プレカリアートユニオンブログ

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困難に対処していくための実践書。『実践 セルフ・コンパッション 自分を追いつめず自信を築き上げる方法』(メアリー・ウェルフォード著、石村郁夫訳・野村俊明訳/誠信書房)

困難に対処していくための実践書
『実践 セルフ・コンパッション 自分を追いつめず自信を築き上げる方法』(メアリー・ウェルフォード著、石村郁夫訳・野村俊明訳/誠信書房)は、人がどういったときに、どういう心理状態になり、それはいったなぜ起こるのか、結果としてどういう行動をとるのかということを、心理療法の視点から分析し、困難に対処できるように訓練していくための実践書である。

 ■不安や恐怖は、単に自分に問題があるというわけではない
読み進めていくと、不安や恐怖は、単に自分の考え方がネガティブだとかそういった次元ではないことがわかる。生まれながらの個性、高度に進化した人間の脳の反応、家庭環境、社会問題からの影響などが複雑にからみあって、行動として表れるということが理解できる。

■最大の敵となり味方ともなるのは自分自身だった
本書でキーワードといえるのは「慈悲」という考え方だろう。本書における慈悲の解釈は、優しさ・気持ちの温かさ・親切さといっている。「慈悲」を他人だけでなく、自分にも向けようということが本書の趣旨だろう。
例として、幼少期から健康に不安を抱えたある男性は、過保護な親や快活な兄弟に囲まれて育ち、自身を周囲とは違うと思うようになり、その対処として周囲に合わせようとするために、飲酒で勇気づけてから仲間と遊びにでかけた結果、泥酔状態となり仲間からはあきれられ、孤立を深めていく。
本書では、こういったときに後悔や反省をすすめるのではなく、そういった失敗の事実を受入れつつも、それは必ずしも自身の行動がきっかけとなったものだとは決めつけない。外的要因も多分に占めているのではと自分自身に問いただし、うまくできた出来事を思い出したり、努力をしてきたのだから次はきっとうまくできると信じ、仮に失敗しても大きな問題ではないと自分自身に対して「慈悲」を向ける。結局は、自分を追い込むのも、勇気づけるのも、自分にほかならないということである。

■本書は実践書である
本書は、辞書のように必要な情報のみを得ることを目的とするのには向いていない。演習問題集のように使うのに向いている。 「考え方を変えるまたは増やすトレーニング(本書では<エクササイズ>と称している)」が62例記載されている。ひとつひとつに大きな効果があると思われる。だが、トレーニングを1つこなすだけでも、最短でも30分はかかると思う。本書においても実行するトレーニングを取捨択一するようにすすめているが、正直、自身も全てのトレーニングを行うほどの時間はない。だが、裏を返せば、考え方を変える・増やすというのは、多くの時間と労力が必要だといえる。自身も「行動」を変えることのほうがはるかに楽だと思っている。「考え方」が変わるには多くの時間をかけるか、人生に重大な影響を与えるような出来事がない限り困難だと思っている。
そうであっても、「考え方」を変えていく、あるいは増やすということは、その後に選択する「行動」の幅が広がり、価値があるといえる。

■自分を追い詰めず自身を築き上げる方法の実践
ひとつ、自分でもすぐに取りかかれ、習慣にできると思った例を紹介する。
「マインドフルネス」。東洋宗教の流れをくむ技法で、瞑想に近い。具体的な方法は①気が散らない場所で行う ②背骨の強さを感じ、それ以外の体の部位はリラックスして、まっすぐな姿勢ですわる ③目を閉じる ④呼吸を感じる。息をゆっくり吐いたり吸ったりして、肋骨が広がったり狭まることを体感する ⑤自分の体温を感じる ⑥過去や未来のことを考えない ⑦これを15分程度行う このトレーニングは、部屋や近くの公園などどこでもいつでもできる。ところが、意外にも実践は難しいものだった。静止した姿勢でいると、次第に落ち着きがなくなってきたり、前日の嫌な出来事を思い出したり、明日はどうしようか、と考えだしたりする。自動車の走行音すら耳障りに感じだしたりする。だが、習慣化できたときは、何も考えないことが苦痛でなくなった。気が散ったらそれ自体もありのまま受け入れられるようになり、肩の力も抜け、トレーニングを終えたあとは、とても爽やかな気持ちになれるようになった。堅苦しいレビューとなったが、本書のトレーニングを参考に、少し肩の力を抜いてみるのもよいかもしれない。
Y(組合員)

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