プレカリアートユニオンブログ

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目の前にいるその人の「生きる権利」を具体化するための書。『法律家・支援者のための生活保護活用マニュアル 2019年度版』(編著・発行:生活保護問題対策全国会議)

『法律家・支援者のための生活保護活用マニュアル 2019年度版』
(編著・発行:生活保護問題対策全国会議)
http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-329.html

 過酷な労働環境によって追い詰められた結果、生活保護の利用を申請する労働者が増えています。生活保護は生活困窮者に「最低限度の生活」を保証するものですが、不正受給や行政の水際作戦など、ニュースではネガティブな面ばかりが取り沙汰されています。本書は、法律家や支援者に向けて制度利用の際に想定される問題と実務的な対策を、Q&A方式でわかりやすくまとめています。

生きる権利を鮮やかにする生活保護
 誰しも「生きる権利」があります。しかし、「生きる権利」は「最低限度の生活」を確保しなければ守ることができません。生活保護制度は誰もが「最低限度の生活」を保証されるための制度です。本書の「はじめに」では、「生きる権利」を鮮やかにするためにまずは生活保護について知ってほしいという切実な願いが記されています。

様々な誤解と窓口対応の悪さ
 生活保護にまつわる様々な誤解が制度の利用を阻んでいます。利用を希望する方のみならず、窓口の職員の知識不足や勘違いにより、本来受給できるケースでも、追い返されてしまったり、申請自体を受け付けてもらえなかったりという問題が多発しています。そんな時、法律家や支援者による助けが大きな意味を持ちます。本書には申請支援のためのポイントが多岐にわたり網羅されています。

負担なく専門家の支援を受けられる「法律扶助」
 窓口での誤った対応などで生活保護を受ける機会を失うことがないように、法律扶助という制度があるそうです。弁護士に相談する費用を一定の条件の下、制度が負担してくれるのです。とても有意義な制度ですが、こういった制度の存在からも、いかに不適切に生活保護が打ち切られたり、申請が握りつぶされたりしているのかが伺い知れます。

労働問題は生活の問題
 労働問題は生活の問題でもあり、常に貧困問題と隣り合わせにあります。申請だけでなく、生活保護利用中に起こりうる様々な問題等、幅広く踏み込んだ情報が盛り込まれた本書は、組合活動にとっても、とても有意義なものと感じました。

稲葉一良(書記次長)