プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

介護の仕事について語ろう その2「介護現場は戦場。だから仲間が必要」

 介護現場は戦場、そんな表現をされていた文章を見たことがあります。だいぶ前に読んだものですが、ルポライターが取材で老人施設に介護職で入り、「いつ誰が殺人を犯してもおかしくない」と他の施設で起きた虐待事件になぞらえて書いていた事も記憶に残っています。介護職員全員がギリギリの精神状態で仕事をしている現実をそんなふうに表現していたものでした。

 在宅介護で家族が介護殺人や虐待に至るケースは、介護疲れからくる悲劇が多く、介護経験のない人たちにも心情的に理解されやすいと思います。では施設やグループホームなど、介護職のなかでそうした事件が起きたとき、事件を起こした介護職員を鬼のように非難し理解しがたいと糾弾されることはあっても、同情や理解を示そうという動きは聞きません。事件を起こした人間個人の問題として全てを負わされてしまいます。また介護の現場で事故が起きた場合も、職員個人の怠慢、業務上のミスが指摘され、責任を負わされます。

 虐待、殺人、事故、部分的に切り取れば決して許されず、加害者や事故を起こした当事者に被害者の怒りが向くのは当然のことです。しかし、本当にそれは個人の人間性の問題だけでしょうか。
 基本的なことですが、休憩時間をきっちりとれている介護現場はどれくらいあるでしょうか。食事中でも利用者から要求があれば介助を行っていませんか? また、食事介助をしながら同時に自分のご飯も食べていませんか? 無理なシフトを組まれていませんか? 例えば早朝数時間入り、一度帰宅して同日夕方から数時間勤務、夜勤後に遅番というかたちです。
 お給料の計算は合っているでしょうか? 早朝、夜勤など特別手当が計算しなおすと付いていないことはありませんか? 資格の有無に関係なく同じ仕事をさせられているのに、必要資格の受講をさせず、賃金に差を付けられていないでしょうか?
 休日を希望通りに、または約束通りにとれているでしょうか? 人手不足を理由に臨時出勤を何度も繰り返され、気づいたら当初の希望や約束とは異なり、フル稼働状態になっていませんか?
 現場で他の職種の人達や同僚と良好な関係を持てる環境にありますか? 職員同士の連携がとれているでしょうか? 特に入浴介助など事故が起きやすい状況で、無理な環境を作られて毎回ヒヤヒヤしていないでしょうか? 誰の手にも余る利用者対応を丸投げされていませんか? 曖昧な指示で事故につながりかねない状態で仕事をさせられていませんか? 何らかの感染症を持っている利用者の情報共有や対応策等のサポートは万全でしょうか?

 介護そのものが心身を消耗しやすい上に、職場環境が異様に過酷でもあることは珍しくありません。介護離職率が年々上がっていることからも、誰の目にも明らかだと思います。体だけではなく心を大きく蝕みます。
 先に書いた通り、まさに「介護現場は戦場」と思います。訓練も援護もなく、武器も持たず丸腰で人を助け続ける戦場のようです。戦場に居る人間は全て傷を負います。介護職員も利用者も、です。戦争で最後まで傷つかないのは、戦争を起こした上層部だけです。
 介護への愛着や熱意だけではのりきれません。そして、職場環境は転職を繰り返すだけでも解決しません。条件は悪くなり、更に心身への負担を増していくことが多いでしょう。介護に誇りを持って、介護職ならではの面白さ、やり甲斐、何より利用者の「ありがとう」の重みを知っている人は、職場を取り巻く諸問題に押しつぶされそうになっているのではないでしょうか。真剣だからこそ反動も悩みも大きいのです。

 個人的な見解ですが、介護職を志す人達の中には自身も過去に深く傷ついたり、居場所を求めて入ってくる人の多さは、他の職種に類を見ないと捉えています。その特性故に耐え切れなくなったり、また利用されやすい側面もあると思います。
「介護職を継続するには仲間を作れ」。
 これは、長く介護職を務めてきた人たちがよく口にする言葉です。実際にこの奇妙な戦場を乗り切るためには仲間やグループは不可欠です。共に情報交換をしたり、思いや辛さを共有したり、時に技術や仕事のコツを教えあう事、助け合うことから始めませんか?
 このコーナーでは、少しずつ介護を巡る問題を考えていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
■K・M(組合員)