新自由主義が求めるネオリベラルジェンダー秩序とどう対峙するか
『日本のポストフェミニズム:「女子力」とネオリベラリズム』(菊地夏野著/大月書店)
『日本のポストフェミニズム 女子力とネオリベラリズム』は、社会学、ジェンダー/セクシャリティの研究を行い、名古屋大学人間文化研究科准教授を務める菊池夏野氏による1冊。ネオリベラリズム(新自由主義)をフェミニズムの視点から読み解いている。
■ジェンダー・セクシャリティの視点から新自由主義を読み解く
本書はその内実が見えにくくなってきているフェミニズムについて、少しでも明瞭化すること、ジェンダーとセクシャリティの領域から「新自由主義」をどのようなものとして認識すべきかを明らかにすることをその目的としている。
第1章「ネオリベラリズムとジェンダーの理論的視座」、第2章「日本におけるネオリベラルジェンダー秩序」、第3章「ポストフェミニズムと日本社会~『女子力』・婚活・男女共同参画~」、第4章「女子力とポストフェミニズム~大学生アンケート調査から」、第5章「脱原発女子デモから見る日本社会の(ポスト)フェミニズム~ストリートとアンダーグラウンドの政治~」、第6章「『慰安婦』問題を覆うネオリベラルジェンダー秩序~『愛国女子』とポストフェミニズム~」の6章立てて構成されており、ネオリベラリズムをジェンダーの視点から捉え直すための理論に始まり、現代日本社会で起こっていること、若者の意識、運動の現場での課題などに触れながら、ポストフェミニズムを形成する言説の広がりに対し批判を加え締めくくられている。
本書は現代主流フェミニズムに対する批判が多方面から注目を浴びるナンシー・フレイザーを依拠する理論的立場の1つにしている。
新自由主義社会を成り立たせるための装置として存在するネオリベラルジェンダー秩序とその内容について読むことで徐々に立体的名視点を持つことができるようになる。また、「女子力」に関する考察はとても鋭く、「女性の自立」のような文脈で語られる行動様式や価値観が実態としてより強い支配体制の顕れとも読み解けるという視点にははっとさせられた。労務管理についても所謂コース別管理をはじめとする制度的不均衡、間接差別のあり方について触れ新自由主義的装置の一つとして捉えている点は斬新だ。
フェミニズムにまつわる様々な問題をネオリベラリズムという文脈で読み解くと今まで点在していたそれぞれの問題を一つの社会の大きな流れとして捉えることができる。やはり男性にとってもフェミニズムは他人事ではなく自分事名のだとあらためて理解が深まる1冊だった。
稲葉一良(書記長)
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