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人事部が教える「心を折る」リストラ手法と対抗策

人事部が教える「心を折る」リストラ手法と対抗策

巧みな人事担当者は、解雇するような下手は打たない――。人事部のリストラ手法を知り尽くした組合員が、人事担当者の思惑と具体的なリストラ手法を解説します。

■総論・退職勧奨を跳ね返す一言
 次の発言は、退職勧奨を行う者がよく使う言葉です。
 「あなたの業績が悪い」、「コミュニケーション能力が低い」、「自己研鑽をしていない」、「事業所を閉鎖する」、「あなたに任せる仕事がない」、「あなたの居場所はない」、「人は余っている」、「あなたはもっと別の場で活躍できる」、「このままだとお互い不幸になる」、「今辞めることが、一番好条件だと思う」、「あなたと会社とで重なり合う部分が少ない」、「当社以外でも輝くことができるはずだ」、「解雇になると履歴書に泥がつく」、「辞めろ」――。これらを跳ね返す言葉があります。「辞めません」です。なぜこの言葉で跳ね返すことができるのでしょうか。簡単に言うと辞めるか辞めないかを決める権利はあなたにあるからです。人事で働く労働組合員の視点から切り込んでいきます。
 あなたが受入れやすい事実はどちらでしょうか。
 おそらく右側は、会社から耳にタコができるほど言われたものではないでしょうか。では、左側のことを、誰か教えてくれましたか? 教わっていなくても、本当は気づいていませんか? 美しく塗り固められ精神安定に寄与する右側について語ることはもはや不要と考えます。
 ここでは、わざわざ聞きたくもない左側、特にリストラについて記します。あなたがなぜリストラされるのか仕組みを受入れることができたときは、自衛力が著しく向上しているでしょう。本当に守りたいものは何なのか、今一度自身に問いただしてください。

リストラの目的とは
 簡易迅速に利益を上げるための手段として行われます。労働者への賃金や社会保険料会社負担額等は、損益計算書の最上部にある売上高(収益)のすぐ下にある売上原価や販管費(費用)に含まれます。費用が抑えられれば、利益が上がるといった仕組みです。物を売るなどして収益を得るよりも、労働者を辞めさせ、費用を抑えることのほうが、短期間で大きな利益が出ます。出資者の信頼回復、株価上昇が期待できるのです。

リストラ計画の流れ
 リストラ計画は、基本的に、いくら削減をするか決める→対象者(費用削減の効果)、退職加算金(解雇予告手当不払と言われないため)、手続き(同意書の作成等訴訟リスク回避)、募集期間(労働者には期間限定フェアと前面に押し出す)、募集人数に達しなかったときの対応(退職強要のシミュレーション)等を検討→各部門へノルマ振分け、という流れになっています。

なぜ人事はリストラをするのか
 人事部がリストラをするのは、仕事だからです。人事部員の多くは人事しか知りません(筆者は現業部門から会社都合によりたまたま人事部門に配転されただけのレアモノです)。生え抜きも多く、その会社での人事のあるべき姿をすりこまれます。人事は直接部門や顧客の声が聞こえません。人事に向いている人は、経営者の意をくんで、ヒトに関わる金の事務を、“ひとごと”として処理できる人です。

なぜ上司はリストラに必死になるのか
 では、なぜ上司が必死にリストラをするかといえば、仕事だからです。上司にはノルマが課せられており、未達の場合、上司自身の進退に関わるからです。

リストラに感情は存在しない
 あなたがリストラされるとき、会社に感情はありません。会社の目的は営利であるという絶対的事実(会社法上、定義されています)があります。目的達成のためには、あなたの過去の功績、ささいなミス、コミュニケーション能力などは無関係ということです。単に計画要員というだけです。

リストラに対する心得、予防、対処
 改めて、リストラに対する心得などをご紹介します。
・出勤中から帰宅中まで、常にICレコーダーを回しておく。
・急な呼び出しがあったときは、即応せずお手洗いにいってICレコーダーが回っているかチェックする。
・退職勧奨は即決させることを目標としている。絶対に同意してはだめ。労働者優位な条件などない。
・退職勧奨中は、法律上の駆け引きであり、サラリーパーソン論のステージではない。
・会社はあなたを守らない。あなたを守るのはあなた自身です。


■会社実務編 退職勧奨の正体
 退職勧奨とは、会社が労働者に対し、辞めてくれないかと働きかけることをいいます。退職勧奨に応じて退職しても、解雇ではないため、解雇予告手当を支払う義務はないことになります。しかも、労働者は合意をしています。こうなってしまうと裁判などで、解雇問題を争うことが困難になり、解雇が有効と判断されるハードルはとても高いです。解雇をすると行政からの助成金に制限がかかります。裁判になると企業名が掲示されます。そしてインターネット等を通じて噂が拡散し、採用が難しくなり、次代の従業員がいない企業は衰退します。解雇は企業にとってリスクが大きすぎるのです。

まずは自主退職させることから
 前回の記事冒頭に書いた退職勧奨者がよく使う言葉を思い出してください。これを言われると心が折れますよね。怒りのあまり「辞めてやる」といってしまうかもしれませんし、「私は社会から必要とされていない」と戦闘不能になることもあると思います。そこですかさず会社が出すのが「退職願」です。このとき会社は「辞めるときは会社のルールに従って『退職願』を出せ」といい、渡します。これは労働者から会社に辞めると意思表示をしたことの証拠になってしまいます。自主退職にすれば会社はノーリスクです。
 ここで会社に食ってかかると会社は、「解雇にしてもいいんだ。解雇になると履歴書に泥がつく。就職活動にひびくぞ」といいます。だいたいこれで労働者は再起不能です。おかしいですね、解雇にすると不利になるのは会社なのに。会社都合で辞めることが、そんなに醜いことなのでしょうか。
 企業の採用担当者はこういいます。「こんな短期間で自己都合で辞めるなら、当社でも長続きしない」「長く勤めた会社を自己都合で辞めるなんて、大きな失敗をしたに違いない」「ブラック企業で働いてしまったあげく無理やり会社都合で辞めさせられたのか。同情する」。もちろん会社都合退職に否定的な立場の採用担当もいます。結局は、退職理由が就職活動にひびくなどと考えることは、答えのないものを探していると私は考えます。

辞めない労働者には退職勧奨・退職強要
 誤解しないでいただきたいのが、自主退職が不調に終わったら、日をあらためるのではなく、その時点から退職勧奨・強要を始めます。日をあらためると、労働者が知恵をつける可能性があるからです。
 リストラは、企業側は2人以上で行うケースが多いです。あなたは、2人の上司から長時間人格攻撃をされ耐えきる自信がありますか? ボロボロの精神状態のなかで、わずかな退職金パッケージをちらつかせ、「今ならこれだけ払える。もう次はこんな良い条件は提示できない。あなたのためにもこれを元手に新しいステージで輝いてほしい。あなたの能力ならどこでもやっていける」などと呪文を唱えます。
 リストラの仕組みを知らない人であれば、同意書にサインをしてしまうでしょう。なお、労働者側からの訴訟提起も会社は視野に入れているため、一人はPC記録をとっています。暴言や卑下する発言は控えてください。

それでも辞めない人には
 即日で決着ができなかったリストラは失敗といえますが、まだ会社はあきらめません。翌日にはまた同じことを繰り返します。根性で初回リストラを乗り切ったとしても、正しい対応を知らなければ、心身のダメージは蓄積されています。このレベルになると、「あなたを訴えなければならない」とか意味不明なことを会社は言い出します。何を訴えるのか、いまだに私はわかりませんが。

まだまだ辞めない人には
 ここからは長期戦です。達成困難な業務をさせ能力不足の事実捏造が開始されます。そして人事考課で低評価をつけ、給与を下げにかかります。もうここまでやられてしまうと、心を病んでしまっているおそれがあります。安全配慮の名目で休職を命じ、復職させず自然退職とし、会社の目標は達成します。


■対処編 退職勧奨は即決させることが目的
 退職勧奨は、労働者に即決させようとします。退職勧奨に同意してはだめです。労働者優位な条件を会社が初めから提示することなどありません。まず、会社は業績不振などの話を始めます。そしてあなたがいかに会社にとって不要な人物かを説き、心を折ります。
 退職合意を交わすと契約成立です。民事で争うことが困難になります。会社は訴えられたら負けです。訴えることができないように合意書を交わします。また、即日離職のケースが多いです。会社の闇は速やかに封印します。
 ところで、あなたは次の仕事は決まっていますか? 退職加算金は低額です。どこの世でも相手方が初めに示した金額は、払っても痛くもかゆくもない金額です。あなた一人が辞めた程度で会社の財政に影響はありません。上司が会社の財政を気にするなら上司が辞めればいいのです。

退職勧奨中は、法律上の駆け引を行うとき
 退職勧奨は、サラリーパーソン論のステージではありません。退職勧奨中、人事部は、たいてい、能力不足の話をしてきますが、右から左に流してください。事実でないことは否定してください。在職の意思表示をしてください。
 労働法の知識のない退職勧奨実行者は、自身の物差しのみで計った欠格サラリーパーソンは、辞めて当然と本気で思っています。私は、そういった勘違いの人が、最後は自分が会社から退職勧奨をされ、あっけなく心が折られているのをみています。
 しょせん彼らにとって退職勧奨は“ひとごと”です。さて、あなたが同情・配慮・手心・自己責任論等を極限状態で捨てきれないでいると、あなたの心が折られます。退職勧奨は会社側は2人以上で行ってくることが多いです。2対1です。覚悟を決め、絶対に同意をしないと貫いてください。通常、制限時間は決まっています。首を縦に振らなければいいのです。疲れたら退職勧奨の最中でもお手洗にいって心を整頓してください。安心してください、退職勧奨の計画は決まっているのですから、あなたが離籍したことが評価に響くとかそういった次元ではもはやないのです。

退職勧奨には、在職の意思表示を
 会社「あなたはもっと別の場で活躍できる」「お互い不幸になる」「今辞めることが、一番好条件だと思う」「あなたと会社とで重なり合う部分が少ない」「当社以外でも輝くことができるはずだ」「あなたの居場所はないよ」
 あなた「辞めません。辞める理由がないので辞めません。在職し今後とも、つとめてまいります」
 会社の話しに付き合う必要はありません。延々と辞めませんと言い続けます。断った回数に比例して労働者に有利に傾きます。

退職勧奨中は、会社側に一方的に話させる
 退職勧奨時に会話をしようとしてはだめです。
例1
会社「あなたは最近業績が落ちている」
あなた「……」
会社「そういえば、最近コミュニケーションも周囲ととっていないよね」      あなた「……」
会社「何か努力をしているの」                          あなた「……」
あなた「部長が業績が残せるようになったのには、どういった努力をされたのですか」
会社「○※×△†☆…」 
あなた「さらなる自己研鑽のため、部長がなさった努力をもう少し詳しく教えていただけますか」
会社「○※×△†☆……」
あなた「ところで、この面談の目的はなんですか」
 ……と時間切れまで話させる。会話が成立しておらず、相手はいらつきはじめるので、ハラスメントの証拠を録音してください。
例2
会社「事務所が閉鎖するんだよね」
あなた「そうですか」
会社「いや、働く場所がないよね」
あなた「通勤可能な支店がありますよね」
会社「いや、人は余っているから
あなた「そうなんですか」
会社「辞めてくれるかな」
あなた「辞めません」
会社「あなたの居場所はないよ」
あなた「なぜ部長は私が辞めなければならないと仰っているのですか」
 ……このループで時間切れを狙います。繰り返しますが録音してください。


■予防編 出勤中から帰宅中までICレコーダーを回す
 退職勧奨が始まる前に、入室時から、ICレコーダーを回してください。
・面接の日から回してください。求人詐欺や内定取消しに対抗できます。
・ハラスメントは予告なく行われます。常にICレコーダーは回したままにしてください。
・昼休みや通勤の最中に、会社の人が話しかけてくることがあります。気の抜けたところでボロはでるものです。
・敵対する上司だけでなく、同僚なども証言者です。上司の悪口を言い出したら、具体的事実を聞いてあげてください。

スマホには、会話録音アプリを
 私用携帯を仕事で使わないようにしたほうがいいと思います。癖がつくと休みの日も会社から容赦なくかかってきます。ただ、拒絶する前に、何度かは会社からの電話に付き合ってあげてください。そして休日労働の事実を録音してください。あわせて通話記録を電話会社から取り寄せ、しかるべきときに電話代を請求する準備をします。忍耐力のある人はしばらく何もいわず会社に付き合ってあげて釣るのも一つのやり方です。ただし、健康第一。休息は大切ですのでほどほどに。

日記をつけICレコーダーの中身を書く
 毎日簡単な日記をつけます。誰がいつ何をした程度でいいです。録音時には大したことでないと思っていても、後から重要な事実であることもしばしばあります。記憶は薄れますので、ICレコーダーとリンクした日記をつける習慣をつけます。
 急な呼び出しがあったときは、即応せず御手洗にいってICレコーダーが回っているかチェックします。こういうときに限って回し忘れていることがあります。お手洗いへ行き落着き、ICレコーダー準備OKと確認してください。

仕事は真面目にしましょう
 労働者には職務専念義務があります。仕事中は仕事をするということです。つまり自身にミソがつくような行為を、日頃からしないよう心がけてください。貸与物を私的に利用していませんか? 仕事中にスマホをさわっていませんか? 仕事とは関係のないWEBをみていませんか? これらは上司だけでなく、同僚もみています。私的行為は、仕事から解放されたときに私物を使って好きなだけ行ってください。

事実でないことは否定しよう
 常日頃、会社も同じように、あなたのことを記録しているという前提をもつことです。
 相手もあなたの言動をみていています。記録もしています。もしあなたが誰かともめてしまったときは、目撃者から徹底的に事情聴取します。目撃者は恐怖からなのか、それとも情報提供することにより自分が評価されると勘違いしているのか、自身にとって都合の良い、あなたにとっては都合の悪い事実だけをかいつまんで話します。
 もしこの件で呼び出しをされたら、事実は反省してください。その1回程度が解雇になるなどということはほとんどありません。しかし、事実でないことは断固否定してください。上司はその否定を否定してきますが、あなたはそれを事実をもとに否定してください。

リストラ≠解雇。だから、退職勧奨をする
 解雇の難易度は高いです。そのため会社は退職勧奨をします。退職勧奨における人格攻撃の材料として、定期面談と称して事実の捏造をはじめます。後に争いになるとこれが「個別指導をした」という主張に化けます。定期面談等においては、反省を超えて自身を卑下するような発言は慎んでください。

ダメ出しは証拠造りのため。自身を卑下しない
 上司はこんな会話をしようとしてきます。
上司「(威圧的に)この件についてどう思う?」
あなた「私にも悪いところはありました。具体的には○○です」
 この会話は、退職勧奨であなたの心を折る事実を捏造するためのものです。通常の定期面談でも反省の域を超え自身を卑下するような発言は慎んでください。その発言は争いになったときに会社は証拠として出してきます。
 リストラに対する心得、予防、対処をもう一度書きます。
・出勤中から帰宅中まで、常にICレコーダーを回しておく。
・急な呼び出しがあったときは、即応せず御手洗にいってICレコーダーが回っているかチェックする。
・退職勧奨は即決させることを目標としている。絶対に同意してはだめ。労働者優位な条件などない。
・退職勧奨中は、法律上の駆け引きであり、サラリーパーソン論のステージではない。
・会社はあなたを守らない。あなたを守るのはあなた自身です。

本当に守りたいものは何ですか
 会社はあなたの人生を保障しません。尊厳・家族・お金、誰でも絶対に譲れない、守りたいものはあると思います。極限状態になったとき、闘わずして潔く去るか、這いつくばってでも噛みついて抗うか。あなたの人生はあなたが守るのです。
Y(組合員)

 

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