2026年1月23日(金)、全国ユニオンは厚生労働省の担当部局に対し、介護報酬の低さを切り口に、介護労働者の賃金・労働条件の抜本改善を求める申し入れを行いました。冒頭、全国ユニオン会長の山岡氏は、介護現場が「深刻な人材不足」「過酷な労働環境(低賃金・体力負担・社会的評価の低さ)」「厳しい経営環境」に直面していると述べ、賃金明細などの資料も示しながら、実態に即した政策対応を強く求めました。
■加算ではなく基本報酬の底上げを
山岡氏は、介護事業者(老人福祉・介護事業)の倒産が2025年に176件に達し、2年連続で過去最多を更新したこと、特に訪問介護で経営悪化が顕著であることを指摘しました。背景には、人手不足・物価高に加え、2024年度介護報酬改定での「訪問介護の基本報酬引き下げ」があり、小規模・零細事業者の淘汰が急速に進んでいるといいます。ヘルパーを確保できず、利用依頼を断らざるを得ないことで売上不振が慢性化し、地域の介護基盤そのものが揺らいでいる現状が共有されました。
続いて全国ユニオン側から、加盟組織の介護施設の賃上げ状況が示され、0.45%といった極めて低い伸びにとどまる例もあること、全体として賃金格差が拡大しかねない危機感が語られました。さらに複数年の給与明細を並べると、基本給が「毎年千円程度」しか上がっていない実態が見えるとして、処遇改善加算頼みではなく、基本給が上がる仕組み=基本報酬の底上げが不可欠だと強調しました。
現場報告では、訪問介護の労働者から「訪問介護は住み慣れた地域・自宅で暮らすために不可欠」なのに、物価高騰、ヘルパー高齢化、人材不足、移動を伴う非効率などで事業所経営はすでに極めて厳しいこと、そこに報酬引き下げが重なれば、賃金低下・離職加速、事業所の廃止・縮小、利用者が必要な支援を受けられない事態を招くと訴えました。また処遇改善加算についても、算定要件の複雑さや事務負担、事業所裁量による還元不足、一時金止まりで恒常的賃上げにつながらない問題があるとして、「加算ではなく基本報酬の底上げ」を求めました。
■生活できない賃金で、命を支えている
施設介護の当事者からも切実な声が続きました。埼玉の特養で働く組合員は、介護職を始めた当初は社会保険もなく夜勤を重ね、サービス残業が月20?30時間あっても手取り14万円程度だったこと、身体を壊して一度離職したのち戻っても、長年働き続けても基本給が20万円に届かず生活が苦しいこと、職場のパワハラ等で転職を重ねざるを得ない現実を語り、「少しでも生活しやすくなってほしい」と訴えました。
さらに、ケアマネジャー(介護支援専門員)の過酷な実態も共有されました。発言では、資格保有者は約73.9万人いる一方、実際に働いているのは18万人程度(約15%)にとどまるとの説明があり、その背景として「報酬の低さ」と「シャドーワークの多さ」が挙げられました。救急搬送時の付き添い等、制度上想定されながら現実には深夜対応になりがちで、移動手段も含めて負担が重いことが語られました。
加えて、法定研修の負担が離職・担い手不足を加速させているとの問題提起がありました。実務者研修や専門研修、主任研修、更新研修など長時間の研修が課され、しかも受講料が自己負担で、千葉県では更新研修が7万円、主任研修が6万円といった具体例も示されました。内容が「資料を読むだけ」に見えるなど実効性への疑問も出され、現場の負担軽減と制度の見直しが求められました。
■「介護保険あって介護なし」
国会議員(社民党・福島氏)からは、ケアマネの更新研修が「受けなければ更新できない」仕組みとして重い負担になっている点を改めて問題視し、他資格では同種の制度が廃止されてきた経過にも触れつつ、廃止を含めた抜本的見直しを厚労省に求めました。また、訪問介護報酬の引き下げが倒産増加や「介護保険あって介護なし」の地域を生むとし、改定年度を待たず早急に訪問介護の基本報酬を引き上げること、処遇改善加算ではなく基本報酬の底上げを行うこと、利用者負担増は行わないこと等を要請しました。
事業者・市民側からの発言では、訪問ヘルパーの現場が苛酷化している実態が語られました。猛暑の中、車内は「焼けつくよう」な環境になり、熱中症で利用者宅で倒れて救急対応となるケースもあること、アンケートでは「この夏に辞めたい」と感じる人が3割近いという趣旨の報告もありました。さらに、利用者宅でエアコンが使えない状況でも入浴介助を行うなど、介助の危険と負担が極限まで高まっていることが示されました。
また、介助の人員不足が重大事故につながりかねない具体例も共有されました。利用者対応を「見捨てる」ことができず無理を重ねた結果、車椅子利用者の転倒等の局面で介助者が指を骨折したという報告があり、「高齢者が頑張ればよい、という話ではない。若い人が就きたくなる賃金が必要だ」と強調されました。財源論に関しても、国庫負担の引き上げなどを求める発言が続きました。
■介護労働者の低賃金は制度の問題
終盤では、介護保険制度が本来「社会を支える基盤」であるにもかかわらず、報酬全体を十分に引き上げず、処遇改善加算に依存してきた政策運用への批判が提起されました。現役世代・高齢者・自治体・国の利害調整は難しいが、それをやり切る責任が行政にはあるはずだ、という趣旨で、財源を「どう節約するか」に偏った運用を転換し、介護報酬(とりわけ基本報酬)を土台から立て直す必要性が改めて訴えられました。
全国ユニオンは今回、賃金明細や聴取票等の具体資料と、訪問介護・施設介護・ケアマネ・事業者それぞれの現場の声を束ねて厚生労働省に突き付け、「介護報酬が低い」という構造問題が、そのまま介護労働者の低賃金と人手不足、事業所の淘汰、そして利用者の生活の危機へ直結していることを明らかにしました。加算の“つぎはぎ”ではなく、基本報酬の底上げと、担い手が誇りと安心を持って働き続けられる恒常的な賃金改善へ。本日の申し入れは、その一点で現場の共通認識を確認し、制度の再設計を求める重要な機会となりました。
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