プレカリアートユニオンブログ

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物語(ナラティブ)の力は人を動かし社会を変革する。『人を動かすナラティブ なぜ、あの「語り」に惑わされるのか』(大治朋子著/毎日新聞出版)

物語(ナラティブ)の力は人を動かし社会を変革する

人を動かすナラティブ なぜ、あの「語り」に惑わされるのか』(大治朋子著/毎日新聞出版

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 ナラティブという言葉を聞いたことはあるだろうか。「物語」や「語り」などと訳されるナラティブには人を動かす力がある。『人を動かすナラティブ なぜ、あの「語り」に惑わされるのか』は、毎日新聞編集委員である大治朋子氏による1冊。本書ではナラティブを「さまざまな経験や事象を過去や現在、未来といった時間軸で並べ、意味づけをしたり、他者との関わりの中で社会性を含んだりする表現」と定義し、それがどのように人の心に作用するか、どのようなナラティブが人の心を動かすか、様々な分野でどのようにナラティブは用いられているかを広範に解説する。
■「ネトウヨ」製造兵器ナラティブ
 本書を読んで1番衝撃を受けるのは、戦争の兵器として、権力争いの道具として広くナラティブが利用されているという事実だ。ナラティブを使った心理操作の効果は絶大だ。SNSを利用し、ターゲットを絞りナラティブを拡散することで人を惑わし、恐怖心を煽り、排外主義思想を植え付け、テロを引き起こすことすらできてしまう。実際に起こった凄惨なテロ事件や、戦争の裏でのSNSでの情報戦を分析すると意図的に錬られ拡散されたナラティブ兵器の姿が見えてくる。「陰謀論」という言葉をよく聞くが、あれも一種のナラティブであり、それをどのような層にどのように信じ込ませるかも兵器としての運用の一部であることも示されている。
 本書を読むと、人はどのようにして「ネトウヨ」化するのかがよく分かる。本人の気質につけ込まれ意図せず改造・洗脳されているとすらいえる状態だ。所謂ネトウヨは強い差別、排外主義思想を持ちそれは戦争に繋がる。ナラティブの力を悪用してはならない。
 本書では人の心を回復させるナラティブの機能にも深く踏み込んだ言及がなされている。PTSDを抱える当事者が自分のナラティブを再構築していく中で心の平穏を徐々に取り戻していくプロセスは、カウンセリングの現場でも積極的に取り入れられている。また、性暴力被害と闘う伊東詩織氏、五ノ井里奈氏がどのような社会のナラティブと闘い新しいナラティブを紡いだか等も紹介されており必読である。物語には、人を動かす力がある。職場で傷つき有期を奪われた仲間を励まし力づけるために私たちも積極的にナラティブについて学んでいく必要がある。
 稲葉一良(書記長)

 

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