プレカリアートユニオンブログ

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価値の自明性問い直す展示にアーティスト支部組合員が参加 川崎重工のイスラエルからの武器輸入に抗議も 「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか? 国立西洋美術館65年目の自問 現代美術家たちへの問いかけ」 小田原のどか(多摩美術大学支部支部長)

価値の自明性問い直す展示にアーティスト支部組合員が参加 川崎重工イスラエルからの武器輸入に抗議も
「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか? 国立西洋美術館65年目の自問 現代美術家たちへの問いかけ」
小田原のどか(多摩美術大学支部支部長)


 5月12日まで国立西洋美術館で開催された「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?──国立西洋美術館65年目の自問 現代美術家たちへの問いかけ」展には、アーティスト支部の飯山由貴、田中功起、そして多摩美術大学支部の私が参加していた。
■美術史の価値形態の問い直し試みる
 西洋美術を冠する国立館である同館に、「日本の現代美術」は収蔵されていない。存命の作家の作品すら、収められてはいない。かような同館が、開館以来初めて、日本で活動する現代美術家たちを招き入れた。自作に割り振られたのは、第2章「日本に『西洋美術館』があることをどう考えるか?」だ。
 ここでは、破壊と再建を繰り返す五輪塔をかたどった自作彫刻と、オーギュスト・ロダン《考える人》《青銅時代》を寝転ばせて並べた。ロダンの彫刻を転倒させ、自明とされてきた正しい鑑賞方法を転じさせることで、自明とされる美術史の価値体系の問い直しを試みた。加えて、水平社宣言起草者で転向者とみなされる西光万吉が禅画「丹霞焼仏」を換骨奪胎して描いた掛軸を飾り、西洋美術館を転倒と転向をめぐる吟味と検討の場にした。
 残念であったのは、西洋美術の名品を名品たらしめる価値の自明性を疑うキュレーションの手つきが、本展にそう多くは見られなかったことだ。参照や触発の因果関係の止揚を狙うかのように併置されたセザンヌ内藤礼の絵画、IKEAの家具による居室に自作と名作を飾ることで名作の価値を問うた鷹野隆大、同館の礎「松方コレクション」とプロパガンダの関わりを白日の下にさらした飯山由貴、ストリッパーとしてステージに立つダンサー・宇佐美なつを招き、ロダン彫刻に囲まれた館内でのヌード動画撮影を介して、女性の身体をめぐる美術史の判断基準、美の対象=ヌードと肉欲の対象=ネイキッドの攪拌を試みた遠藤麻衣など、既存の価値体系への反逆の志向が見て取れる試みはあるものの、名作を疑いないものとして現代作家の作品と併置するだけでは、西洋美術/館の自問は完遂されえない。
イスラエルからの武器輸入やめるよう求め抗議も
 開幕前日の内覧会では、飯山ら参加作家数名と市民がパレスチナへの連帯を示し、同館のパートナー企業であり松方コレクションに深い縁のある川崎重工イスラエルから武器を輸入することをとりやめるよう抗議を行った。これに対して、西洋美術館からの正式な応答はない。館からの応答がないこととともに深刻であるのは、抗議同日、警察官が美術館内に立ち入り、抗議を行う作家たちを撮影したことである。館内に警官を立ち入らせることを許容した美術館に、強く抗議をしたい。
■アートワーカーの権利をテーマにシンポジウム
 展覧会中の5月6日には、アーティスト支部主催のシンポジウム「アートワーカーの〈未来〉をめぐって」を開催した。日本語訳が刊行されたばかりの『アートワーカーズ 制作と労働をめぐる芸術家たちの社会実践』(高橋沙也葉、長谷川新、松本理沙、武澤里映訳、フィルムアート社、2024年)の著者ジュリア・ブライアン゠ウィルソンの基調報告(聞き手はアーティスト支部の川久保ジョイ)からはじめ、同じくアーティスト支部の村上華子が諸外国のアーティストの報酬ガイドラインの事例を報告し、沖縄でアートワーカーの権利向上に取り組む「ヨルベ」のアーティストたちが沖縄からオンラインで報告を行った。
 シンポジウムのコメンテーターには、共立女子大学の吉澤弥生、滋賀県立美術館ディレクターの保坂健二郎を迎えた。アーティストの報酬について、またアートワーカーの権利の擁護のため、各地の取り組みをつなぎ、美術館側との合意形成を行うことは不可欠だ。
 そしてまた、同時代だけではなく、歴史的な視座も欠かせない。『アートワーカーズ』に詳しく書かれているが、60年代後半の米国で組織され、ニューヨークで芸術労働者の権利向上を求めた「アートワーカーズ連合」については、アーティスト支部がつくられた今だからこそ、つぶさに検証する必要がある。
(※この原稿は『芸術新潮』2024年5月号掲載の展覧会評をもとに改稿したものである)
 小田原のどか(多摩美術大学支部支部長)

 

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撮影:清水直子

 

 

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