プレカリアートユニオンブログ

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年収2千万円から土木作業員、除染作業員、“下級国民”に至る実話。『下級国民A』(赤松利市著/CCCメディアハウス)

年収2千万円から土木作業員、除染作業員、“下級国民”に至る実話
『下級国民A』(赤松利市著/CCCメディアハウス)

 ゴルフ場コンサルタントの男性が、経営不振から、東日本大震災の復興バブルに乗らんと被災地へ向かうも、ことごとく搾取されるリアル。
 主人公の男性は、作中で何度も旨い話しに乗ろうとするも欺かれ、搾取されている。他方では、包み隠さず自身の暗部をさらしている。バブル期の乱痴気騒ぎのこと、原発避難民や外国人研修生を食い物にしようとしたこと、娘への仕送りという大義名分など、いろいろいってはいるが結局は、「(経営不振といいながら、それでも生活苦ではなかった時期を振り返り)月に2日働いて、生活に必要な金額が得られるのだから、どうしてあの時点で小説を書こうとしなかったのか。精進しなかったのか。……過去の栄華が忘れられず、……ビジネスネタを探していたのだ」と自白している。
 プロフィールから、主人公が小説家になったのは、もっと後の出来事だとわかる。主人公は自らを「ゲス」と自称しているが、彼の半生を読むと私はそう単純に言い切ることはできず、人間の本来ある欲や脆さを感じた。
 作中では“娘への仕送りのため“というワードが何度も登場する。おそらく主人公の行動原理なのだろう。もしかしたら、私も同じ境遇なら、主人公と同じ判断をしないとは言い切れない。
 そうであったとしても、不条理な環境におかれた主人公の痛みを想像すると苦しいものがある。たとえば石巻の現場。タコ部屋ともいえる労働環境、格差社会の申し子ともいえるような暴力的な作業員たちの存在、熱中症や腹膜炎になっても一切の労いがない職場、極めつけは誰もやりたがらない極寒の中でのダンプカーのタイヤ洗浄作業だ。この作業を主人公は、いじめる周囲の人間から離れられるとの理由から喜んで行う。
■同じ境遇の仲間がいると信じて
 思うのは、人の心はいじめなどの不条理にあうと、過酷でも孤独であるほうがマシという選択をするのだろう。そして精神安定のために「不幸ではない」と脳内で変換するのではないだろうか。
 どうか労働者のみなさんは、現実から目を背けない勇気をもってほしい。そして同じような境遇の仲間がいるのを知ってほしい。一人では弱くても、皆で力を合わせれば、それは大きな力になると信じてほしい。
 Y(組合員)

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