介護報酬の低さが現場を壊す
全国ユニオン厚生労働省交渉(2026年3月26日)報告
2026年3月26日、参議院議員会館会議室において、プレカリアートユニオンの上部団体である、全国コミュニティ・ユニオン連合会(全国ユニオン)は厚生労働省に対し、介護労働者の賃金・労働条件の抜本的改善に関わる介護保険制度について、基本報酬、とりわけ早急に訪問介護報酬を引き上げることなどを柱にした交渉を行いました。
■処遇改善加算では解決しない構造問題
交渉では、「処遇改善加算」による賃上げの限界も指摘されました。事前に厚生労働大臣に宛てて提出した要請書では、最低賃金を上回る基本給に対して加算が上乗せされるべきであり、「加算を含めて最低賃金に達する」ような運用は認めるべきではないと指摘し、厚生労働省が作成したQ&Aの「最低賃金を満たした上で、賃金の引き上げを行っていただくことが望ましい」とあるのを「望ましい」を削除するよう求めています。
また、加算制度は事業所ごとの裁量に委ねられているため、必ずしも労働者に十分還元されていない実態も共有されました。結果として、制度上は賃上げが行われているように見えても、現場では生活できる水準には届いていません。
交渉では、処遇改善加算が本来の目的とは異なる形で使われている問題も提起されました。ある事例では、多額の加算が支給されているにもかかわらず、労働者の賃金にはほとんど反映されず、経営側に留保されている実態が指摘されました。
■訪問介護の危機と地域崩壊の現実
とりわけ深刻な問題として指摘されたのが、訪問介護の危機です。
要請書では、介護事業者の倒産が過去最多を更新している状況が示され、訪問介護の基本報酬引き下げが経営悪化を加速させていることが強調されました。
訪問介護は、在宅での生活を支える基盤であり、これが崩れれば地域の高齢者は生活の継続そのものが困難になります。しかし現場では、人手不足と低賃金により事業所の維持が困難となり、サービス提供そのものが縮小しています。
これは「人が足りない」のではなく、「働き続けられない制度」が人を離職させている問題です。
交渉では、実際に介護現場で働く労働者の声が共有されました。
長年働いても基本給がほとんど上がらず、生活が成り立たない水準にとどまっていること、夜勤や重労働に耐えながらも将来の見通しが立たないことなど、切実な声が共有されました。
■介護の未来を守るために
介護は、単なるサービスではなく、社会の基盤です。その基盤を支えているのが介護労働者であり、その労働条件が崩れれば制度そのものが成り立たなくなります。
現在起きている問題は、「人手不足」ではなく、「低賃金と過重労働によって人が辞めていく構造」です。
この構造を変えない限り、いくら人材確保策を打ち出しても問題は解決しません。
今回の交渉は、現場の実態を直接厚生労働省に突きつける重要な機会となりました。しかし、制度を変えるためには継続的な取り組みが不可欠です。
プレカリアートユニオンとしても、介護労働者の声を可視化し、賃上げと労働条件改善の実現に向けた取り組みをさらに強めていきます。
介護を支える人が安心して働ける社会を実現するために、今こそ制度の根本的な見直しが求められています。
厚生労働省交渉では、このほかに、スキマバイトの労働契約締結のタイミング、高年齢者雇用安定法に関わる70歳までの高年齢者終業確保措置の実施などについても交渉しました。

写真提供:東京ユニオン

