プレカリアートユニオンブログ

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スワロートラック求人詐欺裁判第1回期日で原告の佐々木さんが意見陳述

 9月18日にスワロートラック求人詐欺裁判第1回期日で、原告の佐々木さんが意見陳述を行い、運送業界で働く人の深刻な状況をなんとかしたい、実際と異なる求人票問題を是正したいと述べました。裁判官は、関心をもってくれたようで、原告に質問がありました。


2015年9月18日
東京地方裁判所 第 民事部 係御中

意見陳述

原告 佐々木 和義

1 私は、被告スワロートラック株式会社に平成26年10月28日に入社しました。以来、4トン車を運転し、1日3便、ドラッグストアへの日用品の配送を担当するドライバーとして働いています。現在43歳です。この度、運送業界と運送業界で働く人たちの深刻な状況を何とかしたいという思いで、提訴しました。

2 私は、中学を卒業後、職業技術校で訓練を受けてから、ガス工事の設備工として、8年間働きました。わずかなミスも事故につながりかねない、失敗の許されない職場で真面目に勤務してきました。会社の経営不振により、26歳のときに、運送会社に転職し、あこがれのトラック運転手になりました。

3 以来、17年間、運送会社やバス会社で勤務し、ドライバーという仕事に、責任と誇りを持って働いてきました。しかし、28歳から36歳まで働いた運送会社では、朝5時から、夜11半までの長時間労働をしていましたが、残業代は支払われず、社会保険にも加入できませんでした。長時間労働のため、ついに胃腸炎で倒れ、退職に追い込まれました。当時の私には、労働法の知識もなく、泣き寝入りをするしかありませんでした。

4 私は、平成26年8月に前の会社を退職し、少しでもまともな条件の運送会社に転職しようと、必死で就職活動をしていました。しかし、2ヶ月経って、貯金も底をつきそうでした。ハローワークで被告の求人情報を目にしたのは、そんなときでした。求人票には、週休2日、残業は月30時間、給料は月額28万円から35万円、と書かれていました。労働条件もよく、羽村の営業所は家からも近く通いやすいため、他の求人を断って、被告の求人に応募し面接に臨みました。履歴書だけでなく、応募の意欲を示すために、求められてはいなかった職務経歴書も提出しました。求人票の労働条件は本当に魅力があり、なんとしてもこの会社で働きたいと思いました。

5 面接の数日後、被告から、採用の連絡があり、入社手続きのために羽村営業所へ行くと、事務担当の社員から、「短期雇用契約書」に書いてある内容を簡単に読み上げられただけで、有無を言わせない状態で、求人票と全く違う契約書にサインをさせられました。雇用契約書には、基本給は「地域の最低賃金時給額×所定労働時間8時間」と書いてありましたが、同時に月給23万円とも書いてあり、「23万円は下回らない、これは目安、もっと稼げる」などと言われ、信じてしまいました。「残業1」は、大体4万円位と言われ、根拠は説明されてませんでした。もう被告で働くつもりで、他の求人を断っていて、就職活動を続ける経済的余裕もありませんでした。

6 私は、被告に入社以来、1日12時間から16時間の長時間労働に従事しており、月の残業時間は120時間を上回りますが、手取りの月給が30万円を上回ったことはありません。1週間あたりの「まとまった非労働時間」は、日曜の朝に帰り、月曜の夕方出発するまでの間だけです。体を休める暇もありません。被告は、時間外労働の賃金を支払わないようにするため、基準も分からない月4万円の残業代1という手当と、距離や出発時間や時間帯とは関係のない、配送先ごとに定められた手当を元にした残業代2という手当が残業代であるかのように主張して、残業代の支払いを拒んでいます。これはごまかしです。

7 もし、求人票に基本給は最低賃金と書かれていたら、私は被告に入社しませんでした。同僚も同じだと思います。労働時間に対応して、正しく残業代が支払われないために、同僚ドライバーや私は、過労死ラインを超える長時間労働をせざるを得ません。そうしないと生活ができないからです。しかし、みな、被告に対して異を唱えれば、仕返しとして、残業を極端に減らされ、生活できないような給料にされてしまうのを恐れています。生かさず殺さずの状態で働くなかで、考えることもままならず、なかなか声を上げることができません。

8 裁判での請求自体は、過去の残業代ですが、私は、できるだけ速やかに、被告が、適正な時間管理と計算に基づいて、適正な残業代を支払うシステムに変えることを強く求めています。今回、私は残業代を請求して提訴をしましたが、決して私だけの問題ではありません。実際と異なる好条件の求人で人を集めて、劣悪な条件で働かせるという詐欺のようなことが横行している実態に、一石を投じたいと思っています。また、同じ業界で働く運転手の多くが長時間労働と残業代の不払い問題に直面しています。このままでは、日本で物を運ぶ輸送の現場が破綻してしまいます。求人の条件を信じて応募した若いドライバーが、騙されたという怒りを持って、運送業界を去っていくのを、黙って見てはいられません。この裁判で、実際と異なる求人票の是正と、運送業界の再建に貢献出来ることを願っています。
以上