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歴史の影に隠れたフェミニズムやアートとの関連性に光を当てる1冊。『おまえが決めるな!』(嶋田美子著/白順社)

歴史の影に隠れたフェミニズムやアートとの関連性に光を当てる1冊


『おまえが決めるな!』(嶋田美子著/白順社

www.otafinearts.com


 東京大学教養学部で主に1学期だけ日本に滞在する留学生向けに行われる、アーティストであり60~70年代文化研究を行う島田美子によるゼミ「一九六〇年代以降日本のフェミニズムとアート」を書籍化したのが、「おまえが決めるな 東大で留学生が学ぶ《反=道徳》フェミニズム講義」だ。
 本書は、戦後日本のフェミニズムの歴史を時代ごとに解説する「歴史編」、筆者自身がアーティスト・研究者として活動する中で感じ取った90年代以降からの運動について記した「実践編」の2部からなる。本書は、個別のものとして語られがちな運動とアートとの関連性をしっかりと踏まえて記されている。
■「歴史的健忘症」により忘れ去られたフェミニストの足跡
 本書では、歴史の中に忘れされがちな事実を丁寧に掘り起こし解説する。『元始、女性は太陽であった』という表題で有名な平塚雷鳥は日本を代表する女性解放運動家として知られるが、戦時下で翼賛化し、天皇は「天照大神生き通し」であると記した。
 天皇は日本国民を「天皇の赤子」として包み込む女性的な顔を持つというこの考え方に基づき、女性は「国母」として、より国家に貢献できる子を産むことこそがその役割であると啓蒙し、戦時中の女性運動は、戦争に協力する為のものとなっていく。
 優生学にも酷似したこの考え方は杉田水脈議員の「生産性」発言にも通じる極めて危険なもので、優生学にも酷似したものだ。このような平塚らの戦争協力について日本のフェミニズム史では80年代までほとんど語られなかった。
 また、このような考えをもつ平塚は戦後も運動で重要な位置を締め影響力を及ぼしていく。また、戦前、権力により命を奪われたアナーキフェミニストらについては、近年までその存在すら忘れ去られていた。このような現象を青山学院大学教授で歴史家のチェルシー・センディ・シーダーは「歴史的健忘症」と名付けている。
 本書で語られるフェミニズムの歴史と現在の問題点、そしてそれらを著者らがどのようにアートで表現し浮かび上がらせようとしているかが本書には記されている。本書を通して「女性の安全」を錦の御旗にしトランス差別を行う「TURF」の問題、表現の不自由展の問題、悪しき歴史が繰り返されるようにも見えるこの社会をどのように変えていくことができるかをあらためて考えてみたい。
 稲葉一良(書記長)

 

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