「駆け込み寺から砦へ」を実現する工夫 組合員とともに成長し続ける組合に
2012年4月にプレカリアートユニオンを結成し、5年前半の間に組合員は300人になりました。
これまで、個別案件の解決、組織化、キャンペーンに取り組むなかで、適時に的確な対応ができるよう、態勢を整えながら、ストライキが当たり前ではなくなった世代にも労働組合でできることを伝え、労働組合が希望となることを目指し、個別争議案件の解決やキャンペーンにSNSやYouTubeの動画などインターネットを活用、メディアに取り上げられる工夫をして解決力を高めてきました。
■女性ほか多様なセクシュアリティの担い手を育成
プレカリアートユニオンは、これまで、一般的に労働組合の課題とされることの解決に積極的に取り組んできました。
例えば、組合員としては非正規労働者や女性を積極的に仲間としているにも関わらず、組合の担い手、組織の決定の場にいるのは男性が中心という状況に陥らないよう、男性以外の性自認を持つ担い手の育成を進めています。執行委員会の役員比率で、女性など多様なセクシュアリティの仲間の割合を4割としました。女性の平等な参画を進める上での課題も分析し、工夫、対策しています。その一つが執行委員会の開催時間帯で、夜ではなく土曜日の昼に軽食を食べながら開催してきました。お子さんを連れて来る人もいます。
また、個人加盟ユニオンにありがちな解決請負的な活動に陥らないよう、またタテの関係のなかで仲間が受け身にならないよう、仲間の力を引き出せるようにコーチングを行い、問題解決のプロセスを通じて組合員自身の闘う力を育てています。
■組合員のリーダーシップを育てる
社会を変える手法であり、それが体系化されて学べるようになっているコミュニティオーガナイジングのワークショップを活用し、当事者である組合員のなかにリーダーシップを育てることに取り組んでいます。主に労働相談を入り口に仲間になった当事者である普通の労働者である組合員自身をトレーニングし、仲間の中から複数の専従候補をはじめ若手の担い手を育てる仕組みを作っています。
これらの組織運営の工夫を通して、たった一人の強いリーダーだけが組織を引っ張るのではなく、雪の結晶のようにスノーフレークのようにリーダーシップをとる人が、広がり、つながるがゆえに強い、多様な仲間が結集して若い担い手を育てているがゆえに強い、駆け込み寺から砦へを体現する組織を目指しています。
■計測可能なゴールを方針とする
人手に限りがあるので、活動では課題と戦略、何を実現するためにこれに取り組む、といったことを意識し、方針も総花的な努力目標を列挙することはしません。7月2日には、次年度方針ワークショップを行い、執行委員会の役員を中心に次年度の担い手となるメンバー自身が、解決すべき課題ごとにチームを組み、何のために、これに取り組むと何が実現するから、いつまでに、どのように、いくつ、何をするといった、計測可能な獲得目標を作りました。時間が限られていたため、8月の執行委員会までに、チームごとに練り直しを行います。このワークショップで、プレカリアートユニオンの将来について話し合うなかで、5年後には、組合が運営に関わるケア施設を開設することにしました。
■労働者側が力を持つための組織化をする
この次年度方針ワークショップでは、「プレカリアートトユニオンの使命は、弱い立場の労働者自身が団結することで、労働条件を変える力をつけることです。力とは、決定権を握る者に、彼らの好むと好まざるとに関わらず、『イエス』と言わせる能力のことです。力の具体的なイメージとしては、個別案件の解決ではなく、労働者が集団として力を持っている職場を増やすこと、集団を作ることで業界を変える力を持つことを指します」と使命や目指す姿の共有をしました。組合員の皆さん一人ひとりがここにいるからこそ、プレカリアートユニオンの今があります。(労働問題の)駆け込み寺から砦へ。組合員自身が自分の持つ力に気付き、勇気を持てるよう工夫し続け、成長し続けるプレカリアートユニオンの未来をともに作っていきましょう。
清水直子(執行委員長)