プレカリアートユニオンブログ

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キング牧師が黒人革命で実践した「非暴力直接行動」。 『黒人はなぜ待てないか』新装版(マーチン・ルーサー・キング 著・中島 和子 訳・古川 博巳 訳 / みすず書房)

 キング牧師の名前は、誰しも一度は耳にしたことがあるかと思います。マーチン・ルーサー・キング『黒人はなぜ待てないか』は、1963年に行われたバーミングハム運動について論じた1冊です。出版されたのは1965年、この前年にキング牧師ノーベル平和賞を受賞しています。その後の直接行動の手本になった黒人革命とも言えるこの運動が、どのような戦略・思想に基づいて行われ、どのように結実したのかを詳細に記した1冊です。

■差別撤廃の原動力となった直接行動
 アラバマ州バーミングハムでは、黒人人への差別が特に深刻で、その実権は黒人の人権に対して酷い侮蔑を表明してきたレイシスト(差別主義者)のユージーン・ブル・コナーが実権を握っていました。キング牧師は運動を組織化し、すべての人種に雇用機会を与えること、公共施設や店舗、飲食店などでの差別の撤廃を、非暴力の直接行動で勝ち取りました。この運動は翌年の公民権法の成立への大きな原動力となりました。

■無根拠に話し合いを求めるだけでは問題は解決しない
 キング牧師は直接行動が対等な交渉を実現するための手段であることを説いています。座り込みやデモよりも話し合いを、という言説は一見もっともです。しかし、直接行動とは、話し合いを絶えず拒んできたものに、暴力を用いず争点と対決せざるを得ないような争点と緊張感をつくり出すことで、もはや無視できなくさせ、しっかりと話し合いに向かわせるための手段として必要なものなのです。キング牧師はこの緊張感を「建設的な非暴力的緊張感」と表現し、声を上げ、直接行動をし、相手を問題と向き合わせなければ、解決し得ないということを本書で強く訴えています。

 私たちの直接行動も、キング牧師の非暴力直接行動の意思を受け継ぐものです。集団で声を上げることで、社会がどのように変わっていったかを記す、今なお色あせない1冊でした。

稲葉一良(書記長)


『黒人はなぜ待てないか』新装版
マーチン・ルーサー・キング 著・中島 和子 訳・古川 博巳 訳 / みすず書房

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