プレカリアートユニオンブログ

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職場で女性が悲惨な目に遭う背景は?『モヤる言葉、ヤバイ人~自尊心を削る人から心を守る「言葉の護身術」』(アルテイシア著/大和書房)

職場で女性が悲惨な目に遭う背景は?

『モヤる言葉、ヤバイ人~自尊心を削る人から心を守る「言葉の護身術」』(アルテイシア著/大和書房)

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 この本をある女性から勧められて読みましたが、なぜこんな爺さんに読ませるのか不思議に思っています。この本はセクハラやパワハラに苦しむ女性のために、無神経な言葉を浴びせるヤバい人に対する対処法をユーモアたっぷりに書いたエッセイです。「多分ナベ爺さんは、若いころ相当スケベな言葉を投げかけて、多くの女性たち傷つけたに違いない」とその女性は想像して、深く反省させることを意図したのかもしれません。でも、実際は、確かに「一度もセクハラをしたことがない」と胸を張って言えるとはいえませんが、この本に出てくる「ヤバい人」ほど無粋な人間ではなかったと思います。
 私は現在65歳で、仕事も一人現場ですから、いま会社で働いている人がどういう人間関係に悩んでいるのか、実際のところ肌で感じることができません。しかしこの本の中に出てくる「ヤバい人」はおそらく昭和世代の上司でもあるおっさんが大部分を占めています。いま現役のおっさんは、40から50歳代でしょうから、おそらく私たちが若かった頃の1970年代の女性解放運動を知らない年代です。正直この本で取り上げられている「モヤる言葉」が職場でしかも上司の口から発せられているとしたら、(実際そうなのでしょうが、ちょっと私にとっては信じられないので)、明らかに時代は後退しています。
 たとえそのような言動があったとしても、役職者でなく万年ヒラのおっさんが地雷を踏んでました。というのは当該の女性はすぐ事実を上司またはその上の上司に報告し、問題は即決してました。当たり前の事ですが、地位が上に行けば行くほど人間は(仕事の上、職場の中に限定されますが)おおむね立派な人でした。いま職場組織がそういった健全なヒエラルキーになっていないとしたら、その辺が根源的な問題かもしれません。また、我々が若い時は「女性の時代」とも言われ、会社もこぞって優秀な女性を新卒で採りました。逆に新卒の男性が力仕事などを含む単純反復的な仕事に回され、我々は大いに不公平を感じたものです。男女機会均等法ができたのもこの頃です。それが何故かこの本のような、女性受難の時代に後戻りしたのか私にはわかりません。悲惨な目に逢っている今の女性にとっては、何とか心が折れないように対抗する手段が必要でしょうから、半分笑い飛ばしながら男社会に対抗していく必要もあるでしょう。
 この本では「褒めるふりをしたモヤい言葉」や「迷惑すぎるクソバイス」などの職場で女性に浴びせられる無神経な言葉や「女性を標的にする、または距離を取るべきヤバい人」などその言葉を発する主に男どもに対抗する方法がいろいろなケースに分類されています。笑い飛ばせなければやっておられない状況です。いつからこんな状況になったのでしょうか? 「女性の時代」といわれた頃には、女性が子育てなどでいったん職場を離れても再就職制度など現役復帰しやすい人事制度が作られました。企業によっては自前で保育園を会社の近くに建てたりしました。経済のグローバル化はそのころ既に予測されていましたので、結婚して専業主婦になるという道はすでに閉ざされかけていたし、当時の女性も専業主婦になる気は毛頭なかったと思います。明らかにどこかの時点で企業が人を大切にすることを忘れ、損か得かの利益追従に走り、その方法も新しい価値を創造するのではなく、ひたすらコスト削減ばかりに注力したことが原因です。
 したがって会社員も自分がそのターゲットにならぬよう日和見主義者となり、ひたすら人の足を引っ張ることに勢力を費やしたのです。真っ先にその餌食となったのが女性でしょう。数の上では企業で多数派だった男性はとりあえずは難を逃れましたが、これからは男性に対する強烈な圧迫が始まるでしょう。やはりこの企業社会の在り方を性別にかかわりなく考えていかなくてはならない時にきています。
 渡辺耕一(組合員)

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