プレカリアートユニオンブログ

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構造化された差別と毅然と闘う。映画『非正規に尊厳を!メトロレディーブルース総集編』(ビデオプレス制作)

映画『非正規に尊厳を!メトロレディーブルース総集編』(ビデオプレス制作)

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 東京東部労組メトロコマース支部の闘いは、日本中の注目を集めています。全く同じ仕事をしているにも関わらず、正規非正規間の待遇は全く異なります。不条理な格差に毅然と立ち上がった女性パート社員たちの闘いを描いた「メトロレディーブルース」シリーズは、今までに3作品製作されています。今回はその総集編に当たる「非正規に尊厳を!メトロレディーブルース総集編」をご紹介します。

10年間で『約1000万円』もの賃金格差!!
 東京メトロの子会社で駅の売店を経営している、株式会社メトロコマースでは非正規に対する理不尽な待遇差別が横行していました。職位は「正社員、契約社員A、契約社員B」と3つに分けられており、約8割を占める契約社員Bは、月給制、福利厚生各種手当て有の正社員、契約社員Bと比して極めて低廉な賃金での労働を余儀なくされていました。待遇の差は実に10年間で1000万円にまで及ぶにもかかわらず、職位による仕事内容には全く違いはありませんでした。実態として、職位は差別の言い訳の為にあるようなものでした。

全国一般東京東部労組メトロコマース 支部を結成
 多くの契約社員は女性労働者でした。Aのボーナスは、Bの約3倍。能力は全く関係なく、「あの人は美人だから、あれはいい女だから」などと、社員に気に入られたBだけがAへと取り立てられるような状況でした。あまりに大きい待遇格差に、まるで女性を商品のように扱う非人間的な人事システム、遂に我慢の限界を迎えたBのメンバーは瀬沼さんを中心に2009年3月、労働組合メトロコマース支部)を結成、格差是正を求めた会社との闘いが始まります。

労働活動で勝ち取った定年後再雇用
 2013年、組合の中心人物である瀬沼さんが65歳の定年を迎えます。会社は当然に雇用を終了させようとしますが、退職金も何もなく生存権すら脅かされ兼ねない状況に置かれている瀬沼さんの雇用延長を求め、組合は連日の座り込みやストライキを行います。その結果、組合は会社から半年の雇用延長を引き出します。しかし、その後「(65歳以降の雇用は)法律で義務づけられていない」などと、会社は再延長を拒んできました。組合はそれに負けずに会社に猛然と抗議、瀬沼さん含め定年退職者に対し一定の雇用確保措置を取らせることに成功しました。その翌年、2014年には東京地裁に非正規差別の問題を提訴、裁判闘争が始まります。

東京地裁での不当判決
 東京地裁が下した判決は、とても信じ難いものでした。「格差に違法性はない」、会社の言い分に依拠し、組合の主張を全く無視するかのような不当な判決が下されたのです。その内容は、メトロ売店で働く正社員非正規間の格差を訴えた問題であるにもかかわらず、全社の正社員とメトロ非正規の業務内容の違いを理由として差別を肯定するもので、裁判所による「恣意的な論点のすり替え」とも言えるものでした。組合は即座に控訴し、裁判闘争は高裁へと舞台を移します。

闘いの舞台は最高裁
 東京高裁は、会社の行った非正規差別に対し、一定の違法性を認定しました。特に退職金差別が一部でも認められたという点で、画期的な判例として世の注目を集めました。しかし、本給及び賞与についての差別は依然として認めらず、本質的な差別是正に繋がる判決とは言い難い物でした。再びの判決を受けた組合は上告を行い、遂に最高裁での審議が行われることとなりました。

 メトロコマース支部の闘いは、社会に多くの問いを投げかけ、所謂20条裁判の火種となりました。私たちプレカリアートユニオンも、クローバー分会が非正規差別の問題を裁判で闘っています。非正規問題の裏には、構造化された様々な差別が隠れています。「普通に働いて普通に暮らせる社会」の実現のために、私たちは、これらの差別と毅然と闘っていく必要があります。

稲葉一良(書記次長)