プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

真の敵はウイルスではなく差別と貧困。『UNITED IN ANGER ACT UPの歴史』(2012年/ジム・ハバード監督)

『UNITED IN ANGER ACT UPの歴史』(2012年/ジム・ハバード監督)

 現在、新型コロナウイルスの猛威は、世界中を巻き込み、日本にも深刻な影響を及ぼしています。ウイルスとの闘いは激しさを増していますが、真っ先に深刻な影響を受けるのは低賃金で働く労働者です。休業時の賃金保障を十分にしない、不当な解雇を受ける等、ウイルスの猛威以上に、社会的構造によって労働者の生活が破壊されていきます。「UNITED IN ANGER ~ACT UPの歴史~」は2012年アメリカ製作の、ジム・ハバード監督によるドキュメンタリー映画です。エイズウイルスから仲間たちを守るために闘った「ACT UP」の軌跡を描きます。

「死の病」と差別・偏見
 今日、エイズ治療は画期的な進化を遂げています。しかし、このウイルスが発見された当初は、罹患すればまず助からないような「死の病」でした。感染者はいわれのない差別を受け、そして、差別・偏見から様々なデマが飛び交いました。今回のコロナ騒動でも、差別的な流言や感染者への不当な差別・非難が多く見られます。

貧困による死
 程なく、貧困が生き死にを分ける現象が起こってきます。所得の低い者は、感染が発覚しても十分な医療を受けることができず、場合によっては病院のベッドで寝ることもできず、廊下で治療を待ちながら命を落としました。先進国でも、貧困で人が死んだのです。

真の敵は「ウイルス」ではない
 政府が適正な対応を怠った事が、この事態を引き起こした大きな要因です。研究の結果、治療薬ができる、治験が行われるということになっても、治療を受けられる者を峻別したり、企業が利益のために不当に高い値段を付けている状況を容認したりと「政治によって」多くの、低所得であったり差別を受けている患者の命が奪われました。今日のコロナと闘いを見ても、真の敵はウイルスではなく社会的な差別と貧困の構造だということがはっきりと見て取れます。

 ACT UPは、団結し、強い怒りを抱き闘いました。運動は、激しく弾圧を受けながら、やがて国家そのものを動かすに至ります。その結果、エイズはもはや「死の病」ではなくなったのです。団結には世界を動かす力があるのです。

稲葉一良(書記次長)

movie.jorudan.co.jp