【組合員の手記】イオン店舗でパートタイマーとして働く石橋昌子さんが2年目の春闘に挑戦。共働きの子育てを振り返る
プレカリアートユニオンに加入し、イオンリテール株式会社との二度目の春闘を迎えます。イオン店舗の組合員は相変わらず私一人です。2020年埼玉県の最低賃金は928円に上がり、翌2021年には956円になりました。
■最低賃金に連動する時給に驚愕
その頃、違う売り場で働くパート従業員が「イオンで働き始めて十年経つけど、初めて時給が上がった」と昼休憩の時に言いました。その言葉に「10年間で5円、10円も上がらなかったの?」と先輩にため口で聞き返してしまいました。10年間、時給が変わらないことについて何の抗議もしなかったのかな、この人たちはと驚きました。
イオンの企業内の労働組合には、パートもアルバイトも全員が加入し、給与から1%の組合費が天引きされています。せめて、労働組合に相談することくらいはできなかったのか不思議で仕方ありませんでした。そのことがきっかけとなり、私なりに労働組合にかかわろうとしてきました。そして今は、プレカリアートユニオンの組合員として二度目の春闘を迎えます。
■子育てにまつわる時間とお金
話は全く変わりますが、我が家の第二子は将来農業をしようと勉強中です。第二子が通う学校は自治体の管轄で、半分実技、半分座学の専修学校です。公立なので学費は専門学校に比べても、また設備など環境を考慮してもコスパがいいのです。しかし、私たちには農業をするための土地などなく、ゼロから始めるため初期投資を準備する必要があります。
農業は私にとっても夢なのです。
日本の子供たちは、高校2年生のときに自分の将来を考えさせられます。進学か就職か、進学なら文系か理系か。こうやって、自分が何をして生きていくのかを齢17で選択を迫られます。
反抗期の子どもは勉強なんかしたくない、(私はずっと勉強嫌いだったけど)ずっとゲームをしていたがります。大企業に就職を考えるのであれば、大学を選び、いわゆる「GMARCH」(ジーマーチ ※東京都内の私立大学の頭文字)の大学進学を要求されます。私立の高校生であろうと塾に通い、夏休みも冬休みも受験のための勉強をします。私は、子どもにそんな地獄のような時間を過ごさせたくはないし、かかる費用も莫大な額になるので所詮無理な話。
子どもを育てている時にずっとかんがえていたお金のこと。子どもが少し走るたびに「あぶない車がくるから止まって」「それは触っちゃダメ」と多くのダメを子どもに課してきました。このダメは子どもの心にたくさんの扉を作ったに違いありません。
「広い庭で子どもを遊ばせたい、子どもと一緒にずっと遊んでそのままお風呂に入ろう。お風呂から出たらご飯だな。ご飯は誰が用意する? あ、買い物にも行かないといけなかったんだあ」。子育てのジレンマは、私の頭の中を妄想でいっぱいにします。「田舎に帰ると親がいるから少しは手伝ってもらえるかな、田舎でどんな仕事があるんだろう。仕事はないのにクルマは1人1台じゃん」。
私の実家は、バブル期に開拓された北関東の外れの狭い新興住宅地。朝の通勤時間帯は仕事がある隣の隣の町まで車がビュンビュン走り、夕方は帰宅を急ぐ車たち。そんな実家に戻りゆっくりと子育ても難しいでしょう。
■田舎の女性差別から逃れて進学
私が上京をしたのは大学進学のため。進学先が決まった高3の終わりの頃、自宅で近所の人が飲みにきていました。そのときその内のひとりから「女の子が4年制大学に行くもんじゃない。俺がいい人を紹介してあげるからここに残って結婚しなよ」と衝撃の言葉。「何で他人に私の将来を委ねないといけないんだ?」と心の中でつぶやく。思えば一学年上で成績が良く、テストのたびに名前が張り出されていた人も、女の子だからというのが理由で希望の進学をあきらめていました。
私の田舎への偏見は根深い。あれから30年が過ぎ、誰でも教育を受ける権利があることくらいはわかっています。何なら女性差別は田舎だけで起こっていることではないことくらい100も承知。
■共働きでも子育ては女性の負担が大きく
首都圏で広い庭がある住宅なんて中小企業の会社員には、はかない夢。結局は、子どもを保育園に預けて夫婦共働きの道。私も1日の大半を職場で過ごす。今思えば、何てもったいないことをしてきたのか。子どもにとって母親を一番好きと言っていたあの時間は、もう戻ってはこない。
子どもの健やかな成長を考えれば、信頼できる人と親密に過ごす時間は大切なはずなのに、仕事と育児・家事は私から時間を奪った。
共働きの家庭が増加傾向ではありましたが、世の中は「家事・育児は女性の仕事」という価値観が多くを支配していました。もちろん夫もその一人。私は夫に強く反発をし、夜中のミルクを時々は代わってもらいますが、「やってあげてる」感の強い夫に辟易。それでも仕方なく夫の手を借りなければいけない時は、ただただお願いをする。夫が出かけるのは当然だが、私が予定があるときは夫に了解を得てから。子どもの具合が悪ければ、私が仕事を休んで看病をする。二人の子どものはずが、私の子どもになっていく。
子どもたちが大きくなり、自分の時間ができてママ友と愚痴を言い合うと、たいていが夫のことで、当然各々違う夫のはずなのに、愚痴の内容は同じ。どこの夫婦も同じ問題で揉めています。
■子どもの時間より仕事の時間を優先し
就職して収入を得ることは生活を安定させますが、1日24時間のうち8時間仕事をして、お昼休憩1時間と通勤、帰宅時間3時間を足せば、11時間が会社で働くための時間。子どもと離れている時間。
朝起きたら仕事に行くための時間が始まる。自分の支度に子どもを起こして、保育園に行くために着替えをさせて、食事をさせて、子どもが外の景色を楽しんでいようと、虫の声に興味を示しても、私が働くために遅刻しないように必死になっていました。
何のために働いているのか、子どもとの時間を充実させるために働いているのではないのかと自問自答をしながら、毎日を繰り返していました。
子どもを持つ前は、生きるために余暇を楽しむために働く、そしてこの仕事が誰かの役に立てているのであればなお良し、税金は将来の自分や、社会・福祉のために、と思っていました。
子どもを持つことで、自分よりも大切なものができたことで生活が変わり、働く意味も変わります。全ては子どものためだったのに、本末転倒でした。
■親が職場と交渉する姿を見せる
二人の子どもは、すっかり大きくなってしまいました。第一子は、のんびりとコンビニでアルバイトをしています。あろうことかこのコンビニは、給与明細も出しません。時給が上がっているのかも分かりません。私にとってみれば争議案件ですが、本人はその気がなく「余計なことをしないでくれ」と言います。
例えば、外国人が一緒に働くとして、その外国人が「時給を上げてくれ」といったとき、店長があなたを引き合いに出して時給を上げない理由に使われることもあるのではないかと、説得をしようとしてきたがうまくはいきません。
こうなれば持久戦。私にとって大切な第一子。この子のおかげで子どもがかわいいとか、この子のためなら何でもできると感じさせてくれた子。この子を愚弄するかのように都合よく働かせる使用者に反撃するチャンスを待っていよう。
そしてこどもに労使は対等に話し合う姿を見せ続けよう。
育児が終わった私にできる親としての姿勢だと思う。
石橋昌子(組合員)
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