世界中で急速に進むジェントリフィケーションをどのように認識し立ち向かうか
『ブルックリン化する世界』(森千香子著/東京大学出版会)
蔵前は東京のブルックリンと呼ばれている。東京23区の新築マンション販売価格は年々上昇を続け、ついに今年に入りその平均金額が1億円を突破したと報じられた。そして、昔ながらの商店はどんどん数を減らし駅前再開発が盛んに行われている。もはや多くの労働者にとって東京23区内で自宅を所有するということは現実的な選択肢ではない。
『ブルックリン化する世界 ジェントリフィケーションを問い直す』は、同志社大学社会学部教授であり同大学都市共生研究センター長を務める森千香子氏による1冊。
不動産のグローバル化やデベロッパーの再開発により地価と居住コストが急騰するブルックリンで起こっているジェントリフィケーション。それに対する地域住民を中心としたカウンター運動、生じる地域コミュニティの崩壊と再生を記した1冊である。
■世界中で起こっているジェントリフィケーション
ジェントリフィケーションとは一般に地域に高所得層が流入し、質の高い住居が建ち並ぶ等の再開発が行われ地価が高騰することを指す。本書では、このジェントリフィケーションの功罪を分析し、その背景にある、資本によるマイノリティを標的にした追い出し問題や地域コミュニティの崩壊なども射程に収め再定義を行っている。
デベロッパーが儲けのために土地や物件を買い上げ、時に投資目的で保持し、時に物件価格をつり上げる。その地域の元々の住民は差別に基づく様々な嫌がらせで立ち退きを迫られる。この貧困層追い出しは実に深刻だ。
商店は数を減らし、新しくできた高所得層向けの店での買い物は昔からの住人には事実上不可能に近い。地元に居ながらにしてよそ者になってしまう現象が起こっている。このような問題とブルックリンの住民はCO(コミュニティ・オーガナイジング)などを駆使してどのように向き合い立ち向かっているかが記されている。
日本でも万博に向けて西成(あいりん地区)の再開発が行われ、まるで貧困を覆い隠すかのような官民一体となった日雇い労働者をはじめとする地元住民への差別を背景とした排除が行われている。23区でも次々と新しいマンションが建ち並びそれらの価格は軒並み目を剥く程である。
町が綺麗になり新しい商業施設ができる等と聞くとついそわそわしてしまいがちだが、しっかりと譜の側面にも目を向け都市開発や住まいのあり方はどのようにあるべきか皆でしっかりと議論していきたい。本書はそのための土台になる1冊だと感じた。
稲葉一良(書記長)
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