プレカリアートユニオンブログ

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明治、大正、昭和3つの時代を「郷士の娘」として生きたキヲの誇りと肌。『女と刀』(中村きい子/ちくま文庫)

明治、大正、昭和3つの時代を「郷士の娘」として生きたキヲの誇りと肌

『女と刀』(中村きい子ちくま文庫

www.chikumashobo.co.jp


 小説「女と刀」は、中村きい子による「思想の科学」への連載を1966年に出版したものです。作者の母をモデルとした主人公「キヲ」の生き様は多くの反響を生むに至り、出版の翌年にはドラマ化もされました。70歳にして夫と自ら離縁する道を選び「独立(ひとりだち)」した主人公の真の対話にこだわった生を描いた作品です。
■50年の結婚生活において相手を憎しみ抜き自ら夫を捨てたキヲの半生
 本書は10年前に離縁した夫の法要を使者が知らせるところから始まります。冒頭に記したとおり、キヲは自らの意思で夫を見限っており、夫はその年のうちに亡くなります。50年間にも及ぶ結婚生活で夫を憎しみに憎しみ抜いた胸の内を吐露し、物語は少女時代からのキヲの半生を紡ぎ出します。西南戦争の敗北を深い傷として持つ父に「郷士の娘」として、心に鋼を打ち込まれるごとく厳しく育てられるも、結婚の相手を一方的に決められてしまったことがキヲに取ってはじめの躓きになります。キヲの落胆を励ますのは叔母の初、郷士の血固めの習わしに従わず、自らが選んだ男「金殿」をのみ生涯の男性とし生き抜きます。キヲはやがて2度目の結婚をし(これも意に沿わない形で)子をなし、母やその母が感じてきた女の孤独と向き合うことになります。
■行動には感嘆、しかしその胸の内には共感を覚える名作
 解説にもありましたが、キヲはいわゆるスーパーウーマンです。何事にも、媚びず、丸く収めず、角を立てる生き方で、家父長制の呪縛に抗い「郷士の娘」としての自分の生を生き抜く様は圧巻です。それらが単なる事実としてではなく、何故自分はそのように考えてそのように行動したのかという自分語りによって丹念に説明されていく過程を記していることこそが、多くの読み手の共感を生みこの作品を名作たらしめている要素だといえます。キヲは様々なことに真の対話を強く求めますが、様々な常識やしきたりで思考停止状態になっている私たちへの「お説教」であると思います。
 自分語りの体裁で語られる個人的でも思想的でもあり、日本の近代化の道をそのまま追体験できるような本作には、ただただ圧倒されるばかりでした。
 稲葉一良(書記長)

 

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