LGBTの職場の問題は解決できると伝えたい
『虹色ジャーニー~ 女と男と時々ハーフ』(浅沼智也著/文芸社)
LGBTのTは「トランスジェンダー」を意味し、自認する性別と出生時の性別が一致していない人のことを指します。『虹色ジャーニー~ 女と男と時々ハーフ』は、トランスジェンダーであることを公言し、様々な運動や取り組みを行っている浅沼智也さんが自身の半生を綴った1冊です。
■今日頑張ったら、明日死のう
衝撃的な書き出しから始まる本書には、浅沼さんが、何度も自らを傷つけ、時として死ぬことを選ぼうとしては、思いとどまり、若しくは救助されることで一命を取り留めてきた様子が描かれています。LGBT当事者の2人に1人が1度は「自死」を考えたことがある、ということは何度も聞いた事がありましたが、本書の明るく赤裸々な語り口から突如として随所に現れる、「死のう」という言葉は、読み手に深く突き刺さります。
■労働組合と繋がっていればと思う場面も多々
浅沼さんは、様々な仕事を経験していき、夜の街でのダンサーや水商売も経験します。職場で繰り広げられているのは、労働法無視の搾取です。仕事を辞めるために「逃げる」事を選んだり、借金のカタに働かされているキャストを助けるために貢いで借金を負ったりと様々なトラブルを懸命に生き抜いてきた浅沼さんの様子が生き生きと記されています。しかし、都度都度感じたのは、労働組合と繋がれていれば、解決できた問題がいかに多かったかということです。
■問題は解決できるということを伝えたい
多くのLGBT当事者が、SOGIハラなど、職場の労働問題が解決できるということを知らず、仕方ないこととして諦めてしまっています。様々な問題に対して、仕方がない、自分は普通ではないから、等と諦めてしまっているのだという話も多く耳にします。労働組合という、職場で問題が起こったときに相談できて、解決できる手段があるということをLGBT当事者にもっと広く伝えていかなければならないと本書を読み、切に感じました。
稲葉一良(書記長)
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