プレカリアートユニオンブログ

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世界では当たり前の「コンプライアンス活動」が「工事現場での圧力」に。 『労働組合やめろって警察に言われたんだけどそれってどうなの?』(連帯ユニオン編著/旬報社)

 『労働組合やめろって警察に言われたんだけどそれってどうなの?』(連帯ユニオン編著/旬報社

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 のべ89名の逮捕、71名の起訴、関生支部は嵐のような刑事弾圧に晒されています。社会の安全や秩序を守るべき警察が、法律を無視し労働組合の組合員を不当に逮捕し続け、組合活動を「禁止」している現状は、本当に日本が法治国家であるのかを疑ってしまうほどです。以前にも『ストライキしたら逮捕されまくったけどそれってどうなの?』を紹介しましたが、本書はその続編に当たり、警察・検察・裁判所による弾圧に焦点を当て、国家総掛かりの不当労働行為について解説しています。

「大変なことになりますよ」
 協同組合から生コンを買わず、協同組合に入っていないアウトサイダーの業者(アウト業者)から生コンを買っているゼネコンに対し、関生支部の武委員長が「大変なことになりますよ」等と複数回脅して協同組合と契約させようと恐喝未遂を行い逮捕されたと報じられました。また、工事現場で繰り返しクレームをつけ圧力を掛けたともされています。この件で関生支部からは多くの逮捕拘留者が出ましたが、これらの報道は果たして本当だったのでしょうか。「大変なことになりますよ」という発言、「工事現場での圧力」のふたつに分けて見ていきたいと思います。

武委員長の発言というのは誤り
 そもそも、「大変なことになりますよ」は協同組合の副理事長の発言です。しかも、それは脅迫の意図をもったものではありませんでした。協同組合の生コン営業に行った先で、「アウト業者の生コンは品質や安定供給の面で不安があるので大丈夫だろうか」という趣旨の事をつぶやいたにすぎなかったのです。アウト業者の販売する生コンは協同組合の販売する物より低価格であった反面、安全性等の品質に疑問が持たれる物でした。実際、過度な価格競争の末水増しが行われた「シャブコン」が出回り、大きな社会問題を引き起こしたりもしています。これらに憂慮し、去り際に「大変なことが起こらなければいいのだけれど」と漏らしたというのが真相です。協同組合の営業活動の席なので、この場に武委員長は居るはずがありません。「大変なことになりますよ」が武委員長の発言というのは、明らかな誤りなのです。

コンプライアンス活動」は世界では当たり前の行為
 関生支部は、日常的にコンプライアンス活動を行っています。工事現場に立ち入り、法令遵守を呼びかけることで労働者の安全を守る行為です。世界ではごくごく一般的な取り組みなのですが、今回はこれが「工事現場での圧力」とされました。これらコンプライアンス活動では、問題が見つかるとその都度警察や行政工事の発注者に電話で連絡し、然るべき指導をしてもらっていました。もしも、クレームをつけ恫喝をして回ることが目的ならば、わざわざ自分から警察や行政などに連絡をするというのはおかしな話です。関生支部は活動の様子を自ら撮影していますが、これらの活動は終始穏やかに行われていました。

警察・検察・裁判所の連係プレー
 この一連の事件に関し、検察は「大変なことになりますよ」という脅しを核に置き、コンプライアンス活動でのビラ配りや声かけなどの行為を「共謀」するものとして結びつけ、起訴へのストーリーを描いたのだとジャーナリストの北健一さんは本書で分析しています。これに連携して、大津地裁の今井裁判官が「関生は凶悪犯罪集団である」という予断を元に「大変なことに」の真意に関わる証言を妨害したり、不当な判決を出したりといったことを行っているのです。警察の不当逮捕に検察が起訴へのストーリーをでっち上げ、それを裁判所が認めていく、関生事件はまさしく国家がらみの労働組合潰しなのです。

稲葉一良(書記次長)