プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

日本労働弁護団主催「労働法講座」に参加して~パワハラ・セクハラ事件の勘所~

 2月29日、連合会館にて日本労働弁護団主催の第32回労働法講座が開催されました。第1講座は海道宏美弁護士による「パワハラ・セクハラ事件の勘所」、第2講座は宮里邦雄弁護士による「不当労働行為救済制度の内容と手続き」、第3講座は井上幸夫護士による「均等・均衡待遇」と3つのテーマに沿った講義が行われました。第1講座について、簡単に紹介したいと思います。

まずは労災に当たるかどうか
 現代の労働問題とは切っても切り離せないのが、セクハラ・パワハラの問題です。私たち労働組合にも、日々多くの相談が寄せられます。それらの相談対応、労災申請、会社との交渉などにあたっての勘所を解説した本講座ですが、海道弁護士は労災相談を受けた時は、まず労災になりうるかどうかを検討することが大切なのです。

労災判断基準と運用例と判例傾向を知ることが大切
 労災の判断基準と裁判の判例傾向を知ることは、ハラスメント問題と向き合う上で非常に重要なポイントです。認定には、発病の有無、既往症がある場合は増悪の程度などが大きく関係してきます。例えば、既往症がある場合、ハラスメントと病気との因果関係を否定されてしまわないためにも、「寛解(完治)し通常に社会生活を営むことができていれば治癒したものとみなし、新たな発症として扱う」という基準を知り、正しく主張をしていくことが必要です。また、心理的負荷に関しては、いくら強い負荷があっても、発病前のものでないと評価の対象とはならない点などに注意が必要です。

労災認定されにくい「パワハラ
 パワハラはなかなか、労災が認められない傾向にあります。発言が「業務指導」を超えたものなのかどうか、労基署はなかなか踏み込んだ判断をしないのだと言います。そして、パワハラには6類型がありますが、そのうち労災と認定されるのは、ほぼ精神的な攻撃・肉体的な攻撃のみに限られます。このような場合、長時間労働などの修正要素を駆使して労災認定に繋げていくのだといいます。

認定率の上がってきた「セクハラ」
 セクハラは、パワハラに比べて認められるケースが増えてきたと言います。ハラスメントの特性から、しっかりとした証拠を揃えて申請するケースが多いのも認定率の高さに影響しているとのことです。しかし、1度だけの身体接触ではセクハラによる労災と認定されないといった厳しい認定基準も問題となっています。このような場合もやはり、修正要素を駆使して認定させていく必要があります。ちなみに、精神疾患の労災認定には心理的負荷が「強」であると認められる必要がありますが、心理的負荷が「中」程度の出来事が複数あっても、なかなか併合で「強」とされることはありません。このことは、認定への大きな壁となっています。

裁判と労災との関係
 労災認定が受けられるケースでは、裁判でも損害賠償が認められるケースが多いです。しかし、必ずしも「労災の判断=損害賠償の有無」ではないことを意識する必要があります。労災が認められないからといって、裁判で損害賠償が認められないとも限りません。最後まで諦めずに闘うことも大切です。

対応に際して必要なこと
 ハラスメント被害者は不安定になったり、過敏になったりしてしまいがちです。実際の相談に際しては、コミュニケーションに十分に気をつけるとともに、必要に応じて医療機関など専門家との連携も大切なのだといいます。また、相談を受ける側の心と体の健康を保つことも非常に重要なのだといいます。

 ハラスメントの相談を受ける時、労災などの結果はどうあれ、相談者が生き生きと再出発できることを大事に考えるべきと海道弁護士は語りました。職場での嫌がらせにより傷ついてしまった労働者の心の傷は実に様々です。それらに寄り添い、柔軟に問題を解決していきたいと思います。

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