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「パンク」な表現で女性らしさの押しつけをあぶり出す。『キングコング・セオリー』(ヴィルジニー・デパント著・相川千尋訳/柏書房)

「パンク」な表現で女性らしさの押しつけをあぶり出す

キングコング・セオリー』(ヴィルジニー・デパント著・相川千尋訳/柏書房


 「私はブスの側から書いている」、衝撃的な書き出しで始まる「キングコング・セオリー」は、現代フランスを代表する作家、ヴィルジニー・デパントの2006年の著です。その後、Twitterでの#MeToo運動の広がりなどにより、再び注目を集め、相川千尋により日本語に翻訳され、2020年におよそ15年越しで日本語版の出版となりました。
■売春が規制される理由
 女性は、社会においてその「女性らしさ」を守ることを常に要求されます。娼婦に対する世の中の目がそれを物語っています。例えば、著者は「ホームレスになるのことは許容された転落だ」とし、「40歳で野宿をすることはいかなる法律によっても禁じられていない」としています。一方で、売春が世界中で規制される理由として、「なぜなら、売春契約がありふれたものになれば、婚姻契約の実態がよりはっきりと見えてしまうから」と延べ「これまでに不自由なく暮らしてきた女たちの多くが、売春を合法にするべきではないと固く信じている」のだと記しています。
■「男性性」による支配の社会構造
 また、仕事ができる女性であっても、そのほとんどは女性らしい服を着て、男性の存在を脅かすものではない「女性」であるということをアピールしています。女性が仕事で突出することは、男性の男性性を使った支配の社会構造にとって決して歓迎されるものではないためです。
 レイプ被害者であり、フェミニストセックスワーカーであった著者の「パンク」な表現は、一切のオブラートを纏わず、男性社会において女性らしさを押しつけられるというのがどういうことなのか、どのような偏見や差別、パワーが世の中を満たしているのかを鮮明に読み手に訴えかけます。刺激的な表現が続く本書ですが、自分らしく生きたいと願い、行動してきた著者がぶち当たったものを知ることで、ジェンダーバイアスをあぶり出す助けになる1冊です。
 稲葉一良(書記長)

 

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