いわゆる「パワハラ防止法」が、今年6月から大企業や自治体などで施行され、パワハラの防止対策を講ずることが義務づけられました。このパワハラのなかに、「SOGIハラ」や「アウティング」といった主にセクシャルマイノリティに対する偏見から生じるハラスメントも含まれることになりました。皆さんは、それぞれどんな意味かわかりますか。「LGBTとハラスメント」は神谷悠一、松岡宗嗣による共著です。LGBTに関する基礎知識から主に職場等において起こりうる様々な問題について、丁寧に解説しています。
人の「性のあり方」を否定してはいけない
「SOGIハラ」とは、「Sexual Orientation(性的指向)」と、「Gender Identity(性自認)」それぞれの頭文字を取った言葉です。性的指向や性自認についての侮蔑的な言動などがこれに当たります。「性的指向」とは、自分の恋愛や性愛の感情がどちらの性に向くのか、向かないのかという要素、「性自認」とは、自分の性別をどう認識しているかという要素だと筆者は解説しています。これらについて、他人が土足で踏み込むかのように、からかったり、批判したり、侮辱することは、当然にハラスメントになり得る行為です。
当該者の命すら奪う「アウティング」
「アウティング」とは本人の性のあり方を、第三者に勝手に暴露することを指します。「あの人、ソッチの人なんだって」など、言いふらす側からすればふざけ半分のつもりかも知れませんが、アウティングは、被害者の命を奪いかねない深刻なハラスメントになります。実際にアウティングによって自ら命を絶ってしまった事例も踏まえ、何故いけないのかついて詳細に解説しています。
これ以外にも、本書を読めば職場等における基本的なLGBTの知識が一通り身につきます。差別しないという「心」も当然大切ですが、それだけでは不十分です。無意識に差別をしてしまわないためにも、しっかりとした「知識」を得ることが大切なのです。
稲葉一良(書記次長)