プレカリアートユニオンブログ

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性暴力問題の解決に男性の参加は必須。家父長制・性暴力と闘う医師による1冊。 『勇気ある女性たち 性暴力サバイバーの回復する力』(デニ・ムクウェゲ著/大月書店)

性暴力問題の解決に男性の参加は必須。家父長制・性暴力と闘う医師による1冊


勇気ある女性たち 性暴力サバイバーの回復する力』(デニ・ムクウェゲ著/大月書店)

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 コンゴは「世界のレイプの中心地」と呼ばれることもある地域。『勇気ある女性たち~性暴力サバイバーの回復する力~』はそんなコンゴで長年草の根の活動を続けてきたデニ・ムクウェゲ氏による1冊。同氏は婦人科外科医であり人権活動家、レイプ被害治療の第一人者として知られ2019年にはノーベル平和賞を受賞している。
 本書は、支配の手段として軍事作戦に組み込まれた凄惨なレイプ被害とその治療に奔走した筆者の半生を振り返り、性暴力をなくすために声を上げ立ち上がる被害者達の力強さを伝える。本書を読むことで戦争と性暴力、家父長制と性暴力の関係性、一体となった構図が鮮明になる。
■被害者が責められる構造
 世界の少なくない国や地域で加害者ではなく、レイプ被害を受けた被害者が責任を問われ、罰せられている。夫からの離縁、コミュニティからの追放、最も酷い場合姦通をしたと殺されてしまうことすらある。なんとも野蛮で不合理と感じるかも知れないが、日本でも根本的な構造は全く変わらない。
 性被害者に対し「そんな格好をとしているからいけない」、「もっと気を付けるべきだ」などの言葉が発せられることが残念ながら常であり、まるで被害に遭った方が悪いと言わんばかりに「もっと警戒しろ」、「そんなとこ付いてっちゃダメだ」など責任を追求される。また、セックスに関する教育についても女性ばかりに「(襲われないように)気を付けろ」となされ、男性に「襲うな。相手を尊敬し尊重しろ」と教育されることは驚く程少ない。
■軍事戦略に組み込まれた戦争の武器としてのレイプ
 また、レイプは被害者の心と身体のみならず地域社会やコミュニティを破壊する暴力でもある。古今東西なぜ戦争・侵略とレイプが切っても切れないものであるか、その構造が本書では明らかにされる。軍事戦略として綿密にレイプは組み込まれている。本書ではコンゴの問題だけではなく、日本が行った従軍慰安婦の問題にも触れている。
 「性暴力は男性の命が女性の命よりも優れていると考えるジェンダーの階層構造の結果だ。」本書10章からの引用だ。かつて職場で元請けの正社員男性が下請けの女性非正規労働者に何のためらいもなくセクシュアルハラスメントを行う現場を目の当たりにし、強く抗議した過去を思い起こさせた。軽んじられ、見下されていい人間など誰もいない。性暴力やその根源は、どこか遠くの知らない場所にあるのではなく私たちのすぐ近くにある。職場の非正規差別の問題、少なすぎる女性議員や女性リーダー。このような社会の中性加害者への追及の手は不当に緩められてしまう。私たちは家父長制としっかりと対峙し暴力と差別を乗り越えていかなければならない。

 稲葉一良(書記長)

 

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