プレカリアートユニオンブログ

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参政権獲得のために果敢に闘った女性たちから学ぶべきこと。映画『未来を花束にして』(サラ・ガウロン監督)

参政権獲得のために果敢に闘った女性たちから学ぶべきこと

 1918年はイギリスで女性に参政権が認められた年です。この参政権の獲得は、1860年代から粘り強く続けられた女性参政権獲得運動の成果です。映画『未来を花束にして』は、そんな参政権獲得運動が結実するきっかけを作った1912年を舞台に、婦人社会政治連合(WSPU)の活動に身を投じた活動家たちの葛藤・苦悩・成長を描いた物語です。監督はサラ・ガウロン、主人公のモード・ワッツを演じたキャリー・マリガンは、この映画での演技で第19回ハリウッド映画祭主演女優賞を受賞しています。

■劣悪な労働環境と蔓延する差別
 主人公モード・ワッツは24歳の洗濯婦で、同じ職場で働く夫のサニー・ワッツと息子のジョージとの家族3人で暮らしています。モードは7歳の頃から洗濯工場でパートとして働き始め、正社員になり今は班長を務めています。工場の労働環境は劣悪で、やけどをしたり、肺を悪くし、若くして命を落とす女性労働者が後を絶ちません。パワハラ・セクハラも野放しになっていました。実際、モードの母親も同じ工場に勤めていましたが、モードが4歳の頃に仕事でやけどを負い、命を落としています。同じ職場でも男性は配達が中心の比較的労働時間が短い楽な仕事で、給料も女性の1.5倍程でした。女性はあからさまな差別を受け、過酷で低待遇な環境での労働を余儀なくされていました。

■怒りと希望を胸に活動家に
 女性が差別されていたのは、もちろん職場だけのことではありません。当時の女性には参政権がなく、子どもの親権も認められない、妻は夫の所有物という扱いでした。モードはある日、街でWSPUの過激な行動を目にします。初めは過激な抗議行動を冷めた目で、迷惑なものとして見ていたモードですが、同じ職場の新入りの洗濯婦ヴァイオレットをかばったことがきっかけで活動に近づき、ひょんなことから彼女の代わりにスピーチをする機会を得ます。モードの素直で切実な訴えは聞き手の心を打ち、モード自身も自分には違った生き方ができるのではと感じ、次第に熱心な活動家になっていきます。

■すべてを失い、より活動に心血を注ぐ
 夫のサニーは、モードが活動に参加することをよく思っていませんでした。初めてデモに参加した際、モードは逮捕され5日間投獄されてしまったのですが、このことがきっかけで、工場をクビになり、さらにサニーから一方的に家を追い出されてしまいます。モードは最愛の息子と引き離されたことに深く悲しみますが、育児などまったくしたことのなかったであろうサニーは息子のジョージをどう育てていったいいかがわからず、あろうことか養子に出してしまいます。すべてを失ったモードは、より過激に運動に関わっていくことになります。

■権利は犠牲を払って「勝ち取った」もの
 その後、ある悲劇をきっかけに活動は大きな渦となり、やがて世の中を動かすにいたります。エンディングでは、この運動で1000人以上の女性が投獄されたことを伝えた後、1918年に30歳以上の女性に参政権が与えられ、1925年に女性の親権が認められ、1928年に男女平等による普通選挙が実現したことが告げられて映画は幕を閉じます。
 今、あたりまえのように私たちが享受している権利ですが、先人達の闘いの末に勝ち取ったものであることをけして忘れてはいけません。時をほぼ同じくした1920年、日本で第1回メーデーが開催され、8時間労働や最低賃金を求めた運動がおこります。多くの犠牲を払って勝ち取ったのが現在の私たち労働者の権利です。今の日本の権利を上から与えられたものと錯覚し、自らの権利に無関心になってしまった挙げ句、その権利を侵害されていることにさえ鈍感になってしまっている現状に強い危機感を感じます。権利のために犠牲を払って果敢に闘った100年前の彼女たちの闘いの物語から、私たちは多くを学ばなければなりません。

稲葉一良(書記長)

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