プレカリアートユニオンブログ

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トリクルダウンよりボトムアップを。貧困を強制される社会の実態を暴き出した1冊。『不寛容の時代 ボクらは『貧困強制社会』を生きている』(藤田和恵著/くんぷる)

『不寛容の時代 ボクらは『貧困強制社会』を生きている』(藤田和恵著/くんぷる)

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トリクルダウンよりボトムアップを。貧困を強制される社会の実態を暴き出した1冊


 自己責任論が世にはびこって久しい今日ですが、果たして、なかなか仕事に就けない、一生懸命働いても貧しいことは私たち一人ひとりの責任なのでしょうか。「不寛容の時代 ボクらは『貧困強制社会』を生きている」は事件、労働、貧困問題を中心に取材、執筆活動を続けているジャーナリストの藤田和恵氏による、非正規労働者発達障害をもつ人の貧困についてを取材しまとめた1冊です。
■社会に潜む貧困への落とし穴
 私たちが生きる世の中は様々な貧困への落とし穴が存在しています。本書は、「使い捨てられるアルバイト、契約社員派遣社員たち」、「非正規公務員・官製ワーキングプア」、「コロナ渦・奈落の底へ」、「孤独と差別の発達障害」の4部によって構成され、様々な理由によって貧困を余儀なくされている労働者の実態を丹念な取材によって克明に記しています。本書は東洋経済オンラインに連載された同名のルポを1冊にまとめたものです。東洋経済オンラインには別途女性の貧困をテーマにした連載があるため、男性の貧困だけが取り上げられていますが、共通する社会の構造的な問題に加え、元より非正規率が高く賃金が低いことに加え、DV、介護、子育て等の問題が加わるケースも多く、女性の貧困はさらに苛烈を極めていることも記されています。
■トリクルダウンは”2万%”あり得ない
 社会を覆う不寛容は差別を生み出します。様々な理由を付けられ簡単に貧困に転落してしまいかねない社会構造、効率化、合理化の名の元に労働者がモノにされ、数字にされ、社会全体が仕組みとして雇用責任を投げ出そうとしている極めて深刻な実態が本書には描かれています。自己責任論は虐げられた労働者にまで内在化し、貧困に喘ぎながら自分自身を責める、まるで地獄絵図を見ているような光景が溢れています。ILOが実現を目指す「ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」からはほど遠いのが私たちの置かれた労働環境なのです。著者は、企業などの富める者がさらに豊かになれば、貧しい者にも自然にその富がこぼれ落ち、社会全体が豊かになるというトリクルダウン理論について「”2万%”あり得ないと思っている」とし、ボトムアップを実現するしか貧困が蔓延する社会を変える道がないことを説いています。
 ボトムアップをどのように実現するべきでしょうか。当然、政治が変わる必要もあれば、会社も職場も変えていかなければなりません。そのときに必要になっていくのが、私たち一人ひとりがおかしいことにしっかりと声を上げていくことです。「労働組合は民主主義の学校」という言葉があります。私たちがともに声を合わせ、職場や自分自身の生活を変え、格差を拡大させ弱者を切り捨てる政治にNOを突きつけることで、真の民主主義を実現し、「貧困強制社会」に終止符を打つことができるのです。

稲葉一良(書記長)

 

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