問いかけから始める支援
『人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則』(エドガー・H・シャイン著/英治出版)
よかれと思ってしたことが、かえって人を傷つけてしまったり、困らせてしまったり、こんな経験を誰しもがしたことがあると思います。『人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則』は、MIT工科大学スローン経営大学院名誉教授であるエドガー・H・シャインによる、支援学の入門書です。
■支援とは依頼に応えることではない
本書は、「役に立つ支援と役に立たない支援」の解説から始まります。何も考えずに、クライアント(本書では支援を受けるものをそう表記する)の表面上のリクエストに答えた結果は必ずしも本当に必要とされている助けと一致するものではないのだといいます。例えば、著者自身も子どもに「宿題を教えてほしい」と言われたとき、その裏に学校での話を聞いてほしいという真のニーズがあったのに気がつかず、ただ効率よく問題だけを教え、子どもの機嫌を損ねてしまったという体験談を語っています。支援とは、依頼に応えることと必ずしもイコールではないのです。
■質問が真のニーズを引き出す
支援関係の対象は何も個人だけに限られません。本書ではチームに対する支援についてやリーダーとしてのあり方についても触れるなど、実に幅広く支援するということについて解説されています。大切なのは、クライアントの必要と感じている支援や直面している困難はクライアントの中にあるということです。様々な質問を駆使することで個人だけでなく集団の支援も行うことができるようになるといったプロセスが丁寧に平易に語られています。
この本は、専門家ではなく、人を助けたり、助けを求められる様々な立場の人々に向けて書かれていることに大きな意義があります。労働組合での様々な相談も、断定的に問題点を決めつけず、「あなたは何に困っていますか」と問いかける姿勢を大切にしたいと感じました。
稲葉一良(書記長)
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