プレカリアートユニオンブログ

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世の中に取り残された「家族」がたくましく生きる様を描く、不寛容な日本社会の問題が浮き彫りになった作品。映画『万引き家族』(是枝裕和監督/2018年/日本)

映画『万引き家族』(是枝裕和監督/2018年/日本)

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世の中に取り残された「家族」がたくましく生きる様を描く
不寛容な日本社会の問題が浮き彫りになった作品


 家族とは何か、他人とは何か、深く考えさせられる作品でした。「万引き家族」は、是枝裕和監督による2018年6月8日公開の日本映画です。第71回カンヌ国際映画祭において、最高賞であるパルム・ドールを獲得した本作は、社会から置き去りにされこぼれ落ちてしまった血縁関係のない人たちが、不安定な仕事と万引きをすることで何とか生活を成り立たせ「家族」として肩を寄せ合い生きていく様を描いた映画です。日本社会の様々な格差の縮図を濃密に描き出しています。
■不安定な仕事と万引きで生活を支える
 主人公の浩と信代は夫婦です。ふたりは信代の妹の亜紀、母の初枝、そして「息子」の祥太とボロボロの平屋一戸建てに暮らしています。浩は建設現場の日雇い労働者として働き、信代はクリーニング工場のパートとして働いています。亜紀は家出をし「家族」と共に生活をするようになったのですが、風俗で働いています。初枝の年金を生活費に充ててもなお成り立たない一家の生活は、亜紀以外の家族が「万引き」をすることでかろうじて支えられていました。祥太も学校には通わずに、家族の一員として万引きをすることで家計を支えていますが、物語は、そんな祥太が浩と共にスーパーで万引きをするシーンから始まります。
■貧しい中にも笑いが絶えない暖かい家庭
 ここまで聞いて、暗い表情で不幸に暮らす「家族」が想起されてしまうかも知れませんが、決してそんなことはなく、貧しい中にも笑いが絶えない温かい家庭です。「家族」には親から虐待されていた、ゆりも加わり、どこかノスタルジックにも感じられる、今ではすっかり失われてしまった幸せな家族像か描き出されます。浩が労災隠しをされた挙げ句に職を失い、信代もパートの仕事がなくなってしまう、ゆりの行方不明がテレビで報じられ話題となる、など作中で家族を様々な困難が襲いますが、起こったことの深刻さをまるで感じさせないほど、「家族」の絆によってみんながたくましく生き抜いてる様は圧巻です。そんな「家族」の生活は初枝の死から急速に壊れはじめます。
 本作は社会から置き去りにされてしまった人々、いないことにされてしまった人々に光を当て日本の格差、差別、制度の問題について鋭い批判を加えています。作品のモチーフとなったのは、親の死亡届を出さずに年金の不正受給を行った家族の事件だといいます。この作品で描かれている家族の行為も不正受給なも当然やってはいけないことです。しかし、それをしなければならない生きづらさを無視して一方的に、「犯罪者」、「人間としてダメ」などの非難をし、つるし上げてしまうことはとても危険なことです。本当にその人たちだけの問題で、私たちに、社会そのものに責任はないのでしょうか。『ジョーカー』とはまた違った角度から、そのようにせざるを得なかった人たちの事情、背景に視点が向けられることにこの作品の真価があるように思えます。
 稲葉一良(書記長)

 

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