プレカリアートユニオンブログ

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【現役ドライバー組合員の手記】長時間労働だとなり手がない。稼げなくなると辞めてしまう。どう立ち向かう、運送業界2024年問題

長時間労働だとなり手がない
稼げなくなると辞めてしまう
どう立ち向かう、運送業界2024年問題


 皆様、日々の組合活動大変お疲れ様です。いよいよ4月1日よりトラックドライバーの1年間の残業時間の上限が960時間までに規制されます。これによって様々な問題が起きる事が予想されます。これがいわゆる運送業界の2024年問題です。
 では実際にどんな問題が起こることが予想されるかというと、宅配便などの到着が大幅に遅れる、食料品店等に並んでいる食品が品薄になる、あるいは値段が上がるなど、です。なぜこういった問題が起こるのかというと、今の運送業界は深刻な人手不足だからです。
■ドライバーの長時間労働で成り立つ物流業界
 では今まで何故宅配便が翌日に届いたり、豊富な食品が食料品店に商品が並んでいたりしたのでしょう? 答えは簡単です、トラックドライバーが長時間労働をしていたからです。さらに問題は商品の値段が上がれば売り上げが落ちるので、どこのメーカーやお店も値段を上げられない。よって運送屋さんに払う運賃も上げられないどころか、値下げ要求までされる始末。そして泣きを見るのが末端の配送を受け持つドライバーなのです。
 最近の物価上昇は各家庭に大きく響いています、しかし私たちドライバーは30年間給料が上がらず、物価は上がり続ける。こんな仕事に就こうとする若者が居ないのは当然といえるでしょう。
 では残業時間の上限が960時間に規制されることによって、これらの問題は解決されるのでしょうか? ここで私は疑問があります。厚生労働省の基準(労災認定基準)は1ヵ月100時間以上の残業又は2~6ヵ月の平均残業時間が80時間を超えるとあります。年間960時間ということは1ヵ月80時間まで残業が出来ます。これを6ヵ月続けるとなんと労災認定基準になりませんか? 過労死基準まで許可していいんですか? 本当にこれで問題は解決するのでしょうか? 私の答えはNOです。
■一方で稼げないと辞めてしまうドライバーも
 なぜならば、運送業界にはお給料がたくさんもらえるなら、何時間でも残業したいという人が一定数いるからです。私はその方たちの考え方を否定するつもりはありません。でもその方たちは残業に上限ができたため、今までほどのお給料がもらえなくなったらどうするでしょう? 私だったら辞めてしまうと思います。だって稼げなくなるのだから。
 そうするとさらにドライバーが不足し、日本の物流が完全に麻痺することになります。皆さんの生活が脅かされることになります。

■高速道路の最高速度引き上げ。「そこじゃない!」
荷物が早く着くわけでもなく地場配送には影響なし

 また、本年2月27日に大型トラック(トレーラーを除く)の高速道路での最高速度を現行の80キロから90キロに引き上げる政令閣議決定いたしました。これに関しても私は違和感があります、スピードを10キロ上げるだけで荷物が早く着くと思っているのでしょうか? 運転するドライバーの危険と疲労が増すだけです。役人、有識者とされる先生方が現場の意見を聞かずに想像と机上の論理だけで考えるからこんな陳腐な解決案になるんだと私は考えます。「そこじゃない!」と私は強く言いたい。
 世の中の全てのドライバーが高速道路を走っているわけではありません、最高速度を90キロまで引き上げる案は主に長距離ドライバーのための改善策ですね(改善にはなりませんが)。地場を走るドライバーは経費節約と会社から言われ、一般道を走ります。なので最高速度が90キロになっても今迄と変わりないのです。このドライバー達は残業をしていないのでしょうか? とんでもない、皆さん日々普通に3~4時間は残業しているでしょう。この方たちの労働環境は全く改善されないままということになりますね。
■労働者の諦めが悪しき習慣温存する
 我々労働組合運送業界の2024年問題にどう向き合っていけばよいのでしょう? 私も現役のドライバーですが、この問題を解決するのは本当に大変なことと感じています。私の会社の同僚たちは口を揃えて「どうせ言っても無駄!」と言って諦めています。でもそれが問題なんだと気付いてほしい。声を上げなければ何も変わらない。だから会社は問題を直視せず、昭和の時代からの悪しき慣習のまま経営を続けるのです。ドライバー側にも変わらなければいけない部分に気付いてほしい。私の本音です。
■「送料無料」はダメ!
 そして皆様にお願いがあります。ネット通販等の送料無料はダメだと気付いてください。人が荷物を運んでいるのに送料無料のわけがない。泣いている会社あるいは労働者がいるのです。また24時間営業のスーパーやコンビニは必要でしょうか? お店が営業すれば配達が必要になります。昔のように深夜は休みではダメでしょうか? 深夜に営業しなければ、深夜に配送する必要がなくなります。
 私がよく利用するコンビニの店長さんは「深夜時間のバイトさんが見つからない」と言って店長さん自身が深夜を含めて15時間程勤務しています。我々が生活の仕方を見直すのも運送業界の改善に繋がるかもしれません。
 美澤良之(運送・運輸支部支部長)