたビジネスマンが急増し薄気味悪さを覚えていましたが、これは現代におけるの「ヤスクニシステム」なのかもしれません。SDGsの内容そのものというより、内容を空洞化させ、経済成長を止めない方便としてのその使われ方が非常に「ヤスクニ」的に見えてきます。
■命と生活を護るために「企業のヤスクニ」からの覚醒を
 さて、唐突に「ヤスクニシステム」という言葉が出てきましたが、著者はこの本のなかで労働者を全体主義的に服従させるメカニズムとして「企業のヤスクニ」システムが作り上げられていること、そのヤスクニシステムから覚醒し過労死・過労自死に立ち向かっていく道を論じています。
 現在の日本の生活者が置かれた窮状は「敗戦」の言葉を以て戦後にも例えられることもありますが、本書を読んで、現在の私たちの社会はいうならば未だ戦時中であり、いつ「お国のために」命を奪われてもおかしくない状態だと認識を改めるに至りました。平和だ豊かだと煽られ、お国のために命を捧げるなんてまっぴらごめんだとは思いませんか。少し穿った見方と言われるかも知れませんが、先述したSDGsの実効性、生活者への負担増、労働者への低賃金、日本社会を「ほしがりません、勝つまでは」が支配しているようにも感じている今日この頃です。
 稲葉一良(書記長)

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