プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

「追い出し部屋」記者会見報告と雇い止めホットラインその後

違法ではないとされた「追い出し部屋」問題で
全国ユニオン東京管理職ユニオンが記者会見

追い出し部屋問題で、2月28日、違法な退職強要に遭っている当事者と全国ユニオン東京管理職ユニオンなどが、厚生労働省内で被害の実態を訴えた。【記者会見で発言した全国ユニオンは、プレカリアートユニオンが加盟する全国組織で、東京管理職ユニオン東京ユニオン全国ユニオンの主要な加盟団体。】

追い出し部屋はある!
 昨年末から大手電機メーカーなど各社で、退職強要を目的に一部従業員が追い出し部屋と呼ばれる部署に集められ、単純作業に従事させられたり、次の就職先を探すよう圧力をかけられるといった問題が明るみに出た。厚生労働省が調査したものの、不十分な聞き取り調査にとどまったためか、違法行為があるとは認められなかった、と結論づけられた。しかし、違法な追い出し部屋は存在するのだ。
 記者会見では、全国ユニオン会長の鴨桃代さんが、次のように語った。
「ただ今、春闘の真っ最中である。賃上げも必要だが、雇用が不安定になっていることに危機感を持っている。経団連の『経営労働政策委員会報告2013年版』を見ても、これからますます解雇規制緩和や、解雇の金銭解決ルール導入が目論まれようとしている。そのなかで新手の解雇、リストラのやり方として、追い出し部屋が広がっている。厚生労働省が大手5社に調査した結果、違法行為があったとは見ていない、という結論を出しているが、ユニオンで相談を受けている実感としては、追い出し部屋は存在している。自ら辞めるようにし向け、自ら辞めると言わせるやり方。そこに向けて業務改善計画(PIP)、キャリアコンサルタント産業医などさまざまな手段を使って追い出しにかかっている。また、正社員だけでなく、4月から労働契約法の改正が施行されるなかで、長期に更新を重ねてきた有期契約の労働者も同じように会社から追い出されようとしていることを知ってほしい」。

外部のキャリアコンサルタントを使う例も
 東京管理職にユニオン書記長の鈴木剛さんは、「厚生労働省が調査をしたが追い出し部屋に違法な事実は発見できなかったと報告された。今、実際に追い出し部屋にいる人たちが相談にきている。物理的な追い出し部屋だけでなく、PIP(=業績改善計画。退職強要を目的にしていることが多い)という手法を使ったり、雇用されている会社の上司が退職強要を行うと違法になるため、外部のキャリアコンサルタント会社を使ったり、産業医が復職はできないと言うことで復職が拒否される例がある」と指摘。
「2012年8月末に、追い出し部屋と同じ手法を違法だとした判決が、東京地裁立川支部で出されている(その後和解)。人財部に配属された社員は名刺を持たされず、社内で就職活動をさせられ、その時間以外は単純労働に従事させられる。仕事が見つかればSABCDのD、見つからなければEという最低評価。社内の電話にも出ることを禁じられ、この人財部への配属が実質的に退職勧奨であった疑いが強く違法、と判断された。日本では解雇規制が強い国と言われており、労働契約法16条に解雇の制限が書かれている。一方、業務命令については会社の権限が強く、業務命令に反すると懲戒、場合によっては解雇されるということを利用して、業務命令として自分の仕事を見つけろと命じるシステムを作り出した。仕事を見つけないと給与が下がる。日本では、以前からリストラ部屋へ異動させるというやり方があったが、当時は、辞めさせたい人を査定し、賃金を下げたり降格して追い出した。今はこのような手続きも踏まず、あなたのためだ、ここをスキルアップしなさい、キャリアデザインをするとして追い詰めるというスタイル。解雇規制があるといっても、中小企業ではどんどん解雇している。今の安倍政権の下で、解雇規制が緩和されるという議論がされているが、二重構造になっていて、中小企業では解雇は当たり前のようにされている」と言う。

パナソニックの追い出し部屋からの相談も
 厚生労働省が「なかった」としている違法な追い出し部屋にいる人たちの相談事例も紹介された。
 東京ユニオン執行委員長の渡辺秀雄さんは、「パナソニックの追い出し部屋にいる方からの相談を受けている。中途入社でパナソニックに入社したシステム関連のデザイナーだった40代の男性だ。4年前にパナソニックで所属部署が解散し、150名いた部署の従業員のうち中途入社の人だけが子会社のキャリア開発チームへ所属させられた。ここが俗に言う追い出し部屋で、4年間は再配属先はない。彼の仕事は、関連部署へのスキルアピールと外部機関を活用して適職先を開拓すること。仕事を探せないと賃金が下がる。この人は、4年で30%強も賃金が下がった。目標を達成するということは、会社からいなくなるということだ。通常、一定規模の企業は退職させたい人には退職条件を提示していたが、この追い出し部屋では一切提示されていない。子会社は本社と同じ労働組合になっているようだ。最初は、組合に相談に乗ってもらったが、その組合役員が外に飛ばされて相談に乗ってくれる人がいなくなり、東京ユニオンに相談した」と実態を語った。
 さらに、東京管理職ユニオンの組合員も、「他部署への異動か、辞めるか、PIP(=業績改善計画。退職強要を目的にしていることが多い)を受けるか選ばされる」(大手インターネットセキュリティ会社社員)などと証言。
 記者会見では、3月2日、3日に開催した全国ユニオンの「雇い止めホットライン」の告知も行い、東京管理職ユニオン書記長の鈴木さんは、「本当に会社がつぶれそうで人員削減が不可避な場合など、必要なリストラもあるが、公正なルールが必要。今は、経営が劣化するなかで経営責任をとらないままのリストラが横行している。長期的な経営や国家のためにならないリストラをしているというのが今の事態。私たちは、春闘の取り組みの一環として、雇用を守るという観点から公正な人事評価や違法な追い出し部屋の撤廃を求めていきたい」と締めくくった。

 「雇い止めホットライン」に相談を寄せた相談者が複数、プレカリアートユニオンに加入し、雇用継続を求めて、会社との協議を始めた。こちらもご注目、ご支援を。
 ■清水直子(書記長)