いなばの生活力向上計画第3回【※プレカリアートユニオン機関誌2022年7月号に掲載】
政府が進める金融資産形成はアヤシい
今月も資産形成について解説していきます。さて、資産形成といえば政府は国民1人ひとりが金融投資を行うことで所得を増やしていく方策を示していますが、これは相当にいかがわしいものです。前回も解説したように投資とは何も証券や株式、不動産に限らないものです。自民党をはじめとする新自由主義政治は、社会インフラや教育、介護、子育て支援……様々なものを切り捨ててきました。それらは国家が持続性を保つために不可欠な資源への投資だと考えられます。国家として必要な投資をせずして国民に投資を進める姿勢は大きな矛盾をはらむものであり「自己責任」論を先鋭化したものでもあります。「将来が心配ならば投資をしろ。結果は自己責任。投資に失敗した人は知らない」というわけです。また、日本は特に国民の金融リテラシーの低さが問題となっていますが、このような現状を踏まえた上で、扇情的な広告などでFX等を煽るCMが氾濫する中、投資を勧めることは、正しく生活を豊かにするという本質を欠き、まるでカジノ誘致の企てのごとく国民に不要なリスクを負わせ大資本を利するためであるとさえいえます。
■損失のリスクをどのように吸収するか
投資は、一発逆転の切り札でも何でもありません。あくまでも私たちが考えるべきは、暮らしを豊かにするための投資です。思いがけない損失を生じ、暮らしが傾いてしまうようでは元も子もありません。投資のポイントは余裕の中から行うことと、損失の可能性を引き受けリスクを分散することです。金融投資は即ちお金に直結しますが、リスクの回避は相当に困難と言えます。このリスクを引き受ける余地があるならばその限りにおいてのみ行うというのが正しい向き合い方だと思います。一方、前回お伝えした「自分への投資」ならば損失のリスクを吸収する方策も柔軟に立てられます。今回は私の行っている投資の1例を解説します。
■ヴィンテージ楽器の市場価格高騰を利用した「リスキー」な投資
次の例は私自身が行っている資産形成の1つです。私はベーシストで、細々とプロの仕事を続けていますが、その楽器を買うことが投資に繋がっています。ヴィンテージ楽器の値上がりは特に最近顕著です。私は若い頃、ある60年代のベースを数10万円で購入しましたが、現在ではその年代の同じベースの価値は200万円は下りません。学生の頃10万円ちょっとで購入した70年代のベースも今や50万円に迫る勢いです。このようにして購入したベースが他に何本もあります。当然市場は水物なので全てのベースの価値が上がる保証もなく、場合により大きく買値を割り込むリスク、故障するリスクなども抱えることになりそれなりにリスキーです。
■リスクの引き受け方は人それぞれ
しかし、私にとって楽器は仕事道具です。購入の際、値上がりの可能性以上にこの楽器は自分にとって買値(若しくはそれ以上)の値があるかはシビアに吟味します。「骨董的価値が高くても使えないもの、弾き手として気に入らないものは手にしない」という線引きをすることで、リスクをよろこんで引き受けることができます。楽器購入で得られるものは価値が上がることによる資産価値だけではなく、その楽器を弾くことで得られる弾き手としての成長、表現の幅など様々あります。また、市場価格が下がったからといって楽器の音が悪くなることはあり得ません。気に入って弾いているうちに価格が再び上がることもあるし、そうでなくとも私の「愛機」に変わりはありません。私はこのようにしてリスクを引き受けていますが、幸いにも現在楽器の市場価値は総購入金額の2~3倍になっています。節約し楽器につぎ込む生活を無駄遣いだと指摘されたこともありましたが、結果として消費・浪費ではなく投資して資産を形成していたというわけです。気に入りすぎておいそれと換金する気になれないところが玉に瑕です。
稲葉一良(書記長)
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