プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

虐げられ社会の底辺で暮らす心優しき青年がゴッサムシティを震撼させるジョーカーになるまで。『ジョーカー』(トッド・フィリップス監督/2021年/アメリカ)

 バットマンシリーズを代表するヴィラン(悪役)である「ジョーカー」は1940年刊行のコミックス第1話から登場し、多くの熱狂的なファンを獲得しています。そんなジョーカーは時代と共に様々な描かれ方をしてきましたが、共通しているのは、生身の人間であり何ら超人的な身体能力を有さないという点です。ある時は知能が高く残忍なサイコパスとして描かれ、また、ある時はいたずらを繰り返すキャラクターとして描かれたりしているのですが、今回紹介する映画「ジョーカー(原題:Joker)」はそんなジョーカーの原点を描いた作品です。
■病気の母と2人でピエロの仕事をして生計を立てる
 本作の主人公アーサーは、病気でほとんど寝たきりの母の介護をしながら、派遣社員としてピエロの仕事をしていました。生活はギリギリな上に、アーサーは緊張してしまうと反射的に笑いが止まらなくなってしまう等の深刻な精神疾患を抱え、カウンセリングと投薬による治療が必要な状態でした。
 ある日の仕事中、お店の看板を子どもたちにひったくられてしまい、取り返そうとするも暴行を受けてしまいますが、会社はアーサーの言い分に全く耳を貸さず看板を壊したこと仕事場からいなくなったことを一方的に責められてしまいます。周りに彼に同情の眼差しを向けるものはほとんどいません。
■仕事を失い失意の末の「凶行」、そして覚醒
 そんなアーサーはコメディアンになることを日々夢見てネタを書き溜め、大好きなコメディアンであるマレーの番組を楽しみに暮らしていました。人を笑わせる道化師の仕事のことも心から愛していました。そんな仕事も、看板の事件の後に護身用として同僚から渡された拳銃を小児病棟で誤って落としてしまったことにより失ってしまうことになります。クビを言い渡され失意のまま地下鉄に乗るアーサー、車内では女性が3人のスーツ姿の男性に絡まれていました。
 見て見ぬふりをしようとしたアーサーでしたが、緊張から笑いの発作が出てしまいます。男たちはアーサーの様子に腹を立て激しく暴行を加えます。それに対しアーサーはとっさに持っていた拳銃で3人を全員射殺してしまうのです。アーサーの心にあるのは焦燥感や後悔ではなく高揚と恍惚。彼はジョーカーとして覚醒します。
■虐げられた市民のダークヒーローとなったジョーカー
 ゴッサムの街には激しい貧富の差が存在し、それが日々拡大していました。一部のエリートに富は集中し、政治により医療と福祉等の公序がどんどん削られていきます。アーサーが殺した3人が証券会社に勤めるエリートだったことから、「ジョーカー」はダークヒーローとして虐げられた貧困層を中心に社会の支持を集めていきます。物語はジョーカーとなったアーサーが自分を虐げてきた社会への復讐劇を開始します。
 この映画の評価は、残虐な描写や精神疾患に対する描き方などの問題もあり大きく賛否が分かれています。しかし、格差社会における圧倒的な閉塞感や絶望感のリアリティはすさまじく、本来共感できないはずの存在として生み出されたであろうジョーカーに思わず感情移入してしまう一幕すらあります。その原因の1つには、この映画で描かれた弱者を切り捨て虐げる社会がもはやフィクションのなかだけのものでなく現実の世界中に広く蔓延っているということが挙げられます。医療や福祉を蔑ろにする今の日本社会、本当にこのままでいいのでしょうか。
 稲葉一良(書記長)

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