プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

自分が自分らしく生きるための問い。『いのちの女たちへ - 取り乱しウーマン・リブ論』新版(田中美津著/発行:パンドラ・発売:現代書館)

自分が自分らしく生きるための問い
  
『いのちの女たちへ - 取り乱しウーマン・リブ論』新版は、1972年に刊行された田中美津氏による同タイトルの著作に資料やその後の著者などからのコメント、あとがきなどを書き加えた新装版です。日本のウーマンリブ運動の旗手である著者が、その原体験から活動に向かっていく紆余曲折を「取り乱し」つつ、さらけ出した本書ですが、オリジナルが出版されてから半世紀近くたっても、その息づかいやメッセージは読み手の感情を強く揺さぶります。

■「取り乱し」
 タイトルにあるように、この本の大きなテーマで最大の特徴の1つは「取り乱し」です。語るように、吐き出すように紡がれる本書の言葉はクセが強く、正直、読みやすいとはいえませんが、まるで隣で聞いているかのような臨場感をもって読み手に迫ります。「本音で語ろうとしたら、男はム……となるしかないだろう。もっともこっちの方は、論理的にわかりやすくと言われると、ム……になるのだけれど」。「理論的にわかりやすく」を求められることこそ男性社会的であるということを本自体でも体現しています。

■わかってもらおうと思うは乞食(こじき)の心
 東大闘争のさなかに登場した「連帯を求めて孤立を恐れず」というスローガンは、著者流に言い直すと「わかってもらおうと思うは乞食の心」になります。「たとえ女同士であれ、女同士!の語感の安らぎを最初からアテにしてはならないし、そしてできないのだ」、とする著者にとってのリブ運動は「おんなの解放」にとどまらず、「嫌いな男にお尻は触られたくないけれど、好きな男が触りたいと思うお尻はほしい」という言葉で表されるような矛盾した自分自身を肯定・解放することでもあります。リブとは、理解や承認が目的地ではないのです。
 本書の話題は、リブと時を同じくしておこった、反戦運動学生運動などにも触れながら、おんなが、そして自分が自分らしく生きるとはどういうことなのか「取り乱し」つつ、私たちに語りかけます。この本で語られる生きづらさは今なお、まったく解消されていません。著者は今も精力的に活動し、おんなの生きづらさと闘っています。

稲葉一良(書記長)

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