表現の現場でのハラスメント調査 回答者の8割以上が被害を経験
これまでもさまざまな労働現場でハラスメントは繰り返し問題になってきました。特に性被害など、長く語られてこなかったことも近年は少しずつ、声があがることが多くなってきました。先日、美術、演劇、映像など表現に関わる活動・仕事をしている人たちを対象としたハラスメントの実態調査が行われ、3月24日の記者会見で調査結果をまとめた「『表現の現場』ハラスメント白書2021」が公表されました。
■深刻なハラスメント被害
調査は2020年12月から2021年1月までの1か月間、1449人がウェブフォームから回答したものを対象にしています。これは、表現活動を仕事としている人たちの母集団を代表とするものでないものの、今回の回答者のうち、何らかのハラスメントを受けた経験があると答えた人は8割以上で、暴行・人格否定・性行為を強要されたなど深刻な被害の実態が浮き彫りとなりました。
■ジェンダーバランスの不均衡による構造の問題
ハラスメントが横行している原因として、表現の場におけるジェンダーバランスの不均衡があげられました。たとえば、師弟関係や上下関係にある人との間で起きたハラスメントの多くが、男性からの被害で、指導者や権限を持つ人は今でも圧倒的に男性が多く、女性など立場の弱い人がハラスメントを受けるという構造の問題があるといいます。
アーティストでプレカリアートユニオンの組合員であり、この調査を行った「表現の現場調査団」の発起人でもある笠原恵実子さんは会見で、今後5年間この調査を継続しながら問題を可視化していくこととし、調査の目標の一つとして、「全ての人々が多様な価値観を実現できる場にし、表現の現場のジェンダーバランスを変えていく。そのための啓蒙活動をしていきたい」と話しました。
■フリーランスに労働法の保護を
また、表現の現場ではフリーランスが多く働いていることが大きな特徴です。回答者のうちの56%がフリーランスでした。それについて日本労働弁護団に所属する笠置裕亮弁護士は、「フリーランスは、労働法の保護がまったく受けられない状況にあり、契約解除を規制する法律もない」と制度の問題を話し、次の仕事がもらえなくなるという危機感から、ハラスメントを受けても声を上げらない状況が生まれると指摘しました。調査団は、これまで守られる法律がなかったために、ハラスメントが改善されてこなかったとして、今後はフリーランスの法改正を求めていくことも発表しました。
調査報告につきましては、「表現の現場調査団」公式サイト上の「『表現の現場』ハラスメント白書2021」に公開されています。被害者の声を集めた大変重要な報告です。サイトからご覧ください。
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