プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

全国ユニオンの21年春闘セミナー開催。社会運動と連携し雇用も生活も賃金も守る

 11月28日、全国ユニオン2021春闘セミナーが開催されました。会場は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から入室前の検温と消毒を徹底し、室内は充分に換気され、席の間隔が開けられての開催となりました。zoom参加も含め、3人の講師を迎え行われました。
■トータルに生活を守る労働運動を
 はじめに、全国ユニオン鈴木会長が挨拶を行いました。「コロナ渦で一部の労働組合では活動が停止するようなことがあったが、コミュニティユニオンは感染予防をしながら様々な取り組みをしてきた。単なる座学ではなく、年末年始の取り組みと21春闘をどのように考えていくのか。社会運動と一緒にトータルに生活を守る労働運動を行っていきたい。21春闘に関しては、雇用も賃金・労働条件も守るというかたちで闘っていく」と方針が語られました。
協同組合と労働組合の歴史
 第1単位として、元連合副事務局長の高橋均氏が「労働組合と協同組合の過去・現在と望ましい未来」というタイトルで、協同組合と労働組合の関係について、講演しました。
■『ザリガニ』の動画で助け合いを考える
 今でこそ義務教育の教科書が無償なのは当たり前のようになっていますが、昔は違いました。学校に通えない子どもたちが100万人いたのだといいます。冒頭、魚が買えないから、子どもたちがザリガニを捕りに行く「ザリガニ」という動画の紹介がありました。子どもたちは誰が何匹取ったかではなく、家族の数に応じて分け合いました。能力や成果に依らず、お互いに助け合う姿が協同組合の源にあります。
■江戸時代に協同組合の源流が
 江戸時代にも協同組合的組織はあったのだといいます。共済の源流は「友子制度」、農協の源流は大原幽学の「先祖株組合」、信用金庫・労働金庫の源流は二宮尊徳の「報徳五常講」に遡ることが出来ます。法律より先に常に行動がありました。このように、協同組合は常に下(庶民)から作るものですが、近現代の日本のそれは、上(国)が作ったものであることが特徴です。
労働組合と協同組合はコインの表裏
 労働組合と協同組合は、コインの表と裏のようなものです。労働争議を協同組合がバックアップし、右翼や国から弾圧を受けてきた歴史があります。また、労働組合と協同組合は労金全労済を生み出しました。労働組合労金全労済の関係を見ても、客と業者の関係ではなく共に活動する主体だということができます。
■協同組合の持つ可能性
 労働者協同組合法に定める働き方は、「資本家・経営者・労働者」三位一体の働き方であり、皆が労働法の保護を受けられます。この制度は中小企業の継承問題等ばかりか、地域の抱える様々な問題も解決できる可能性もあるのだといいます。連帯は決して簡単な道ではないが、取り組むことに大きな意義があると講演は締めくくられました。
■4つのスローガンと6つのポイント
 第2単位として、全国ユニオン関口事務局長から春闘方針案について説明がありました。
 2021年の春闘は「1.新型コロナウイルスを理由とする解雇・雇い止めと闘い職場と生活を守ろう!」「2.スト権を確立して労働条件の向上を目指そう!」「3.底上げに取り組むと共に雇用形態間などの格差是正を実現しよう!」「4.労働法制や平和憲法の改悪を許さない取り組みを進めよう!」の4つをスローガンに掲げ行われます。これらに基づき、具体的に6つの活動方針が定められています。
■コロナ渦でも待遇の「改善」を
 具体的な要求事項として、4%の賃上げ(定期昇給2%、ベースアップ2%)や正規・非正規の格差是正、誰でもどこでも時給1500円の実現、派遣労働者への交通費支給、ワークルールの取り組み、長時間労働の是正、ワークライフバランスの実現等を目指していくこと、また、「新型コロナウイルスによる雇用への影響に立ち向かう!」として、①休業補償100%を求める!②解雇雇い止めと闘う!③倒産・事業再編に立ち向かう!④感染予防対策の雇用形態間格差を撲滅しよう!の4つを掲げ取り組んでいくことやその背景が説明されました。
春闘は経営者との対話の場でもある
 「苦しむ働く人がひとりでも多くユニオン運動につながり集い、連帯し、闘う事で希望を共有していけるよう21春闘を闘っていきましょう」、というメッセージが2021春闘アピールで表明されています。結びに、「春闘は経営者との対話の場、考えを確認する場でもある」と発言がありました。
■つくろい東京ファンドによる住宅支援
 第3単位として、「コロナ渦で進む貧困の現状」というタイトルで、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授の稲葉剛氏による講演が行われました。
 稲葉氏は1990年代から路上生活者支援を行ってきました。はじめは炊き出しや夜回りが中心でしたが、徐々に路上から抜け出す手助けを行う活動へと、活動は広がっていきました。貧困問題は住まいの問題なのではないかと考え「つくろい東京ファンド」を立ち上げ、住宅支援の活動を行っています。中野区のシェルター(計7部屋)は、設立から6年間で110名以上が利用しています。2020年3月時点、中野区豊島区を中心に都内25室を借り上げ、住宅支援を行っています。
■住まいは人権
 「住まいは基本的人権」というハウジングファーストの考え方があります。コロナ渦において、路上生活者は苦境に立たされています。池袋の炊き出しに集まる人が増え、若い人の姿も見られるそうです。日本でホームレスとは「屋根がない状態」を指しますが、それに準ずる、例えばネットカフェを住居にする「屋根はあるが、家はない状態」にある方への支援が重要になっているのだそうです。ネットカフェもコロナの休業要請により閉まってしまい、居場所を失ってしまうからです。
■会社としっかりと対峙し、貧困を未然に食い止める
 新型コロナウイルスの影響で、生活保護申請は前年比39パーセント増となりました。それに伴い、行政の水際作戦も激化し、さらに、感染リスクの高い相部屋施設への誘導も行われていたといいます。コロナ渦で、住居を軽視してきた社会福祉の課題が浮き彫りになったと稲葉氏は訴えます。生活保護を権利として、住まいを基本的な人権として、保障していく社会の必要性を強く感じると共に、貧困に陥らないよう、しっかりと会社と交渉する労働組合の果たすべき役割の大きさも再認識しました。
■地域に根ざした労働運動を!
 第4単位として「労働組合の今日的役割とは何か」、というタイトルで、岐阜一般労働組合本間会長による講演が行われました。
 企業内組合(ユニオン)は全員が交渉する企業に雇用されており、利害関係、力関係の縛りから完全に自由になれません。合同労組は、企業と利害関係を持たない者をして団体交渉に当たることができることが強みだと本間会長は語ります。その上で、地域との結びつきがとても重要になってきます。労働組合が地域に対して影響力を持てないでいることは今後の課題だと感じました。
労働組合の可能性
 団体交渉権は、企業が決済できる全ての事柄について及びます。さらに、交渉が決裂したときは強い争議権を持ちます。日本の労働組合は、欧米に対し遙かに手厚い法的保護を受けています。また、労働組合の組織は上意下達の企業組織と違い、平等・民主的な横組織です。多様性があり、それ故に揉め事が起こりやすい面も持ちますが、企業組織より明らかに組織体としての優位性を持っています。
■1割が結集し多数派になり、地域と連帯していく
 「闘うことができる人は、せいぜい全体の1割です。私たちは、この1割を結集し、多数派を作っていく。団結の反対は自己中。オルグ自身が、自分が自己中になっていないかしっかりと見つめ直す必要がある。あらゆる差別感の克服を。地域においてもコアな部分から結束を固め、大同団結をする必要がある」などと本間会長は語り、講演を締めくくりました。
 それぞれの講師に対し活発に質問が飛び交うなど、熱気にあふれた春闘セミナーは、全員での団結がんばろうによって締めくくられました。よく、「来年のことを言うと鬼が笑う」などといいますが、春闘はこの期間の準備こそが大切です。コロナ渦だからこそ労働条件の維持向上は一層大事。共に春闘を闘い抜きましょう。
 稲葉一良(書記長)

 

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