プレカリアートユニオンブログ

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セクハラ上司をやっつけるコメディ。映画『9to5(9時から5時まで)』 (コリン・ヒギンズ監督/1980年・アメリカ)

 アメリカでは1970年代のウーマン・リブ運動によって、「伝統的な女性像」が根本から否定され、女性の労働が当たり前のものとなっていきました。映画『9to5』は、1980年製作のアメリカ映画です。監督はコリン・ビギンズ、主人公ジュディを演じるのはジェーン・フォンダ。3人のOLが、セクハラ上司をやっつけるコメディ映画です。映画と同タイトルの主題歌を歌うドリー・バートンは、3人のうちの1人ドラリーとして出演しています。
■セクハラに苦しむジュディ、ヴァイオレット、ドラリー
 ジュディは、離婚により、初めて働きに出ます。そこで出会ったのはベテラン社員のヴァイオレット。4人の子どもを育てるシングルマザーのヴァイオレットは、とても有能な社員であるにも関わらず、「女性だから」という理由で長年出世できないでいました。
 その最大の原因は副社長のハート。絵に描いたようなマッチョな男性で、ジュディやヴァイオレットをはじめとする女性社員に「チームワーク」が大切だと「伝統的な女性像」を押しつけてきます。彼のためにコーヒーを煎れることは序の口、業務としてプレゼント用のスカーフを買ってくることまで命じられる始末です。彼に逆らった者は容赦なくクビにされます。
 ドラリーはハートの秘書ですが、お互いに既婚者であるにも関わらず、執拗に関係を迫られたりプレゼント攻めに遭ったりというセクハラにうんざりしていました。また、どういうわけか職場の仲間からも孤立していました。ジュディ、ヴァイオレット、ドラリーの3人はそれぞれハートのセクハラに悩まされていましたが、1人では何もできずにいました。
■同じ悩みを持つ仲間同士が意気投合
 ある日、ドラリーは自分が職場で孤立しているのが、「ハートとデキている」という噂のせいだということを知ります。しかも、噂を流していたのはハート本人です。ドラリーはハートを怒鳴りつけ、そのままバーに飲みに行ってしまいます。
 同じ日、ヴァイオレットは昇進の選考に漏れたことをハートに伝えられます。「責任あるポジションなので男でなければならない」というハートの発言に、ヴァイオレットも怒って職場を飛び出します。ジュディは、他の女性社員が理不尽に解雇されてしまうということを知り、ヴァイオレットの助けを求め彼女の後を追います。こうして、職場を出た3人はバーで意気投合、みんなでどうやってハートを「殺すか」という空想を語り合います。
 その後、3人の空想は思わぬ形で現実のものとなります。当然ハリーは死んだりしないのですが、そのあたりはコメディならではの演出。結果として、3人はハリーを追い出す事に成功するどころか、大胆な職場改革を行い、保育室の確保、フレックスタイム、ワーキングシェアなど、今聞いても古さを感じない就労環境を実現します。ここに至るまでの経緯はぜひ映画を見てみてください。
■ハッピーエンドのなかにも差別が垣間見える
 この映画は理想的なハッピーエンドを描いていますが、1つだけ引っかかった点があります。ラストに3人のその後が伝えられるのですが、そこにも根強く女性の幸せは家庭にあるという「伝統的な女性像」が織り込まれているということです。
 ヴァイオレットはハートに代わって副社長の座に納まり、ドラリーは会社を退職してカントリーの歌手になります(演じるドリー・バートンがカントリーシンガーのため)。しかし、主人公のジュディについては「ゼロックスの社長と結婚」とだけあり、結婚して退職が想像されます。副社長になったヴァイオレットがシングルマザーであることと併せると、結婚とキャリアの両立はできないというメッセージにさえ受け取れてしまいます。
 こういった作品でさえ無意識の偏見とは無縁でいられなかった時代を思うと同時に、この偏見や差別が現在も根深く残っていることを痛感しています。ストーリーも音楽も最高なのに、最後が少し残念。
 稲葉一良(書記長)

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