プレカリアートユニオンブログ

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「物言う労働者」だった未婚の母が労働組合を作る。映画『ノーマ・レイ』(マーティン・リット監督)レビュー

 ノーマ・レイは1979年公開された、社会派マーティン・リット監督による映画です。本作でアカデミー賞カンヌ映画祭主演女優賞を受賞した主演のサリー・フィールドが演じる「ノーマ・レイ」は、紡績工場で働く子持ちの女工。ある日、彼女の働く工場に組合を作るために町にやってきたルーベンと出会い、彼女の人生は大きく動き出します。町で唯一の職場である紡績工場に、労働組合が結成されるまでを描いた作品です。

だらしくなく無教養な主人公「ノーマ・レイ
 主人公のノーマ・レイアメリカ南部の田舎町で働く、貧しく教養のない労働者です。彼女は両親とともに暮らし、未婚の母として2人の子供を育てています。彼女だけでなく、その父も母も同じ紡績工場で働いています。2人の子供の父親は、それぞれ違います。1人はノーマの初めの夫で、子どもが生まれてすぐに酒場で殺されてしまい、もう1人の父親とは結婚をしていません。ノーマの性格はだらしなく、夢や希望を描くこともできず生活をしていました。

紡績工場の劣悪な労働環境
 町には仕事が少なく、多くの住民は紡績工場で働いていますが、ノーマの父と母がそうであるように、過酷な労働に疲れ果てていました。工場内は、絶えず騒音が鳴り響き、耳栓やイヤーマフの装着なしではとても耐えられません。仮にそれらをしていたとしても、ノーマの母のように難聴になってしまう事もありました。また、粉塵による肺病により、健康を害したり命を落とす労働者も後を絶ちませんでした。会社は具合が悪い事を申し出ても、意に介さず、ただただ低廉な賃金で労働者をこき使い利益を出すことしか考えていませんでした。ノーマは、そんな職場の中では数少ない「物言う労働者」でした。

「労働者は愚かなのではない!ただ疲れているだけだ!!」
 町にやってきた組合のオルグであるルーベンは、工場に足を運び労働者たちにビラを配り、根気強く組合への加入を呼びかけます。ノーマは、彼と交流する中で、強さと賢さ、そして闘う術を着実に身につけていきます。彼女は、次第に組合活動にのめり込んでいきます。作中ノーマと結婚したウェブスターは、家庭をそっちのけに組合活動に注力する彼女にたまりかねて不満をぶつけますが、彼女の情熱は衰えることはありません。自宅でも組合の集会を開くなど精力的に組織化を行い、着実に組合員を増やしていきます。

熾烈を極める組合潰し
 会社も、これらのノーマの行いを黙ってみていたわけではありません。ノーマは活動の序盤、高い報酬を餌に「能率係」へと昇進させられてしまいます。「能率係」は労働者の生産性を監視する仕事です。会社はノーマを労働者と相対する立場にすることで、仲間を増やすことを阻止しようとしたのです。企みに気づくと、ノーマはすぐに「能率係」の職を辞し元の女工に戻ります。他にも、組合の掲示物をわざと見えない場所に掲示する、黒人の組合なのだと嘘の噂を流す(当時、黒人差別は今よりずっと露骨で苛烈でした)、組合に同調する労働者から仕事を奪うなど、会社の組合潰しは熾烈を極めました。

「UNION」の下、団結する労働者
 組合活動の中心人物と目されたノーマは、組合を誹謗する掲示物を書き写している最中に事務所に連れて行かれます。その場で即時の解雇を通告されると、彼女は作業場の机上に立ち上がり、手書きの「UNION」の文字を大きく掲げます。工場内で作業していた労働者たちは、一人また一人と作業を中断し機械を止めていき、とうとう、工場で動いている機械はなくなりました。ノーマの毅然とした態度が、みんなの心を動かしたのです。その後、投票により工場に労働組合が作られることとなりました。

 この話は、実話を元にしています。この映画のヒットを受けて、なんと実際にモデルとなった紡績工場でも労働組合が認められるに至りました。社会が大きく変革していく時代を描いた、労働組合映画の金字塔です。

 稲葉一良(書記次長)

 

映画『ノーマ・レイ』(マーティン・リット監督)

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