プレカリアートユニオンブログ

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入管法の改正に際して 外国人労働者の過酷な現状 全国ユニオン定期大会記念シンポ

入管法の改正に際して 外国人労働者の過酷な現状 全国ユニオン定期大会記念シンポジウム(2019年8月31日開催)

 8月31日、全国ユニオン定期大会において外国人労働者問題についての記念シンポジウムが開催されました。外国人労働者の置かれている過酷な現状について、入管法の改正に絡め三宅弁護士よりお話をいただきました。

年間1600人が行方不明に?
 コンビニなどで働いている外国人の方のほとんどは、外国人留学生の方々です。数年前と比べ、最近では見かけることがとても多くなったように感じますね。さて、この外国人留学生ですが、例えば東京福祉大学では、この2年間でおよそ1600名も行方不明になっているというのです。どうしてこんなことになってしまうのでしょうか。

留学生を待ち受ける生活苦
 日本に来ることを希望する外国人は、事前に、例えばブローカーに時給1000円だけど技能実習生で来ますか、留学生で来ますか、などと聞かれます。「どうせなら学歴も」と、留学生の在留資格を選ぶ方が多いようです。彼らにとって日本のアルバイトの賃金水準はとても魅力的です。「留学」の在留資格での労働時間は週に28時間まで。週28時間でもまあまあ稼げると考え日本に来た彼らを待っているのは生活苦。時給1000円で計算した場合、週28時間では1ヶ月で11万円程度にしかならず、とても生活できません。その結果「行方不明」になって、こっそりと在留資格で認められた時間以上の労働をする留学生が出てくることになるのです。

多額の借金をして訪日、失踪
 彼らは日本に来る際に、送り出し機関におよそ数10万円から100万円を支払います。この金額は彼らの母国での年収を大きく上回ります。ほとんどの労働者が借金をして日本へやってくるのです。その借金を返すまでは帰るに帰ることができません。仮にブラックな職場環境であった場合、法律の制限により転職もままならず、どうにも行き詰まってしまった労働者は「失踪」し、不法就労の道を選ぶことになります。

改正入管法は誰のため?
 さて、入管法が改正されたのは記憶に新しいことだと思います。今回の改正によって、いわゆる単純労働への外国人労働者の従事に対し、公式な窓口ができました。外国人労働者の就労環境を整えることを目的とした改正とされています。一方、これは商工会等が強く働きかけ実現したとの声も多く聞きます。国内では(安い賃金で働かせることのできる)労働者の数が不足したので、海外からこれを補おうという低賃金労働者を確保したいという狙いです。

見えない鎖で繋がれた外国人労働者
 労働者はモノではありません。コストだけを考え、海外からまるで輸入品のように、安くこき使うための労働者を迎え入れようという考えが許されていいのでしょうか。外国人労働者はその在留資格による制限により、極めて弱い立場にいるといえます。先に上げた転職の制限はその最たるものです。転職できない=やめられない、理不尽な条件扱いにも耐えなければならない、とまるで彼らは見えない鎖で繋がれているかのようです。条文上今回の改正で、ある程度転職の制限に対しての権利は拡大したものの、実際にうまく機能しないのではないか、と三宅弁護士も語っていました。

中間搾取に人権侵害、問題はまだまだ山積み
 法改正が行われても、問題の本質にメスを入れる事はできず、彼らの権利を守るための仕組みが不十分なのが実情です。悪質な中間業者による違法な搾取など、利害関係者による、単なるビジネスチャンスになってしまっているといった側面もあります。また、該国人労働者の家族の帯同には非常に高いハードルが設けられており、5年、10年といった長期間を1人で過ごさねばなりません。人権保護の観点からも問題視されています。

しまむらへの要請行動
 先日ミッドウェストアカデミーのコミュニティーオーガナイズセミナーに参加してきた際、衣料品メーカー「しまむら」の下請けで働く外国人労働者の待遇改善を実現した他労組の方と話しをする機会がありました。海外から日本にやってきた労働者が、下請け工場で違法な労働環境で働いている現状をしまむらに伝え、粘り強く要請をしたそうです。その結果、遂にしまむらは下請け各社に対し「法令を守り、技能実習生への人権侵害がないように」という通知を出すに至り、相談に来た労働者の待遇改善を勝ち取ることができたとのことでした。

同じ国で働く仲間
 確かに、不法滞在や言葉の壁等々、幾多の大きな障害があります。必ずしも困っている労働者の全てに手を差し伸べることはできないかもしれません。しかし、彼らも同じ国で働くわたしたちの仲間なのです。しまむらの例のように、虐げられ権利を無視された外国人労働者の方々に対し、わたしたち労働組合にもできることがあるはずです。

一歩前に踏み出して積極的にコミュニケーションを

 8月31日のシンポジウムでは、ユニオンみえの神部紅さんが外国人労働者の方々との接し方について「自分だったら、言葉もろくに話せない状態で、たった1人外国で働くなんて絶対にできない。彼らはすごいんだと思って接している。」と語っていました。一人故郷を離れ異国で暮らす外国人労働者の方々のように、文化や言葉の壁に躊躇するよりもまずは一歩前に踏み出して積極的にコミュニケーションを図っていく姿勢をわたしたちも大切にする必要があるのではないでしょうか。

稲葉一良(書記次長)