プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

プレカリアートユニオンが取材に協力した記事が『朝日新聞』デジタル版「「報復こわかったが…」 希望退職、冷静な判断するには」に掲載されました

「報復こわかったが…」 希望退職、冷静な判断するには
高橋末菜、内藤尚志
朝日新聞』デジタル版 2021年1月16日 17時41分

www.asahi.com

労働相談は、誰でも1人から加入できる労働組合
プレカリアートユニオン
〒160-0004東京都新宿区四谷4-28-14パレ・ウルー5F
TEL03-6273-0699 FAX03-4335-0971
メール info@precariat-union.or.jp
ウェブサイト https://www.precariat-union.or.jp/
ブログ https://precariatunion.hateblo.jp/
ツイッター https://twitter.com/precariatunion

イオンディライトセキュリティ(株)と警備員4人の未払い賃金請求訴訟で勝利和解!

イオングループの警備会社、イオンディライトセキュリティ(株)に対して、休憩・仮眠時間の実態は労働時間であるとして、群馬高崎警備隊で警備員として働く組合員4人が原告となって未払い残業代など約1400万円を請求していた裁判で、2021年1月15日、前橋地方裁判所高崎支部で、勝利和解をすることができました。

イオンディライトセキュリティ株式会社(ADS)は、イオングループで、イオン店舗などの警備業務を担う警備会社です。同社では他に千葉地方裁判所で、仮眠時間とされた時間の賃金支払いを命じる判断も出されています。

プレカリアートユニオンのイオンディライトセキュリティ支部に所属する組合員4人は、2018年6月、前橋地方裁判所高崎支部集団訴訟を提起していました。代理人は、群馬労働弁護団の藤倉眞弁護士(藤倉眞法律事務所)、鈴木智之弁護士(鈴木智之法律事務所)。

ご支援くださった皆さん、有り難うございます。この成果をイオンディライトセキュリティの労働条件改善に留まらず、警備業界全体の就労環境の向上につなげていきます。

 

労働相談は、誰でも1人から加入できる労働組合
プレカリアートユニオン
〒160-0004東京都新宿区四谷4-28-14パレ・ウルー5F
TEL03-6273-0699 FAX03-4335-0971
メール info@precariat-union.or.jp
ウェブサイト https://www.precariat-union.or.jp/
ブログ https://precariatunion.hateblo.jp/
ツイッター https://twitter.com/precariatunion

f:id:kumonoami:20210115175435j:plain

2021年1月15日、前橋地方裁判所高崎支部前で。原告と弁護団の藤倉眞弁護士(藤倉眞法律事務所)、 鈴木智之弁護士(鈴木智之法律事務所)。

 

『#NoHateTV Vol.103「レイシストのカネを引き剥がせ」』で大手警備会社テイケイによるプレカリアートユニオンへの怪文書送付、差別・中傷垂れ幕掲示が取り上げられました

民族差別などに抗議行動をしているCRACのYoutubeチャンネル、CRACtube『#NoHateTV Vol.103「レイシストのカネを引き剥がせ」』で、大手警備会社テイケイ社前での街宣を取材していただきました。テイケイによるプレカリアートユニオンへ送付された怪文書のほか、会社の出入り口に差別・中傷垂れ幕が掲示される様子をご覧いただけます。

youtu.be

大手警備会社テイケイでは、勤務実績報告書の持参を命じられている時間の賃金不払い、パワハラ、退職強要、マスク着用禁止が問題となっているほか、これらの解決を求めるプレカリアートユニオンに対して、「雲助」などと記載した、怪文書レベルの書面を会社の封筒で、社長の名前で、会社の印鑑を押印して、毎週送付をするなどの問題も起きています。
社前行動の際には、テイケイは、不当な刑事弾圧を受けた関西生コン支部に対する誹謗中傷も含めた、差別や幼稚な罵倒の垂れ幕を会社の出入り口に下げています。

労働組合に対する侮辱、名誉毀損の文書送付は、労働組合法第7条3号違反の不当労働行為(支配介入)です。
テイケイの不当労働行為問題についても、動画の拡散にご協力いただき、ぜひ会社にご意見を伝えてくださるよう、お願いいたします。

【抗議・ご意見は】
テイケイ株式会社(旧名 帝国警備保障株式会社)
代表取締役 影山嘉昭
東京都新宿区歌舞伎町1-1-16テイケイトレード新宿ビル(靖国通り
TEL03-3207-8511(代表) FAX03-3232-7404

●『ZAITEN』(2021年2月号/財界展望新社)に、テイケイがプレカリアートユニオンに誹謗中傷文書を送付している件の記事が掲載されました。
https://precariatunion.hateblo.jp/entry/2020/12/26/175317

●警備会社大手のテイケイ株式会社が、従業員に対しマスクの着用を禁止しています。
https://precariatunion.hateblo.jp/entry/2020/04/13/153149

●テイケイを相手取りパワハラ・退職強要事件の労働審判開始。勤務実績報告書持参の未払賃金請求訴訟提訴へ。「泣き寝入りせず闘う人間もいる」
労働審判は本訴へ移行しています。
https://precariatunion.hateblo.jp/entry/2019/11/13/214023

f:id:kumonoami:20210116124905p:plain

f:id:kumonoami:20210116124933p:plain

f:id:kumonoami:20210116124957p:plain


 

労働相談は、誰でも1人から加入できる労働組合
プレカリアートユニオン
〒160-0004東京都新宿区四谷4-28-14パレ・ウルー5F
TEL03-6273-0699 FAX03-4335-0971
メール info@precariat-union.or.jp
ウェブサイト https://www.precariat-union.or.jp/
ブログ https://precariatunion.hateblo.jp/
ツイッター https://twitter.com/precariatunion

『月刊まなぶ』(2021年2月号)に外資系のホテル事業会社支部の取り組みについてのインタビュー記事が掲載されました

『月刊まなぶ』(2021年2月号)に、外資系のホテル事業会社支部の取り組みについての執行委員長清水のインタビュー記事が掲載されました。

f:id:kumonoami:20210116114614j:plain

f:id:kumonoami:20210116114444j:plain

労働相談は 誰でも1人から加入できる労働組合
プレカリアートユニオン
〒160-0004東京都新宿区四谷4-28-14パレ・ウルー5F
ユニオン運動センター内
TEL03-6273-0699 FAX03-4335-0971
ウェブサイト https://www.precariat-union.or.jp/
ブログ https://precariatunion.hateblo.jp/
メール info@precariat-union.or.jp

DHCで働く皆さん、ヘイトハラスメントに悩んでいませんか? 労働組合に加入して、安心して働ける職場を作りましょう

DHCの吉田嘉明会長は、会社のホームページ上の「ヤケクソくじの由来」という文書において、何ら根拠を示すことなく、サントリーを批判する文脈のなかで「サントリーのCMに起用されているタレントはどういうわけかほぼ全員がコリアン系の日本人です(原文ママ)」「DHCは起用タレントを含めて全てが純粋な日本人(原文ママ)」と記載しました。これは、特定の民族や国籍への差別発言であり、社会的に許されるものではありません。

SNSを中心に、この吉田会長発言への批判が相次ぎ、DHCへの不買運動も巻き起こりました。

「ヤケクソくじの由来」には、差別発言以外にも、「消費者の一部は、ハッキリ言ってバカ」とも記載されています。その発言を裏付けるかのように、「文春オンライン」(2020年12月28日付)では、「DHC会長が全社員に口コミサイトへ“サクラ投稿”奨励「ゴールド社員の称号を与える」《消費者庁は「非常にグレー」》」と報じられています。

文春オンラインでは、また、「DHCのヤバすぎる勤務実態「産休取得で降格、査定基準に“愛社精神指数”、ボーナスのお礼を会長にファクス」」とも報じられています。

DHCで働く皆さん、社内の差別発言、ハラスメント、「“サクラ投稿”奨励」……などに悩んでいませんか? 労働組合に加入して、ハラスメントから身を守り、安心して働ける職場環境を実現しましょう。

 

労働相談は、誰でも1人から加入できる労働組合
プレカリアートユニオン
〒160-0004東京都新宿区四谷4-28-14パレ・ウルー5F
TEL03-6273-0699 FAX03-4335-0971
メール info@precariat-union.or.jp
ウェブサイト https://www.precariat-union.or.jp/
ブログ https://precariatunion.hateblo.jp/
ツイッター https://twitter.com/precariatunion

www.precariat-union.or.jp

加入にあたっては、プレカリアートユニオンブログの以下のページの労働組合に関する説明もぜひご一読ください。
https://precariatunion.hateblo.jp/entry/2020/04/30/152234
https://precariatunion.hateblo.jp/entry/2020/05/29/083216

 

bunshun.jp

bunshun.jp

bunshun.jp

f:id:kumonoami:20210108134834j:plain

f:id:kumonoami:20210108134858j:plain




 

メールマガジン『プレカリアートユニオン(PU)通信 第109号 <2021.01.06発行>』を発行しました

メールマガジンプレカリアートユニオン通信』を発行しました。配信の登録無料。以下のページからお申し込みいただけます。
誰でも一人でも加入できる労働組合プレカリアートユニオンのニュースです。働く上でのトラブルを解決したい、非正規雇用も若い正社員も、職場で仲間を増やして労働条件をよくしたい!というあなたを応援します。
登録(無料)はこちらから→

www.mag2.com

━━━━━━━━━━━━━━━━━━https://precariatunion.hateblo.jp/

 Precariat Union 駆け込み寺から砦へ
 非正規雇用でも若い世代の正社員でも組合を作って労働条件をよくしたい!
 プレカリアートユニオン(PU)通信 第109号 <2021.01.06発行>

━━━━━━━━━━━━━━━━━━https://www.precariat-union.or.jp/

─□ 目次 □───────────────────────────

 1.【和解により削除】
                           【キャンペーン】

 2.大手日雇い派遣G社廃業の日まで勤務した組合員が振り返る過酷な
   現実。『非正規レジスタンス 池袋ウエストゲートパーク8』
   (石田衣良/文春文庫)のブックレビュー    【ブックレビュー】

 3.【要友紀子さん寄稿】AV女優が働き方を自ら管理するための本。
   『AVについて女子が知っておくべきすべてのこと』
   (澁谷果歩著/CYZO) ほか        【ブックレビュー】

──────────────────────────────────

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 1.【和解により削除】
                           【キャンペーン】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【和解により削除】


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 2.大手日雇い派遣G社廃業の日まで勤務した組合員が振り返る過酷な
   現実。『非正規レジスタンス 池袋ウエストゲートパーク8』
   (石田衣良/文春文庫)のブックレビュー    【ブックレビュー】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

大手日雇い派遣G社廃業の日まで勤務した組合員が振り返る過酷な現実
『非正規レジスタンス 池袋ウエストゲートパーク8』(石田衣良/文春文庫)

■はじめに 自身の勤務経験からひもときます
 本書は、複数の収録作のなかで書名にもなっている代表作で、違法派遣を行う大企業に、派遣スタッフたちがユニオンと共に立ち向かうフィクションです。はじめに了承いただきたいことがあります。このレビューは、本書への賛否という視点ではなく、題材となった大手日雇い派遣企業G社で10年間勤務した、私自身の経験と本書とのギャップとしてまとめています。本書がフィクションとわかりつつも、より過酷な現実を知る者として、まともに本書の紹介ができませんでした。
 また、出版時期や作中の通信機器などからも分かるように、平成中期の社会情勢を前提としていることをご理解ください。現在、日雇派遣は原則禁止とされています。作中及びG社のような事業者が存在しないことを切に願うばかりです。
■あらすじ 日雇い派遣労働者の襲撃事件
 「池袋ウエストゲートパーク」は、石田衣良氏の人気シリーズ。街のトラブルを解決する主人公マコト。マコトは日雇派遣で生活をするサトシと出会う。サトシはネットカフェ生活を送りながらも、彼にとっては高額ともいえる携帯電話を大切にしていた。それは、電話一本で仕事の依頼がくる派遣会社との連絡手段、生命線であったからだ。サトシは仕事で腰を痛めながらも、自己責任論に縛られ働き続けていた。
 サトシを心配したマコトは再会の約束をするも、サトシの生命線である携帯電話はつながらなかった。マコトは、ユニオン代表のモエと会い、サトシが何者かの襲撃に遭い、現在はユニオンに保護されていることを知る。襲撃事件の真相を追求していくと、そこには違法派遣、労災隠し、ピンハネ長時間労働、組合員潰しなど巨大企業の闇があった。
■現実1 当時の派遣スタッフはマージンを知らなかった
 作中で派遣スタッフは、派遣会社のマージンが四割、派遣先への請求額が1万2千円、スタッフへの支払が7千円、と言及しているが、
現実G社の派遣スタッフはマージンや請求額を知らない。派遣先も派遣スタッフには言わない。そのような契約を派遣元と先で締結しているからだ。なお、作中におけるマージン、請求額、スタッフ支払額は事実と思われる。しかしこれは高額な方である。大口顧客は値引きをしている。だが粗利率を優先するため、最低賃金は守らない。G社では「粗利率35%を下ることは禁止」とされていた。マージンを開示することになっている現行派遣法は当時よりは報われている。
■現実2 内勤社員は作品より質が悪い
 G社の内勤(アルバイト)は、作品よりも乱暴である。登録しにきた人に説明用ビデオを30分ほど見せ、ユニフォームと称した備品をその場で買わせ、電話番号と名前だけをエントリーシートに書かせた後直ちに、当日の穴あき現場へ向かわせた。
 穴あき現場に着くまでは道案内と称して電話をつなげっぱなしにし、逃げないように管理した。また、派遣スタッフが当日欠勤の連絡をしようものなら、内勤は派遣スタッフに対し親兄弟、親戚、友人でもいいから代打を出せと詰め、実際に代打を出させるのである。
 擁護するわけではないが、内勤が人を人とも思わなくなってしまったのは、システムの問題もあるといえる。まず社員や内勤の年齢層が低い。内勤は学歴、年齢不問であり、住所不定者、未成年者も多く在籍していた。心身ともに未成熟であったことは否めない。そして業績に応じて内勤にもインセンティブが支給されていた。
■ゲーム感覚で仕事を手配
 次に高度なアプリケーションソフトを使っていたことである。このアプリの操作画面表では、顧客ごとに必要人数や粗利率が表示される。手配人数や粗利が達成するにつれて表の色が黒から白へ近づいていくのである。ボードゲーム感覚だ。
 顧客名をクリックすると、そこに登録スタッフの能力や経験から自動的に人員が配置され、派遣スタッフに翌日の仕事メールが配信される。あとは登録スタッフがそれを携帯電話のWEB上で承諾するか拒否するかだけである。拒否をすると内勤は本人へ電話し、「簡単な什器の搬入出」と偽り引越しの仕事をさせていた。
 酷い事例を挙げると、重量物取扱経験のある男性の派遣先依頼に対し未成年者の女性を手配していたり、残置物撤去といいながら特殊清掃であったりした。G社は派遣先ニーズも派遣スタッフの安全衛生も考えていない。G社では内勤のことを「手配師」と呼んでいた。
■現実3 必ず仕事があるわけではない
 作中では、簡単に仕事へ就けるような描写があるが、実際はそうではない。G社では、手配をする順番が決まっていた。
 まず「支店待機」を数人手配する。これは支店でスタッフをスタンバイさせ、当日穴あき現場へ本人の意に反してでも向かわせるためである。スタンバイ中は賃金を支給しない。当日穴あきがなければ無賃で帰宅させるのである。当然どの派遣スタッフもやりたがらないが、新規登録者には説明会で「みなさんは支店で待機をしていただいてから、当日に決まった現場へ向かっていただきます。」といい、根付かせる。また、一度でも欠勤をした派遣スタッフは「Z戦士」と呼ばれ、彼らが再び仕事を希望するのであれば、まずは支店待機からとなるのであった。
 次に手配をするのは、派遣スタッフに暴力をふるうような派遣先。これも誰も行きたがらないが、「この仕事しかありません」とG社はウソをつく。派遣で生計を立てているスタッフはやむを得ずその現場に派遣されていく。実際に希望する職へ就ける派遣スタッフは、運よく前記以外の派遣先に派遣され、かつ、その派遣先から指名を受けるようになった者だけである。
■現実4 社員の残業時間は作品よりもっと長い
 作品中では、社員は年間1200時間(月換算すると100時間)の残業だといっているが、F社の月の残業時間は300時間を超えていた。深夜2時に終業して支店で就寝し、朝の7時に起床し仕事を始める。週末に自宅へ帰り、翌週の着替えを大型バッグに詰め込んで、その日のうちに支店に戻り、支店でまた眠りにつくのだ。
■現実5 派遣会社はつぶれ、解雇された
 作品では支店長が内部告発をして行政処分が下ったような描写があるが、G社は「日雇派遣業界全体で当たり前に行われていた港湾運送業への禁止派遣を、当該地域のG社支店にたまたま配属された社員が、違法派遣の行為者として捕まり、略式命令が下った」。港湾運送業への派遣が禁止されていることなど、G社は積極的には社員へ教えていない。支店長の多くは、新卒後半年経たない者たちである。名ばかり管理職とすることにより、残業代の抑制をするためである。社会人としても未成熟な者ばかりであった。
 そして、G社は作品とは大きく異なる結末を迎えている。作中の派遣会社は業務停止命令を受けるに留まるが、G社は間もなく廃業した。そしてほぼ全ての派遣スタッフ、内勤、社員が事実上の即日解雇(形式的には合意退職。日雇派遣労働者にはそもそも解雇や退職などなかった)となり失業した。支店長たちは本社会議室に招集され廃業・即日解雇をG社より告げられたのだが、会議室前の廊下で組合員が「合意退職してはだめだ」と社員を説得していたのを覚えている。
■現実の結末 派遣スタッフの雇用のため奔走
 G社で即日解雇されなかったのは、支店長とブロック長である。とはいえ退職日は決まっていた。ようは残務処理をしていたのだ。不動産の解約手続き、書類の廃棄、顧客への挨拶周りである。残務処理は1週間程度で終わったが、退職日までの残りの日数は就労が免除されていた。しかし、多くの店長、ブロック長が引き続き勤務していた。派遣スタッフの就労先の確保をしていたのである。
 廃業が決まった瞬間、派遣スタッフたちは一斉に支店へ押しかけた。それは怒りというより、絶望だった。「私たちは明日からどうやって生活をしていけばいいのか本当にわからない。社員として雇ってくれるところなどどこにもないのだから日雇派遣をしてきた。どうか助けてくれ」。
 私は一人で数十人の派遣スタッフの相手をしようとしたが、どうすればいいのか全くわからなかった。やがてブロック長が各支店長に対し口を開いた。
「もう会社はなくなるし、お前たち(支店長)も自分たちの就活を早くはじめろ。あと、これは指示ではないが、派遣スタッフが路頭に迷わないよう、顧客に直接雇用してもらうなり、同業他社に顧客とともに派遣スタッフを紹介したりしてなんとかしろ。売上げなどもう関係ないのだから。繰り返すが、決して強制ではない。ただ、正しいことをしろ」……ブロック長、もはや指示しているじゃないか、と私は心の中でツッコミを入れていた。
 不幸中の幸いか、私が勤務していた支店は、全ての派遣スタッフが派遣先に直接雇用され、又は同業他社へ紹介することができた。G社の支店社員たちは、最後は有志で動いていた。「人が、他人をヒトとして見ているかどうか」ということを、よく考えさせられた会社であった。
 Y(組合員)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 3.【要友紀子さん寄稿】AV女優が働き方を自ら管理するための本。
   『AVについて女子が知っておくべきすべてのこと』
   (澁谷果歩著/CYZO) ほか        【ブックレビュー】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「消費者」に弱体化された労働者、闘うきっかけは腹からの動機。
『武器としての「資本論」』(白井聡著/東洋経済新報社
https://precariatunion.hateblo.jp/entry/2020/12/14/151339

労働と生産のあり方を変えるために。
『人新世(ひとしんせい)の「資本論」』(斎藤幸平著/集英社新書
https://precariatunion.hateblo.jp/entry/2020/12/14/155206

要友紀子さん寄稿】AV女優が働き方を自ら管理するための本。
『AVについて女子が知っておくべきすべてのこと』(澁谷果歩著/CYZO)
https://precariatunion.hateblo.jp/entry/2021/01/02/200452

「普通の人」が社会を変えるための方法論。
『コミュニティ・オーガナイジング ほしい未来をみんなで創る5つのステップ』(鎌田華乃子/英治出版
https://precariatunion.hateblo.jp/entry/2021/01/03/125433

分断を乗り越え、社会を動かすための良書。
『社会はこうやって変える! コミュニティ・オーガナイジング入門』(マシュー・ボルトン法律文化社
https://precariatunion.hateblo.jp/entry/2021/01/03/131013

トランスジェンダーの著者が今いる場所と社会を変えた奮戦記。
『元女子高生、パパになる』(杉山文野著/文藝春秋
https://precariatunion.hateblo.jp/entry/2021/01/03/133208

貧困との闘いに立ち上がるイギリス労働者。
『1945年の精神 (THE SPIRITOF '45)』(ケン・ローチ監督/2013年・イギリス)
https://precariatunion.hateblo.jp/entry/2021/01/03/135235


プレカリアートユニオン2020年冬の解決報告・動画を公開しました。「人生の最後に笑えるのは自分たち」。明成物流支部山田支部長が支部活動をしみじみ振り返ります。
https://youtu.be/nq7GYdwkI-k

プレカリアートユニオンに対するデマ/誹謗中傷については、こちらをご覧ください。
https://precariatunion.hateblo.jp/entry/2020/07/02/222457
DMUと前田史門氏らによるデマと名誉毀損について 背景には困難な仲間による過剰な居場所化も


▼労働相談はこちらへ
月~土曜日 10~19時 ※緊急相談は随時対応します。
*****
プレカリアートユニオン
〒160-0004
東京都新宿区四谷4-28-14パレ・ウルー5F
ユニオン運動センター内
TEL03-6273-0699
FAX03-4335-0971

メール info@precariat-union.or.jp
※会社のPCからはメールを送らないでください。相談内容を会社側に知られる可能性があります。
ウェブサイト https://www.precariat-union.or.jp/
ブログ https://precariatunion.hateblo.jp/
ツイッター https://twitter.com/precariatunion
*****

f:id:kumonoami:20201204125029j:plain

 

大手日雇い派遣G社廃業の日まで勤務した組合員が振り返る過酷な現実。『非正規レジスタンス 池袋ウエストゲートパークⅧ』(石田衣良/文春文庫)

大手日雇い派遣G社廃業の日まで勤務した組合員が振り返る過酷な現実

『非正規レジスタンス 池袋ウエストゲートパークⅧ』(石田衣良/文春文庫)

■はじめに 自身の勤務経験からひもときます
 本書は、複数の収録作のなかで書名にもなっている代表作で、違法派遣を行う大企業に、派遣スタッフたちがユニオンと共に立ち向かうフィクションです。はじめに了承いただきたいことがあります。このレビューは、本書への賛否という視点ではなく、題材となった大手日雇い派遣企業G社で10年間勤務した、私自身の経験と本書とのギャップとしてまとめています。本書がフィクションとわかりつつも、より過酷な現実を知る者として、まともに本書の紹介ができませんでした。
 また、出版時期や作中の通信機器などからも分かるように、平成中期の社会情勢を前提としていることをご理解ください。現在、日雇派遣は原則禁止とされています。作中及びG社のような事業者が存在しないことを切に願うばかりです。
■あらすじ 日雇い派遣労働者の襲撃事件
 「池袋ウエストゲートパーク」は、石田衣良氏の人気シリーズ。街のトラブルを解決する主人公マコト。マコトは日雇派遣で生活をするサトシと出会う。サトシはネットカフェ生活を送りながらも、彼にとっては高額ともいえる携帯電話を大切にしていた。それは、電話一本で仕事の依頼がくる派遣会社との連絡手段、生命線であったからだ。サトシは仕事で腰を痛めながらも、自己責任論に縛られ働き続けていた。
 サトシを心配したマコトは再会の約束をするも、サトシの生命線である携帯電話はつながらなかった。マコトは、ユニオン代表のモエと会い、サトシが何者かの襲撃に遭い、現在はユニオンに保護されていることを知る。襲撃事件の真相を追求していくと、そこには違法派遣、労災隠し、ピンハネ長時間労働、組合員潰しなど巨大企業の闇があった。
■現実1 当時の派遣スタッフはマージンを知らなかった
 作中で派遣スタッフは、派遣会社のマージンが四割、派遣先への請求額が1万2千円、スタッフへの支払が7千円、と言及しているが、現実G社の派遣スタッフはマージンや請求額を知らない。派遣先も派遣スタッフには言わない。そのような契約を派遣元と先で締結しているからだ。なお、作中におけるマージン、請求額、スタッフ支払額は事実と思われる。しかしこれは高額な方である。大口顧客は値引きをしている。だが粗利率を優先するため、最低賃金は守らない。G社では「粗利率35%を下ることは禁止」とされていた。マージンを開示することになっている現行派遣法は当時よりは報われている。
■現実2 内勤社員は作品より質が悪い
 G社の内勤(アルバイト)は、作品よりも乱暴である。登録しにきた人に説明用ビデオを30分ほど見せ、ユニフォームと称した備品をその場で買わせ、電話番号と名前だけをエントリーシートに書かせた後直ちに、当日の穴あき現場へ向かわせた。
 穴あき現場に着くまでは道案内と称して電話をつなげっぱなしにし、逃げないように管理した。また、派遣スタッフが当日欠勤の連絡をしようものなら、内勤は派遣スタッフに対し親兄弟、親戚、友人でもいいから代打を出せと詰め、実際に代打を出させるのである。
 擁護するわけではないが、内勤が人を人とも思わなくなってしまったのは、システムの問題もあるといえる。まず社員や内勤の年齢層が低い。内勤は学歴、年齢不問であり、住所不定者、未成年者も多く在籍していた。心身ともに未成熟であったことは否めない。そして業績に応じて内勤にもインセンティブが支給されていた。
■ゲーム感覚で仕事を手配
 次に高度なアプリケーションソフトを使っていたことである。このアプリの操作画面表では、顧客ごとに必要人数や粗利率が表示される。手配人数や粗利が達成するにつれて表の色が黒から白へ近づいていくのである。ボードゲーム感覚だ。
 顧客名をクリックすると、そこに登録スタッフの能力や経験から自動的に人員が配置され、派遣スタッフに翌日の仕事メールが配信される。あとは登録スタッフがそれを携帯電話のWEB上で承諾するか拒否するかだけである。拒否をすると内勤は本人へ電話し、「簡単な什器の搬入出」と偽り引越しの仕事をさせていた。
 酷い事例を挙げると、重量物取扱経験のある男性の派遣先依頼に対し未成年者の女性を手配していたり、残置物撤去といいながら特殊清掃であったりした。G社は派遣先ニーズも派遣スタッフの安全衛生も考えていない。G社では内勤のことを「手配師」と呼んでいた。
■現実3 必ず仕事があるわけではない
 作中では、簡単に仕事へ就けるような描写があるが、実際はそうではない。G社では、手配をする順番が決まっていた。
 まず「支店待機」を数人手配する。これは支店でスタッフをスタンバイさせ、当日穴あき現場へ本人の意に反してでも向かわせるためである。スタンバイ中は賃金を支給しない。当日穴あきがなければ無賃で帰宅させるのである。当然どの派遣スタッフもやりたがらないが、新規登録者には説明会で「みなさんは支店で待機をしていただいてから、当日に決まった現場へ向かっていただきます。」といい、根付かせる。また、一度でも欠勤をした派遣スタッフは「Z戦士」と呼ばれ、彼らが再び仕事を希望するのであれば、まずは支店待機からとなるのであった。
 次に手配をするのは、派遣スタッフに暴力をふるうような派遣先。これも誰も行きたがらないが、「この仕事しかありません」とG社はウソをつく。派遣で生計を立てているスタッフはやむを得ずその現場に派遣されていく。実際に希望する職へ就ける派遣スタッフは、運よく前記以外の派遣先に派遣され、かつ、その派遣先から指名を受けるようになった者だけである。
■現実4 社員の残業時間は作品よりもっと長い
 作品中では、社員は年間1200時間(月換算すると100時間)の残業だといっているが、F社の月の残業時間は300時間を超えていた。深夜2時に終業して支店で就寝し、朝の7時に起床し仕事を始める。週末に自宅へ帰り、翌週の着替えを大型バッグに詰め込んで、その日のうちに支店に戻り、支店でまた眠りにつくのだ。
■現実5 派遣会社はつぶれ、解雇された
 作品では支店長が内部告発をして行政処分が下ったような描写があるが、G社は「日雇派遣業界全体で当たり前に行われていた港湾運送業への禁止派遣を、当該地域のG社支店にたまたま配属された社員が、違法派遣の行為者として捕まり、略式命令が下った」。港湾運送業への派遣が禁止されていることなど、G社は積極的には社員へ教えていない。支店長の多くは、新卒後半年経たない者たちである。名ばかり管理職とすることにより、残業代の抑制をするためである。社会人としても未成熟な者ばかりであった。
 そして、G社は作品とは大きく異なる結末を迎えている。作中の派遣会社は業務停止命令を受けるに留まるが、G社は間もなく廃業した。そしてほぼ全ての派遣スタッフ、内勤、社員が事実上の即日解雇(形式的には合意退職。日雇派遣労働者にはそもそも解雇や退職などなかった)となり失業した。支店長たちは本社会議室に招集され廃業・即日解雇をG社より告げられたのだが、会議室前の廊下で組合員が「合意退職してはだめだ」と社員を説得していたのを覚えている。
■現実の結末 派遣スタッフの雇用のため奔走
 G社で即日解雇されなかったのは、支店長とブロック長である。とはいえ退職日は決まっていた。ようは残務処理をしていたのだ。不動産の解約手続き、書類の廃棄、顧客への挨拶周りである。残務処理は1週間程度で終わったが、退職日までの残りの日数は就労が免除されていた。しかし、多くの店長、ブロック長が引き続き勤務していた。派遣スタッフの就労先の確保をしていたのである。
 廃業が決まった瞬間、派遣スタッフたちは一斉に支店へ押しかけた。それは怒りというより、絶望だった。「私たちは明日からどうやって生活をしていけばいいのか本当にわからない。社員として雇ってくれるところなどどこにもないのだから日雇派遣をしてきた。どうか助けてくれ」。
 私は一人で数十人の派遣スタッフの相手をしようとしたが、どうすればいいのか全くわからなかった。やがてブロック長が各支店長に対し口を開いた。「もう会社はなくなるし、お前たち(支店長)も自分たちの就活を早くはじめろ。あと、これは指示ではないが、派遣スタッフが路頭に迷わないよう、顧客に直接雇用してもらうなり、同業他社に顧客とともに派遣スタッフを紹介したりしてなんとかしろ。売上げなどもう関係ないのだから。繰り返すが、決して強制ではない。ただ、正しいことをしろ」……ブロック長、もはや指示しているじゃないか、と私は心の中でツッコミを入れていた。
 不幸中の幸いか、私が勤務していた支店は、全ての派遣スタッフが派遣先に直接雇用され、又は同業他社へ紹介することができた。G社の支店社員たちは、最後は有志で動いていた。「人が、他人をヒトとして見ているかどうか」ということを、よく考えさせられた会社であった。
 Y(組合員)

 

労働相談は、誰でも1人から加入できる労働組合
プレカリアートユニオン
〒160-0004東京都新宿区四谷4-28-14パレ・ウルー5F
TEL03-6273-0699 FAX03-4335-0971
メール info@precariat-union.or.jp
ウェブサイト https://www.precariat-union.or.jp/
ブログ https://precariatunion.hateblo.jp/
ツイッター https://twitter.com/precariatunion

f:id:kumonoami:20190207194351j:plain

books.bunshun.jp